人が人を裁くという事〜裁判員を経験して〜
ご無沙汰してます。ゆみです。
さて、早速ですがタイトルの通りです。この度、裁判員制度で裁判員として、とある裁判に参加してきました。
元々ね、司法に多少なりとも興味はあったの。父が若かりし頃行政書士を志してたとかで、人並み以上には法律詳しくてさ。家にポケット六法みたいなのもあったし。でも父も母もゴリゴリに理系の人間で、私も例に漏れず理系脳なので、まぁ自分に司法の道は無いだろうなと勝手に決めつけてた。そもそも人を起訴したり弁護したり裁いたり出来るような人間じゃないし。面倒くさいじゃないですか、人間って。ちゃんと向き合うとなるとマジで面倒くさい。全然、他人様の感情とか推し量れないし。数字や無機物と触れ合ってた方が楽ちんよね〜と思ってまぁ調剤薬局に事務として勤めたり登録販売者の資格取ったりしてみたんすよ。でもそれにも飽きちゃって、全然理系じゃないアパレル販売員なんかしたり、なんやかんや働いている時に、裁判所からのお便り。
まず最初に「あなたはこの1年間裁判員に選ばれる可能性がありますよ。名簿に名前が載りましたよ。」という通知書が来るんです。後から言うのもめちゃくちゃ格好悪いのだけれども、その時から「これは…なんだか選ばれそうな予感がする…!」とずっと思っていて。本当に選ばれちゃった、という感じです。
とりあえず↑を読んでくれ。わざわざパンフレットに書かれてあるような事はここでは書きたくない。
この記事では目次を作って、分かりやすく、通知書が届くところから最後の記者会見までの流れを書いてくださってます。
そうですね、私の時との相違点は、補充裁判員が2名ではなく3名だった事や(このコロナ禍だし普通に冬時期で体調を崩す人が出るのではと見越して)、約2ヶ月にわたりその内の20日(選任手続きの日を入れるなら21日)霞ヶ関に赴いたという、裁判員裁判にしては長期だったという事くらいでしょうか。
勝手にこの記事を紹介しているので、そでこさんに怒られたらリンク消します、すみません。
てかそもそも裁判員の選ばれ方を知らない人が多すぎる。国、もっとしっかり広報してくれ。「拒否権あるんじゃないの?」とか、「候補者全員と個別面談してから選ばれるんでしょ?」だとか、まだまだこの制度って定着してねえんだなぁと改めて思った。勿論例外もあるが基本的には拒否権ないし、選任手続きに集まった30〜40人全員と面談してる時間もねえわ!裁判官もそこまで暇じゃねえんだぞ!「反社と繋がりがないか」とか「身内に司法関係者はいないか」とかの簡単なアンケートとって、あとは裁判官・検察官・弁護士がパッと見で「あからさまにこいつヤベえ」って人だけ省いて、残った人でPCによる完全なランダム抽選となります。いちいち説明するの面倒だから正しい知識を国民に与えておくれ、頼む。
あと選ばれた後ね、職場にお休み貰わなきゃならないし、家族とか最低限の近しい人間になら「私裁判員に選ばれまして…」と言うのは全然OKなのに「え!守秘義務あるんじゃないの!?それ言っちゃって大丈夫!?命狙われたりしない!?」みたいなのもありました。じゃあどうやってお仕事休むのよ、只々休みがちな人になっちゃうじゃんね。はぁ、愚痴みたいになってしまった。
約2ヶ月間苦楽を共にしたファイル、私の相棒です、まあゴリゴリに機密情報載ってるからシュレッダー行きなんですけどね。
本題に移りましょう。
いや、本題もクソもないんだけどさ。これって裁判の内容にはどの程度触れて良いのでしょうかね?評議の内容を言っちゃいけないのは分かる、でも判決のニュースも出てるし事件の概要くらいは良いのかしらね?守秘義務、どこまでか分からん〜!!
まあザッと言うと、組織的なテロ事件(幸い被害者は居ない、物損だけ)で、証拠物からは被告人の指紋も出たり絶対になんらかに関わってるのは間違いないんだけど、じゃあそのテロ事件の首謀者と言うか、絶対にその事件に被告人が関与してると間違いなく言えるかと問われると、そうとも言えない証拠ばかりで、無罪放免になりましたよ、ってのが私が今回担当した事件のあらまし。まあよく分かんないっすよね、私も未だに100%理解してるとは言えないし。でもめちゃくちゃ真剣に考えて自分の意見を述べたし、良い評議が出来ましたよ。他の裁判員さん達も優しくて聡明で、和やかだけど意見はしあえるとても良いチームだったと思います。
学んだ事ね、人では人を正しく裁けない。飽くまで私が経験した裁判では、の話だしすっごい主観的な自覚はあるから気分を害した人が居たらごめんなんだけどさ。
今回組織的な犯行なのでまあ被告人は黙秘するんです、仲間に迷惑をかけまいと。そしたらもう、全ての真相を知る人間は被告人だけになってしまう、検察官や弁護人を含め我々はどう頑張っても知るすべが無いんです。神様にでもなって空から万物を見ていない限り、無理なの。お手上げ。
そこへ更に「疑わしきは被告人の利益に」という現行の司法制度がトドメを刺す。ほら、昔の日本って拷問かけて無理やり自白させてたとかあるでしょう。明治大学博物館に1度伺った事があるのですが、石抱きとか、水責めとかね、ああいう死なないけど痛くて苦しいやつ。そういう過去があるし、とにかく冤罪を無くそうと、灰色は白色として考えなければならない。そりゃ正しく裁けないし、泣きをみる遺族も減らないわ。「仕方がない」と言えば、それまでなんだけどさ。
↑こういうやつよ、想像するだけで脛が痛む
すごい真面目くさった話になってしまったので馬鹿みたいな余談でも挟みましょうか。
裁判ね、やっぱりお堅い雰囲気を崩さない為か、言うなれば揚げ足取りゲームなので、日常会話ではまあ口にしないであろう単語もチラホラ出るんですよ。
誤記、近接、排斥、諮問etc.
口頭でのやり取りなのでまずそれを瞬時に脳内で漢字に変換しないといけないし、白熱してくると会話のやり取りのスピードも上がってくるので情報が大量に降ってくる。
これ、私は割と普段から本を読んでいるし地頭も人並みに良い自覚はあるので、なんとか付いていけたが、テストで赤点取ってばかりだった馬鹿は話の2割も理解出来ないだろうなぁと思う。
小学生の時かな、5・6年生の高学年の頃。クラスに山田大貴君という、はちゃめちゃに馬鹿だけど強心臓で疑問に思った事はなんでもすぐに先生に質問するという男子が居てさ。もう面倒になった担任は1学期の後半くらいかな、「あなたの質問がくだらなかった場合、愚問だと答える」と宣言していて。その後、山田君のクソみてぇな質問には「愚問です」の一言で答えてたんですね。あなた1人の為にわざわざ説明する必要性もないし、このまま授業を進めます、と。
当時の私は「正しい」と思ったんですよね、だって山田君以外のクラスメイトはみんな理解しているし、山田君にみんなの足並み揃えてたらカリキュラム終わんないよ、担任の判断は正しい、そう思っていました。
でもね、もしこの裁判に山田君みたいな人が参加してたら、なんて考えるとめちゃくちゃ怖いですね。決められたカリキュラム(公判日程)はある、でも裁判員の1人は理解出来ていない、どうするんでしょうね。人の今後の人生を左右するという重大な局面。補習の時間でも設けるんでしょうか。
そう言った意味でも、私は本当に恵まれました。ご一緒した裁判員の方達は勿論、素人考えに耳を傾けて適切な言葉をかけてくれる裁判長や裁判官も、みんな本当に賢くて人格者ばかりでした。余談でした。
裁判が終わって思う事ね。最初はやっぱり、無罪という判決に悔しさがあった。みんなで話し合って、満場一致の結論だったけど、「なんでこんなグレーな証拠しか出ないの!?グレーにグレーを重ねてもそれは黒にはならないんだ!こちとら白と言わざるを得ないんだよ!立証責任は検察にあるんだぞ!もっとしっかりせい!!」って感じだったの、内心はね。でもなんだか、評議した日から判決を言い渡す日までちょっとだけ日が空いてさ、感情は徐々に"無"になっていった。だってあれだけ証拠に対して真摯に向き合ってきたしめちゃくちゃ議論した、そこに悔いはない、合理的で理に適っている、今の制度ではこの結論が限界だ、むしろこのまま釈放して当然公安警察はその後を尾けるので組織の全貌を明らかにしておくれ、とかもう本当に色々な思いを経て、無です。
一部では「被告人、歳も歳だしこれからどうするんだろうねぇ」と同情する声とかもあったけど私は何も思わなかった。いや、正確には「年老いて情けなくみえるけど、強い意志を感じる、死ぬまで活動家として生きるのだろうな、あなたはとても利口ですね、裁判中の立ち回りも完璧でした、今回の件は上手く言い逃れ出来ましたね」って思ったかな。判決が白になったからと言っても、グレーではあるんだ。我々は死ぬ程グレーの証拠を検証してきた。同情なんて、しない。
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ここから先は私の決意表明というか、今後の方針なので、私に興味がある人だけ読んでほしい。
とりあえずここまでお読み頂きありがとうございましたね。私も順序立てて、目次とか作って記事を書けば良いのにね。思い浮かんだことをそのまま書き連ねてしまうから読みにくいでしょうに、お気の毒さま。ここまで来たからには、もう少しお付き合い願えますでしょうか?
判決を言い渡す最終日にね、「裁判を終えて率直な感想など」と裁判長に促されてみんなそれぞれ思いの丈を口にしていったんです。何を血迷ったのか、私はこの裁判を共にしてきた皆様の前で「司法に興味が湧きました、ちょうど転職を考えていたので裁判所事務官か検察事務官を目指して、来年度の公務員試験を受けようかと思っています」なんて公言しちゃってね。まあ私のTwitter見てる方はもしかしたら既にご存知かもしれませんが。今はもう完全に意志が固まって、検察事務官になりたいと思っています。調べたら、検察事務官でも3年以上働いて、試験に合格したら副検事、挙句には検事にもなれるそうじゃないですか。まあそうなるには、かなり優秀じゃないといけないのは分かってるけどさ。分かりやすくキャリアが積める、常に向上心を持ち続けられる、素直に「やってみたい」と思った。
まあ他にも理由は色々とあるのよ。実際に裁判を経験してみてね、基本的に主導権は検察側にあるなと感じたし、弁護人は「それは違う」と揚げ足とったり反対尋問で被告に有利になるような質問を投げかけたり、基本的には受け身なのよ、受動的なの。まあそれは裁判によって変わるんだろうけどさ、飽くまでも私が経験した裁判では、の話ね。裁判官も基本的にはずっと話を聞いているだけなの、受動的。もちろん審議の際は能動的だけど、裁判官って常に公正な目でどちらの意見も同じだけ聞いてって、かなりの人格者じゃないと出来ないなって。私はそんな聖人みたいなフラットな心が1mmも無いからさ、罪を犯したならばちゃんと罰せられるべきだし、ちゃんと罰せられることが抑止力にも繋がってくると信じている。そりゃ人だからさ、人生で1度くらいはちょっと大きな罪くらい犯すかもしれない、本当はダメだけどさ、無理よ、人間なのだから。法に触れない小さな罪なら私だって死ぬ程犯してるでしょうし。嘘をつくとかね、そんなの挙げていったらキリがないわ。
なんの話ですか?こうやってすぐ話が逸れる。良くないですね。
まあ1番能動的に事件に携われるのは検察かなって、事件を捜査して、起訴不起訴決めてって、責任ある仕事よね、その分やり甲斐もありそうだなって。検察事務官としてその一端を担えるの超良くないですか?多分私正義感強い方だろうし。事務作業とかも割と得意ですよ、どうですか、向いてそうじゃないですか?
あとまあ、私情もある。女性の検察官って、増えてきているそうだけどまだまだ少ないなって感じたの。1つの裁判しか経験してないくせに何をほざいているんだ、って感じではあるのですが。
性犯罪って無くならないですよね、男と女という2つの性別がある限り。
私ね、強姦された事があるの。強姦っていうと大袈裟かな、でも私は望んでいない性交渉だった、私が望んでないなら強姦って事でいいんじゃないかな、でも抗えない、だって相手ラグビーやってたとかで体格良いし、力勝負じゃまず勝てっこない、しかも当時私が働いていた会社の上司だよ、拒否したら職場での立場がどうなるか、怖い、でも相手既婚者だし、お子さんも居るのに、なんで、そんな目で見るの、"女"として私を見るの、怖い、気持ち悪いけど受け入れるしかない、だって、だって…
この話をし始めたらそれこそもう一つ記事が書けるので割愛しますが、まあ当時の職場の上司(既婚者)に望んでない性交渉を持ちかけられてそれをヘラヘラしながら受け入れてしまったんですよね。相手は和姦だと思ってるだろうよ、おめでたい頭でなにより。
6年経った今でもそれはもう屈辱で、あの時すぐに病院に駆け込んで私の体から相手の体液とか検出されていたら自信を持って訴えてたのにな、勝てただろうなとか考えちゃう。まあそもそも相手に抗えないと悟ったから行為を受け入れた訳だし、当時は訴えようなんて微塵も考えなかった。これが公になったら、相手の奥さんはどう思う?お子さんは?罪を犯した周りの人間みんな不幸になるなら、私だけでいいよ、不幸になるの。
男の人、コワイ。それだけが弱冠20歳の私に刻み込まれた。
強姦事件って、立件するのが難しいのは想像に容易い。「相手も合意の上だと思った」って言っちゃえばいいんでしょう。僕の私の勘違いでした、すみませんでしたって。クソみてえだな。
やっぱりそういう被害に遭うのは圧倒的に女性が多いだろうし、もっともっと女性検事も必要だなって。こう書くと私が検事目指してるみたいで、いや実際なれるならなりたいけどさ、でも別に自身が検事になって被害を受けた女性に代わって戦いたいと言うよりかは、そういう事件に関われる立場に女性が1人でも増えたら良いよねって。検察事務官とか、もう最悪カウンセリング室の人でも良い、死ぬ程下っ端で良いから、なんらかの形で彼女達の拠り所になれたら良いなと思いましてね。
なんか大義名分掲げてますが、まあ久し振りに強く心揺さぶられるものを感じたので、現在検察事務官を志している所存でございます。これで来年度の試験落ちたらめちゃくちゃ格好悪いですね、はい、勉強します。応援しててね。