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Afterコロナの観光業はどうなる?前向きなことだけ考えてみた(前編)

はじめに

緊急事態宣言が39県が解除され、私が住む山梨も少しずつですが経済活動再開の動きが見られます。

ここ最近、立て続けに「今後の宿泊業(観光業)はどうなる?」といったトピックのTV番組が記事がみられます。予想どおり、前職の代表が連日メディアに登場しています。
観光業はやはり、このコロナ禍で大きく影響を受ける業界の代表格とみられているのでしょう。実際、身の周りの宿泊業、観光業の業績は8割〜9割減といったところで、地域によっては休業を余儀なくされています。特にファーストキャビンの経営破綻は、私もユーザーだっただけにショックでした。

ただ個人的には、このコロナ禍のあと、観光業にとってプラスになることもたくさんあるような気がしています。そのような話題もすでに多くの方が発信していることではありますが、私自身の思うこともまとめておきたいと思います。

1.そもそもどれくらいダメージはあるんだろう?
2.マイクロツーリズムを正しく知ろう
3.本質的な運営力が問われる正攻法の戦いって悪くない
4.宿泊業の衛生管理力、リスク管理能力を侮るなかれ
5.相対的に宿泊業の価値はあがる

1.そもそもダメージはどれくらい?

まず、観光業が受けるダメージとして真っ先に言われることが「インバウンドが絶望的である」ということです。たしかに、ウィルスの危険が当面続く以上、自由な外国への行き来はできません。さらに諸外国のウィルスの蔓延は日本の比ではなく、しばらくは海外旅行には出られないという国がほとんどでしょう。ここ数年の日本におけるインバウンド市場の伸びはすさまじい勢いでしたので、これが失われるのは業界にとっても日本経済にとっても痛手......というのは一般的に想像されるロジックです。ですが、以前にも書いたように、実は日本の旅行市場の8割は日本人による国内旅行に支えられています。この市場はバブル崩壊でもリーマンショックでも揺らがなかったかなりの安定市場。なので、インバウンド市場が失われるといっても、実はそれはごく一部。まるで業界全体が壊滅してしまうかのようなイメージは正しくありません。

もちろん日本人による国内旅行も、かなり縮小しているのは間違いありませんが、通常だったら当然のように海外に出かけていた層が国内旅行にシフトするので伸び代部分もあります。これまで急速なインバウンド需要に対応するために、多言語対応や食事、宗教観への配慮でコストや労力をかけていたことも考えれば、日本人に専念すればいいならコスト面でも気持ちの面でも少しは楽になるはず。悲観的になるのはまだ早いのです。

2.マイクロツーリズムを正しく知ろう

昨今急速に話題にあがるようになったのが「マイクロツーリズム」という概念です。単純に「近場」「県をまたがない旅行」と説明されることも多いのですが、私は少し違うと思っています。事業者によっては「少人数・高付加価値の旅」と説明しているケースもあるようですが、私としては「狭い範囲のなかで魅力を掘り下げる旅」とでも定義したいと思っています。

旅行は一般的に、遠くへ旅をするほど何を見ても珍しいものです。飛行機で何時間もかけて外国に行けば、空港に降り立っただけで嗅いだことのない匂いがしたり、聞いたことのない言語が聞こえてきます。ビル群や信号のデザインもどことなく違うし、コンビニやスーパーに全くみたことのない商品が並び、食事の味も風習もなにもかも違います。国内であっても、沖縄や北海道に行けば、気候も食事も大きく違いますし、ただ町をぶらぶらしているだけでも楽しめるものです。
その一方で、広く浅くあれこれ名物を見てまわる周遊旅になってしまうことも多々あります。ガイドブックに載っている有名スポットに行き、名物料理を食べる...それも十分に刺激的ですが、裏をかえせば表面的な旅になりがちで、地元の人は実は「あんなの観光客しか食べたい」とか言っているなんて笑い話もよくあります。

対して、なにかひとつのテーマを狭い範囲のなかで深く掘り下げていくのが「マイクロツーリズム」です(と、私は解釈しています)。これなら県境をまたぐような旅行が難しい時期でも実現可能なので、「これからはマイクロツーリズムだ」という主張があるのだろうと思います、実は重要なのは、この「テーマ」や「掘り下げるべき価値」をいかに提供できるか、だと思っています。
旅行といえば、いかに非日常で普段とかけ離れた体験をするかに価値を置く人が多いなかでは、より遠くから来るお客様のほうがある意味で簡単です。遠い異国の地から来る方は、なにを見ても驚きの対象です。ただありのままを見てもらえば十分に満足してもらえるかもしれません。ですが、同じ県内から来るお客様にはそうはいきません。見慣れた景色や日常的な光景のなかから、いかに「特別」を提示できるか。これは、とてもハードルの高いことではありますが、一方でサービスを提供する側にとっては、観光業の醍醐味とも言えるものです。
見慣れた景色や日常の光景のなかに、わざわざ体験したいと思わせられるような価値を提示できたら、これはお客様にとっても、毎日の生活を豊かにする可能性があります。もっとも評価が厳しいとも言える近距離からのお客様の評価を得ることができたら、世界中のお客様に通用するとも言えるかもしれません。
そのためには、自分たちがいかに自分たちの地域を知り、当事者であるのと同時にいかに客観的目線を持てるか、という力が試されます。
これまで、いかに遠くに出かけて非日常を味わうかばかりを求めていた人たちが、国内、それも近距離に目を向けてくれているうちに、自分たちの住む町から価値ある発見をしてほしいと思います。(後編へ続く)


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