見出し画像

こんな予算要求はいやだ

「この予算要求,去年と全く一緒だ。」
「これはひどいな。去年計算間違いを指摘したところまで全く同じ。まさか同じ担当者?」
#ジブリで学ぶ自治体財政

先週末に地方公務員のオンラインコミュニティで表題のタイトルのイベントがあったようで,思わず吹きだしました。
予算要求の季節を迎え,ここだけは押さえておきたいポイントを財政課経験者がノウハウとして伝授するという趣旨の場だったようですが,タイトルが秀逸ですね。
私もこの手のネタはたくさんあるので,登壇者として参加したかったなあ。
というわけで,ネタパクリで恐縮ですがこのお題で私もちょっと大喜利っぽくやってみたいと思います。
「こんな予算要求はいやだ」

①首長から言われたことをそのままやろうとしている
全国津々浦々である財政課泣かせの予算要求です。
首長が公約その他の場ですでに「やる」と宣言している事業は,予算要求の段階で「どうせ最後は親分がつけてくれるから」と高をくくって事業の組み立てが甘くなることが往々にしてあります。
目的は何なのか。手法はその目的達成のために最も効率的,効果的か,といった予算計上時に必ず精査すべき事項の詰めがおろそかになり,財政課がそのことを指摘しようとすると「これは首長案件だから」と議論を遮られることも。
本当に困ったものですが,心ある財政課であれば毅然とした態度をとり「これ,本当に効果あるの」とぶった切ります。
「俺が言っているんだから文句言わずに予算つけとけ」と首長から詰められても首を縦に振らない度胸が財政課長には求められます(笑)

市民の税金を預かっているわけですから,その使い道に説明責任を果たすよう予算担当課に促すのは当然のことですよね。
詰めの甘い施策事業を実施して最終的に迷惑をこうむるのは市民ですし,その批判は首長に向けられるわけですから,そうならないようにしっかりと内部で議論して詰めるのは当然のことです。
もちろん,トップダウン以外の事業も同じこと。
何のためにやるのか,その方法は最も適切な方法か,という問いかけに耐えられない予算要求はその時点でゲームセットです。

②今年度の事業成果がまだ出ていない
ある社会課題を解決するための施策事業を検討する過程で,まずは実態把握のための調査費を計上することがあります。
昨年度の予算編成でさんざん議論して調査の必要性を認めて調査費を計上したのに,次の年度の予算要求時に尋ねると「発注が遅れてまだ調査結果が出てないんですよね」という回答が返ってくることがあります。
構想と計画,計画と実施,設計と整備の関係も同じです。

今年度の事業進捗やその成果で次年度の予算の必要性やその方向性を固めていくべきところを,予算要求の段階でまだ結果出てないってどういうこと?と思わず声を上げてしまうことが財政課時代には何度もありました。
必要性が検証されていない施策事業には予算のつけようがありませんし,その検証のために予算をつけたのにそれが適切な時期に執行されていないという時点で,前年度に予算を計上した財政課の思いも伝わっていないということで本当にがっかりします。
皆さんはどうですか。まさか今年の予算要求でそんな残念なこと起こらないですよね(笑)

③昨年度の予算編成で議論した内容を踏まえていない
これは経常的経費など継続的に行っている事業でよくあるパターンですね。
予算要求の際の積算方法の矛盾指摘や,事業実施に当たっての経費節減手法の提案など,予算を査定する中での議論を踏まえ「もっとここをこうしたらいいんじゃないですか」という言い渡しの形で財政課から提案することがあります。
当然,その年度の予算執行や翌年度の予算見積でその提案が反映されているだろうと踏んでいたら要求調書は昨年と全く同じ,ということがあります。
昨日書きましたが「来年度の予算編成までに整理しておきましょうね」といった宿題が放置されて腹が立つことも。

予算編成は,何にいくら予算を計上するかという結果だけを求めているものではなく,事業の目的や必要性を客観的に整理したり,最も良い手法を比較検討し,現状を改善したり,税金の使い道として市民に理解と納得が得られるよう効果を検証したり,といった,自治体全体で行われる組織としての思考,議論,決断に至るプロセスの集大成です。
予算がいくらついたかという結果だけではなく,そこに至る過程で交わされた議論もしっかり生かしてもらえないと,議論した甲斐もないし,ついた予算も生きたお金にならないと思うんですけどね。

他にもいろいろありますが,今日はこのくらいで。
皆さんからもこのお題でネタがあれば承ります。
単に予算がつかない,予算要求として未熟なものは多々ありますが,「こんな予算要求はいやだ」というよりは「もう少しがんばろう」的な感じです。
ただ,今日挙げたようなものは,私自身が財政課時代に現場との信頼関係,コミュニケーションを基礎としてしっかり対話,議論を重ねたいと思っているなかでがっかりさせられた実例をパターン化したもので,もう少し自分たちで考えてほしい,もう少し財政課のこともわかってほしい,そんな気持ちで現場を見ていた若いころを思い出しながらご紹介させていただきました。
逆に「こんな財政課職員は嫌だ(実話)」というネタなら皆さん腐るほどお持ちなのかもしれませんけどね(笑)

★「自治体の“台所”事情 ~財政が厳しい”ってどういうこと?」をより多くの人に届け隊
https://www.facebook.com/groups/299484670905327/
グループへの参加希望はメッセージを添えてください(^_-)-☆
★日々の雑事はこちらに投稿していますので,ご興味のある方はどうぞ。
https://www.facebook.com/hiroshi.imamura.50/
フォロー自由。友達申請はメッセージを添えてください(^_-)-☆
★「自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?」について
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
2008年12月に本を出版しました。ご興味のある方はどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?