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すみなすものは

今度異動した職場そんなに楽しいの
前からやりたい仕事だったっけ
いいや全然知らなかった仕事
わからないからワクワクするの
#ジブリで学ぶ自治体財政
 
今日は2月の最終日。
年度単位で暮らす私たち公務員は年度末最後の1か月を迎えます。
この時期になるとどうしても気になってしまうのが「人事異動」です。
この時期の悲喜こもごもについては、これまでもいろんな形で記事にしてきましたが、特に私が主張してきたのは人事課の果たすべき説明責任についてです。

とはいえ、人事課がすべての異動、昇任について個別具体に説明してくれるわけではなく、結局は「置かれた場所で咲きなさい」って話になってしまいがち。
私も、人事課に答えを求めるのではなく、自分自身が誰に評価されたいのか、で考えたほうがいいよ、という話をしています。

自分は「評価」のために働いているのか。
誰から褒められたくて、どのように認められたくて働いているのか。
この記事ではそう問いかけている自分に対して、もう一度疑問を投げかけてみたいと思います。
 
そもそも私たちは誰かに「評価」されるために働いているのか。
先日、ある自治体の若い職員さんから私自身の役所人生について問われました。
今まで30年以上働いてきて、振り返ってみてどこが一番「やりがい」があったかという問いです。
産業廃棄物行政から始まった私の役所人生は、都市計画や会議場整備、地下鉄、水道といったハード部門から福祉、スポーツ、経済振興、教育といったソフト部門まで幅広く渡り歩き、企画、総合調整、財政といった市政運営全般に官房として携わる経験もしました。
またここ数年は各組織の総務部門の長として組織運営そのものにもどっぷり浸かり、今振り返ってもみてもよくこれだけたくさんの仕事を経験させてもらったものだと感心します。
そんな中で私が一番「やりがい」を感じたのはどの仕事でしょうか。
 
実は、常に今いる場所が一番「やりがい」があるのです(笑)
それはなぜか。実は私にとって「やりがい」は、「やりたいこと」がやれることではなく「やりたいように」やらせてもらえること。
自分の持っているスキル、ノウハウ、知識、人脈など自分の持つあらゆる能力を活用して、自分なりの方法でその場所にある仕事に「やりたいように」取り組めることそのものが私の快楽のツボなのです。
30年以上この業界にいると、いつかどこかで見たこと、聴いたこと、やってみたことの応用で片付くものがたくさんありますが、その応用具合によっては自分にしか着想できない、自分しか取り組めないものに仕立てることもできます。
何をするにしても、そこに自分なりのオリジナリティーを加え、あるいは自分なりの要求水準を満たす形でクオリティを上げ、実施することができる。
私にとっては、自分がこれまでの経験で集めたパズルのピースをはめていって新しい職場で必要とされる絵を描き上げることが楽しくてしょうがないのです。
 
そういう考えに立てば、どんな職場のどんな経験もこれまでの自分の経験を試す腕試しの場であり、また新たな経験を積みパズルのピースをため込む鍛錬の場でもあるわけで、そこには「成果」「評価」という概念はありません。
もちろん、期待された成果がでるように効率よく効果的に業務を遂行すべきことは言うまでもありませんが、私自身は短期間で異動してしまい自分が取り組んだことの成果を見届けることができなかった悔しさを何度も味わっていますので、その部分を自分自身のやりがいとすることはありません。
宮仕えの人生は他律的で理不尽なものです。
まして、組織として仕事をしているのに個人として成果を得よう、評価を得ようと思えば思うほど、それが自分一人の力では叶わない現実を感じさせられますし、異動や職務分担の変更で希望した職場、仕事内容にならなかったときの目標喪失感はいかんともしがたいものがあります。
そんな中で「置かれた場所で咲きなさい」と言われても単なる精神論、気の持ちようでしかないのです。
 
私に「やりがい」について質問してくれた若い職員に私は言いました。
仕事の対象物や成果そのものに「やりがい」を求めていれば、自分はそれぞれの異動先で失望することになったはず。
そうならなかったのは、すべての職場で「自分の能力の最大限活用」と「知識、ノウハウ、人脈の獲得」を喜びとし、それが叶うことを「やりがい」としてきたこと、その結果として、30年経って20近い職場を渡り歩いてきた今が一番無双状態、何をやっても「やりがい」を感じることができていると。
水道企業団50周年記念事業はまさにその真骨頂。
これまで仕事で培ってきた財政や総務畑での経験に加え、組織内外での「対話」、大学生や高校生との連携、SNSでの情報発信、得られた気づきの言語化、可視化など、これまで自分がいろんなことにチャレンジして体得してきた知識、ノウハウ、人脈をすべてぶち込んで、ここで与えられたミッションに貢献したことで、それだけの資源を投入できたことそのものへの充実感が得られ、また次なる挑戦を試みる自分へのインプットによる経験値アップ、自信獲得になりました。
件の若い職員さんも、現在の場所で与えられた課題が自分自身の成長の糧であり、またそこで積む経験が将来の自分の血肉となるということをイメージして日々の仕事に取り組むだけで、どんな職場でも充実したやりがいを感じることができると説教してしまいました(笑)。
 
「置かれた場所で咲きなさい」という言葉、私は嫌いではありませんが、置かれた場所で「置かれたように」咲くことは難しいし時には辛いことかもしれません。
どんな場所であってもそこで「好きなように」咲くことができれば、きっと毎日が楽しいはず。
そのためには「好きなように」できる自分を準備しておかなければいけません。
 
おもしろき こともなきよを おもしろく
すみなすものは こころなりけり
 
あまりにも有名な高杉晋作の辞世の句。
下の句は野村望東尼が付け加えたという説もありますが、この下の句は「最後は結局気の持ちよう」という精神論ではなく、どうやったら面白くできるかを考え、その準備をしっかりしておくことの必要性を謳っているととらえたいと思います。
私は、こんな心の準備をしていますが、皆さんはいかがですか?
 
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
 
★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
 
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