残った青い歯ブラシの話
洗面所に1本の青い歯ブラシが置いてある。おじいちゃんが使っていた歯ブラシだ。
父が亡くなった時もそうであったが、「残っているもの」につい目がいってしまう。
朝、顔を洗う時。
仕事から帰ってきて手洗いうがいをする時。
夜、お風呂に入る時。
特に今は、コロナ禍という時代になって洗面所で手を洗う回数が多くなったのめ、その青い歯ブラシがとても良く目に入る。
この青い歯ブラシは、私が買ってきたものだ。おじいちゃんが我が家で暮らすことに決まったときに用意しておいたのだ。
昔は、私たちがお盆の頃におじいちゃん家へ行くと、家族4人分の歯ブラシを用意して待ってくれていたものだ。(それは、おばあちゃんが用意してくれたのかもしれないが)
なぜ、その「青い歯ブラシ」にしたのかというと、一般的なものより少し大きめで、はっきりとした青!濃い青!で存在感があったので、おじいちゃんがどれを使ったら良いか、自分のものがどれか迷わないようにと思ってこれに決めたのだ。
それから最低でも月に一度は新しいものと買い替えていたのだが、全く同じものを買っていたのでおじいちゃんは気が付かなかったかもしれない。でも、私にはとても意味のある「青い歯ブラシ」で、おじいちゃんのために買ってあげるのが、なんというか……楽しかった。すごく思い入れのある買い物である。
ちなみに、ちょっとお高い商品で、なんとなくおじいちゃんにはコレを使ってほしいと思ったのだ。
そんなこだわりの「青い歯ブラシ」だったとは知る由もないおじいちゃん。ただただその存在感ばかりが最近ものすごく強く感じるのである。