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<緊急>コロナで影響を受けたイタリア・クラシック音楽界とヨーロッパの“無料アーカイブ配信”まとめ

世界中でコロナウイルスが猛威をふるっていますが、皆様いかがお過ごしですか?

私が住むイタリア北部のミラノでは、連日報道されている通り、イタリア全土で外出禁止令が出ました。感染が広がらないようにするため、仕事・健康上の理由・その他必要不可欠な場合以外は移動が制限され、食料品や医療品以外の小売店も閉鎖。このイタリアの方針には賛否両論あるようですが、とにかく一刻も早く事態が休息することを願います。

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(Il fatto quotidiano 公式サイトより)

今回は、コロナウイルスによって影響を受けたイタリアのオペラ座の状況ヨーロッパ各地の芸術・文化の分野に対する政府救済策各地のコンサートやオペラ公演の”無料アーカイブ配信”について書いていきたいと思います。(前回からのシリーズ化予定だったヨーロッパの夏・音楽祭巡りについては次回以降ゆっくり書きます!)



スカラ座の公演が休演に…

ちょうど北部の学校の休校が始まった直後の2月末、イベントやコンサートはもちろん、映画館や美術館も続々と閉館を決定。例にもれず私がよく足を運んでいるミラノ・スカラ座も、公演を延期することをすぐに発表しました。

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(2月26日の新聞”LA STAMPA”より)

記事から気になる部分をピックアップ↓

「1ヶ月の稽古、本番はなし。歌手たちは”タダ働き”」
ミラノ・スカラ座:コロナウイルスの影響で3月1日まで休演、確実にそれ以降も長引くだろう(結果、残念なことに今もなお休演中)。ロッシーニ作のオペラ<イタリアのトルコ人>は、1ヶ月の稽古を終え、ゲネプロと本番1公演目(スカラ座は平均でも同じ演目を5〜6公演することが多い)を終えたところでの休演。イタリアの劇場では、稽古に対しての給料支払いがなく、本番に対してのみの支払いのため、アーティストたちは、ほぼ収入なし。

トリノ王立劇場:不幸中の幸いでヴェルディ作曲のオペラ<ナブッコ>の全10公演が終えたところで、コロナウイルスによる休演が決定。別のコンサートと劇場ツアーはキャンセル。3月11日から始まるプッチーニ作曲のオペラ<ラ・ボエーム>も、10公演あり最低でも90万ユーロ(日本円で1億円以上)の売り上げが見込まれていた。労働組合は稽古の中止を要請したが、劇場の支配人Sebastian Schwarz は、「いいえ、それはしません。トリノの公共交通機関やスーパーが開いている限り、劇場の中よりそれらの方がウイルスが感染しやすい状況に決まっています。」

ヴェネツィア・フェニーチェ劇場:劇場支配人Fortunato Ortombinaは、「来週日曜日(3月1日)までに、ドニゼッティ作曲のオペラ<愛の妙薬>の最終公演、ベートーヴェンのコンサート2公演、カーニバルの演劇2公演(ヴェネツィアの有名なカーニバルもかなり縮小して開催されました)、室内楽コンサート2公演とさらに劇場ツアーもキャンセルしなくてはいけません。約30万ユーロの損害、そして公演が終了したら支払われる国からの補助金5万ユーロもありません。」とコメント。ヴェネツィアは、昨年11月の水害から未だ復興しておらず、大変な状況の中での今回の出来事。

劇場で働く人や足を運ぶお客さんにとって、劇場が閉まること以上に悲しいことはない。イタリアを代表する指揮者クラウディオ・アバドは生前、「劇場は裁判所や病院のように大切で、必要なものだ」と主張していたが、(政治家たちは)誰も聞く耳を持たなかった。ペストほどの大きな病ではないにしろ、(劇場がなければ)退屈さから死んでしまうだろう。


芸術や文化は、人間が命を繋ぐ上で本当に必要か、といわれると、そうではないかもしれません。衣食住に関わるわけでもありません。でも、人間が”人間らしく”、豊かな心で生きていくためには、必要不可欠だと私も考えます。




ヨーロッパ各地の芸術・文化の分野に対する政府救済策

とはいえ、芸術や文化はなくてはならないもの…と言い続けていても何もすぐに変わるわけではありません。アーティストたちにとって、劇場に関わる全ての人にとって、今回の休演・延期の流れは死活問題です。この業界で働く人たちは、組織に所属せず、フリーランスで働く人がほとんど。日本でも、”政府へ向けて”の動きが出てきているようですが、数日の間にヨーロッパでは”政府から”救済策の発表があったようです。

具体的な内容は、今後の動向を追っていかなければいけませんが、国をあげてこうした姿勢があるのは、業界にとって嬉しいニュースでした。


-イタリア政府
文化財・文化活動省及び観光省が「観光と文化のための特別策概要」を発表。

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(文化財・文化活動省及び観光省のサイトより)

観光・文化・劇場(演劇)・映画・テレビ・ラジオの分野で働く人に対しての特別補償金配布や社会保険税の支払い停止、またすでにチケットを購入していた人に対して次回以降使用できるバウチャーを配布するなど。


-ドイツ政府
こちらは、具体的な案というよりは、声明ですが、文化大臣が文化施設と芸術家に支援を約束「自己責任のない困窮や困難に対応する」

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ドイツ連邦政府サイトより)

グリュッターズ文化相の言葉より印象的だったフレーズ。”今回のような事態をふまえても、文化は余裕のあるときにだけ楽しむ贅沢品ではありません。これから(少しの間)文化に触れることができなくなりますが、どれだけ必要不可欠なものか分かるでしょう。”

-オランダ政府
コロナウイルス によって打撃を受けた企業とフリーランスへの手当てを発表。

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政府公式サイト(英語版)より)

フリーランスに対しては納税期限の延期、打撃を受けた文化や観光業に対しては最大4000ユーロの支給がされるようです。




ヨーロッパ各地のコンサートやオペラ公演の”無料アーカイブ配信”

各地のコンサートホールで続々と”無料アーカイブ配信”が発表されています。

この記事では、いくつかピックアップしてご紹介しますが、さらなる詳しいまとめは、MLprojectの公式Noteをぜひチェックしてください!新しい情報やこのほかの情報は、順次こちらに追加していきます。


-ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

3月31日までの限定で、サイト上にある全てのコンテンツ無料で楽しめるそうです。

前々回の記事でご紹介した、グルベンキアン劇場で常任指揮者を務めるLorenzo Viottiが指揮した動画も発見!(URLはこちら

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-ウィーン国立歌劇場

OTTAVA.TV(クラシック音楽専門のインターネットラジオ局OTTAVAが運営)にて、ウィーン国立歌劇場のアーカイヴを公演休止中の4月2日まで全19公演無料配信

視聴には、事前登録が必要。詳しくは、公式サイトをご覧ください。


-イタリア・パレルモ マッシモ劇場

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イタリアで伝統あるパレルモのマッシモ劇場でも、オペラやコンサートの無料配信

メインページ(日本語版)の”Guarda”を押すと、視聴することができます。こちらは、事前登録不要。



番外編:イタリアでのフラッシュモブ

親しい友人とは常に連絡を取り合い、週末は家族で過ごすことも多いイタリア。外出が制限され、離れて住む家族に会うことができない人もたくさんいるようですが、大切な人同士だからこそ今は、遠いところから思いやっているように感じます。

とはいえ、何らかの形でエールを送り合いたいイタリア人、 #iorestoacasa (私は家にとどまる)というハッシュタグで、皆それぞれ家にいながらもSNSで繋がり、励まし合っています。

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(友人から回ってきたフラッシュモブのメッセージ)

3月13日には、18時に一斉に皆がそれぞれバルコニーに出て音楽を奏でるフラッシュモブ、14日には日々奮闘してくれている医療従事者に向けて感謝の気持ちを込めた拍手を一斉に贈りました。いつものイタリアのように、ハグやキスはできないけれど、それぞれがこの困難に立ち向かいながらなんとか乗り越えよう、と前向きになっているのを感じました。

(LeHuffPost公式YouTubeより)




終わりに

今回のことで、私たち芸術や文化に関わる者は、緊急時において何ができるのだろうか…と改めて考えさせられました。

日本でも、大規模なイベントやコンサートが続々と中止や延期になりましたが、首都圏の満員電車はかわらずあって…となんだか矛盾を感じた音楽家も多くいたようです。

芸術や文化は、直接コロナウイルスに立ち向かえる訳ではありませんが、少なくとも疲れた心を癒すことができるのではないでしょうか。家に一輪の花があるだけで気分が明るくなるように、音楽が人々にとっての希望になりますように...。

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