くまモン、キャラクターを超えて概念になる
かつて、勢いに任せて「くまモンに学ぶ仕事の流儀」を書き殴ってから早4年。
我ながらよくこんなに書いたものだと思うけど、あれからもくまモンへの愛は衰えていません。ただ、おかげさまで仕事が忙しくなったり、他にもハマるものができたりしているうちに、相対的にくまモンにかける時間は減っている気がします。振り返ると、どちらかというと自分が精神的に不安定な頃にくまモンへの偏愛(偏執)が高まる傾向にあるので、もしかすると近年は精神的に穏やかに過ごせているのかも。
前職の会社が、熊本市にホテルを開業なんて話を聞いた時はさすがに浮き足立ちましたが、ひとまず「テレビ局によって“くまモン“のイントネーションが違う」ことだけは注意するように申し送りしておきました。
そんなわけで、ここ最近くまモン活動を怠っていたのですが、たまたま地方のゆるキャラ運用について質問をもらったので、久しぶりに真剣にくまモンに関するニュースを漁っていたところ、なんと熊本県では『くまモンランド化構想』なるものがぶち上がっているとのこと。
最初は『くまモンランド』といういわゆるアミューズメントパークでもできるのかと思ったのですが、ニュースによると、DX推進によるくまモンランド化構想を目指し、JTBやパイオニアやリクルートなど大手企業との連携協定を結び、くまモンランドDX事業コンソーシアムを設立し…???
にわかにはよく理解できなかったのですが、要は、くまモンスクエアをはじめとする既存のくまモン関連の観光施設を拡大しつつ、そこにメタバースなどのデジタル技術も積極的に投入し、アフターコロナ時代にも対応する活性化…ということらしいです。
ただこれ、いろいろ読んでみると、どうやら単なる観光PRとかの話では無いようで…熊本県が出している「新しいくまもと想像に向けた基本方針」によると
くまモンランド化構想=世界中でくまモンが愛され、熊本県全体をくまモンの魅力あふれる場所にすることで、ヒト・モノ・企業が熊本に集まるようになるという考え方
(出典|熊本県『新しいくまもと創造に向けた基本方針』より 令和3年3月)
つまり、「くまモンランド」とは熊本県全体を差し、熊本県があらゆる面で魅力的な状態そのものなのです。
たしかに、くまモンは「営業部長」であると同時に「幸せ部長」という役職がついていて、外向けのPRだけでなく、県民に向けても幸せをもたらすという役割を持っています。とはいえ、そのぐらいだと、くまモンという県職員のような存在が特定の役割を担っているという捉え方はすんなりできると思うのですが、もはやくまモンは、“熊本県の魅力そのもの““熊本県が魅力的である状態“という抽象的な概念にまで昇華していたのです。
4年前に記事を書き殴り、その後も活躍目覚ましいくまモンではありましたが、一方で、正直なところ大抵のことはすでにやり切ってしまっているし、これ以上活動量を増やすのは、マンパワー的にもクオリティコントロール的にも難しいだろうな、と勝手ながら心配していました。それに、あくまで県のために働くくまモンが、県の利益に帰結しないような派手なことをやっても意味がない。これ以上何をしたらいいんだろうか?と、私が何をするわけでもないのに思っていたのですが、ここでもくまモンは想像を超えてきました。
くまモンがどこに出演するとか、くまモンが何をするとかではなく、くまモンという「概念」が人を呼び、企業を呼び、DXを推進していくのです。これは、世界中どこを見渡しても例のない地方創生の考え方なんじゃないでしょうか。そもそも海外は“ゆるキャラ“すら馴染みがないというのに。
地方創生のために何かわかりやすい「旗印」を立てようとするのはどの地域でも同じで、新幹線やリニアに代表されるような公共交通機関を持ってこようとしたり、知名度のあるイベントを引っ張ってこようとするのは常套手段。ただ、13年前に「新幹線開通=危機である」から出発した熊本県は、やはり旗の立て方が違う。10年かけてコツコツ育ててきたくまモンは、ここまで立派に成長し、想像を超えるネクストステージを迎えました。ちなみに、現職の蒲島郁夫知事は今の任期を終えると満了なので、後任候補が注目されるのですが、くまモンが立候補してももはやあんまり驚かないかも。