お餅の話②
おじいちゃんがその後お餅を喉に詰まらせることなく平和に過ごせたことはもうお分かりだと思うが、私たちは毎度毎度不安と心配で気が気でなかった。
生前、父は「餅を詰まらせて死んでも、お風呂ですっ転んで死んでも、こんなに長生きしてるんだから、その時はその時だ!」とよく笑って言っていた。
だけど、それは「息子」だから言えることであって、私たちはやっぱり怖くてオロオロ……。しかし、そんな心配もよそに、おじいちゃんはとても美味しそうにお餅を食べる。
実は、父がまだ生きていた頃に2度ほどおじいちゃんは我が家で過ごしたことがある。3ヶ月くらいのスパンで叔母の家と我が家を行ったり来たりする計画だったらしいが、だんだんと父の具合が悪くなり、叔母の家で生活する方が多くなっていったのだった。
我が家でお餅を食べるようになったその頃、おじいちゃんはデイサービスに通い始めた。それまでは、24時間ずーっと我が家から一歩も外へ出ずに過ごしていたのだ。いくら頭は冴えて元気ではいても、やはり100歳を過ぎているので外を歩くのは大変なことだった。
デイサービスへ週に2回通うようになって少し時間の使い方が変わってきたので、我が家に帰ってくると「おやつ」を食べるようになった。その「おやつ」が、この時はお餅だったわけである。他にも色んな「おやつ」を食べて過ごしたのだが、それはまた今度の話とする。
100歳にお餅を食べさせていいものがどうか本当に悩んだが、やはり本人がとても美味しそうに食べるので、今では良かったと思っている。ただ……、毎回毎回ドキドキするので、こちらの寿命が縮まりそうだった(笑)
そして、このおじいちゃんのお餅ブームは101歳のお誕生日を迎える頃まで続いたのであった。