9月28日 ネット空間におけるマイルド加害/トランプの確定申告問題ダイジェスト/NJの富裕層増税/最高裁判事候補について考えてみた
今日はいつものようにアメリカの話をする前に、ひとつ書いておこうと思ったことがあります。
先日、ネット上のマイルド加害(マイクロアグレッションともいいますね)を目撃しました。目撃した、と言っても、正確に言うと、産後うつに苦しみ、クリニックにいった方のツイートがバズっており、そのリプ欄に、苦しんでいる人たち、苦しんだことのある人などのツイートがたくさんついていたのをひとつひとつ読んでいったら、目に入ってきたのです。すっかり荒れた場所になったようなTwitterでも、なかなか人に言うことのできない苦しみを吐露してバズり、共感空間ができる、という美しい側面もあるわけですが、この手のツイートはバズればバズるほど、必ず加害にやってくる人たちが登場します(へーと思った人は、試しに見に行ってみてください)。私の目に入ったツイートは、「それ言わなくていいよ」というものでした。罵倒しているわけでも、侮辱しているわけでもない、けれど、わざわざ不快にさせようという意図はわかります。だからマイルド加害なんですね。
やりとりをしようと思ったのは、その人のプロフィールを見に行ったら、国の機関で仕事をしている、と書いてあったからです。自分以外の他者に、していい、してよくないなどとと書くことは、「クソリプ」というネット用語で表現してしまうことが多いのですが、まずもって大きなお世話だし、小さいとはいえ自分以外の他者の行為を邪魔したり、制限しようとしたりすることは、立派な人権侵害の一種です。普通の人がやっても十分恥ずかしい、いけない行為ですが、おまけにそれをやっているのが、国の機関で仕事をしている人の匿名アカウントなのです。それは加害ですよ、ということを伝えたつもりが、言い方が悪かったのかもしれません。あるいは読解力が低い方だったとも言えます。まず、私にそれを言われることが納得がいかなかったようで、「なぜあなたに?」というところから、「攻撃された」という認識に変わっていきます。職業差別だ!とも言っていました。ちなみに私は一語たりとも攻撃的な言葉は使っていませんし、むしろ、「人権派を演じている」などとジャッジメント単語を浴びせられたのですが、次には、自分の収入や地位の話を持ち出して、自分を大きく見せようと頑張り始めたので、逆にこちらが恥ずかしい気持ちになり、そこでやり取りは終えることにしました。最後まで、自分がしたことが加害だということは理解できなかったようです。
こんな話をくどくどと書いているのは、この人に恥をかかせるためではありません。この世の中にはこの手のマイルド加害が溢れているからです。職場や交友の場で、カジュアルに、容姿のことを評論したり、悩みや愚痴を否定したり、「聞きたくないよ」とシャットダウンしたりする、ということが、普通にまかり通っています。そしてネット空間だと、相手の顔が見えない分、不快感もひとしおです。私は、こういう加害をわざわざしにいくタイプの人はが(今回のやりとりでも可視化されたように)、実は気が弱くインセキュアなタイプで、だからこそ、弱い人に加害に行くのだ、ということがクリアに見えるので、ちっとも怖くないのですが、こういう加害の積み重ねが人の心を病ませたり、傷つけることもよくわかっています。問題は、加害している人が、加害をしている、という意識なくやっていることなのです。「人権派」という言葉が私への侮辱のツールとして使われたのには笑ってしまいましたが、産後鬱の苦しみを吐き出したい人が、見知らぬ人に加害を受けずに気持ちを吐露できる世の中であったほうがいいと思っているのは確かです。
ロックダウンの初期、アメリカ広告業界の重鎮、シンディ・ギャロップさんにインタビューしたときに、「コロナウイルスのおかげで世の中が変わると期待しているのですが」と言ったら、ノーノー、自分が変えるのよ、と言われたことがありました。私は、職業柄、世の中のオブザーバーだという意識が強かったということもあり、はっ!となりました。
いつもTwitterに張り付いているわけではないし、まめではないので、いつもできるとは限らないのですが、目に入ってきたときには、口を出そうと思っているのは、ネット空間だって、私たちひとりひとりが作る場所だからです。加害は、誰かがだめだと言わなければ、延々と続いていきます。幸い、私以上に、こういう活動をまめにやってくださっている方が、世の中にはたくさんいて、いつも頭を垂れていますが、自分たちの世界は自分たちで作る、という意識が必要なのだと思います。
自分のこれまでの職業人生を振り返ったときに、今、あれも加害だった、これも加害だった、という例がいくらでもあります。セクハラやモラハラはあまりも当たり前すぎて、また、自分の立場が弱かったこともあり、毎回ちゃんと声をあげてきたかといえば、答えはノーです。今は、知らんぷりすることは、その加害が自分以外の人を対象に続いていくことを許すことになったのだ、ということがわかります。だから、もう我慢して口をつぐむことは絶対にしないと決めています。
もうひとつシンディが教えてくれた「誰でも今日から始められるマイクロアクション」に、「毎日、自分の考えをはっきり口にだす」というものがあります。だから最近はそれを意識しているのですが、毎日自分の考えを我慢せずに口に出すことの解放感といったら! というわけで、私のストレスを心配してくれる人がいるのですが、ストレスはまったくたまっていません。というわけで、このマイクロアクションをみなさんにもおすすめしたいと思います。
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