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第94回メーデーに寄せてー「貧困バッシング」をみんなで止めよう

なぜ日本だけ賃金が上がらないのか?

私は、子どもの貧困問題に取り組んでおりますが、子どもの貧困は、親の貧困です。私たちが支援する子どもの親の多くは働いています。働いていないから貧困なのではなく、働いているのに貧困なのです。
子どもの貧困を解決するためには、親の賃金が上がればいいので、なんとか、賃金が上がる方法はないかとずっと考えています。

日本以外の国は、みんな賃金が上がっているのに、なんで日本だけ賃金が上がらないのか?
不思議ですよね?
 
そこで、思い至ったのが、諸悪の根源=貧困バッシングです。

日本では貧困バッシングがとても強いです。収入の低い人や生活の苦しい人が助けを求めると世間の一部がその人を強く叩いてしまうため、皆、苦しくても声を上げられません。しかし、私は、これが日本全体の賃金水準を押し下げていると思うのです。

日本固有の社会課題にワーキングプアがあります。
「働いているのに貧困」これは、とてもおかしなことで、労働に対して正当な対価が得られていないのに働いてしまう。
なぜでしょう?

ワーキングプアで苦しいというと、バッシングを受けるからです。
稼げないのは、貧困なのは、お前が悪い。自業自得だと、声高に攻める人がいる。

一方、海外ではどうでしょう?

給与に不満のある人が一致団結をして、デモやストをして、その結果、賃金が上がっています。デモやストで、多くの人が多少迷惑を被りますが、「他人の賃金を上げるため」に、いわば協力をしているのです。
そうやって全体の給与が上がっています。
今や日本の賃金水準は他の先進国と比較すると芳しくない状況なのは、みなさんもよくご存知だと思います。

 


貧困バッシングをして、何か良いことがあったでしょうか?


ありません。
我慢して、無理をして、安い給料で長時間働いて、体や心を壊してしまったり、自ら命をたったりする。シングルマザーがダブルワーク、トリプルワークで働いて倒れてしまう。それで子どもがヤングケアラーになる。
不幸の連鎖です。
 
日本の賃金上昇率は長年停滞していますが、その原因の一つに労働生産性の低さがあります。生産性が低いのはICTの導入が遅れているからとも言われています。
なぜ、ICTの導入が進まないのか?
安い賃金で、しっかりと仕事をしてしまう労働者がいるからだと思います。安い賃金で働き続けるかわりに、ワーキングプアの人にこそ、無料のスキルアップを提供して、生産性の高い仕事をしてもらう。そうすれば、日本全体の労働生産性が向上して、その結果、日本全体の賃金も上がると思うのです。

私が出会ったあるシングルマザーは、
「実は、私、ワイン販売コンコールで全国1位になったんですよ」とおっしゃるのです。でもその方は、コンクール1位なのにパートで給料も安くて、メンタルも不安定になって、結局仕事も辞められて。
もったいないですよね。日本の貴重な労働力の損失です。

ワーキングプアは、一見お得なように見えて、日本全体で見れば、大きな損失です。誰も得をしません。


貧困バッシングをやめて、働いている人同士が団結しよう


そして、貧困バッシングは、ワーキングプアの方々を、ワーキングプアに縛り付ける元凶です。賃金が安くて困っている人が、まずは安心して声を上げられるような社会にしていければと思います。
貧困バッシングをやめて、働いている人同士が団結して、みんなでさらに賃金を上げていく、それが日本の復活につながると思うのです。

今、少し、日本全体の調子が悪くて、ギスギスしてしまっていますが、こういう時こそ、みんなで、意識をして優しくすることがとても大事だと思っています。
 労働生産性の話をしましたが、逆に言えば、生産性は仕事の領域だけで十分ではないですか?

困っている人をちょっと助ける、人に親切にする、少し支援をする、寄付をする、こういうことは、コストパフォーマンスも、タイムパフォーマンスも悪いかもしれませんが、それこそが人生の喜びだと思います。
企業もぜひ、社会貢献を積極的に行っていただければと思います。

今日のこのメーデーのイベントも、コスパやタイパでは測れない、大きな意義があると思います。本日多くのNPOなどのソーシャルセクターがブースを出しております。ぜひ、こちらにもお立ち寄りください。ちなみにキッズドアはC12でございます。皆様のお越しをお待ちしております。
 これからも日本連合組合総連合会の活動がますます活発になり、労働者の権利が守られ、皆が幸せに働けることを願って、私の挨拶を終わりにさせていただきます。


*この原稿は、2023年4月29日に開催された連合主催の第94回メーデーでの挨拶のために作った原稿を一部改変しています。

メーデでの挨拶はこちらからご覧いただけます。

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