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炭鉱のカナリアが羽ばたくとき

今日で私はここを離れるけど
辛いことあったらいつでも連絡してね
ここで言うと差し支えのあることは
外で私が言ってあげるから
#ジブリで学ぶ自治体財政

市役所を辞める理由としてこれまで「自分の時間を自由に使いたい」「全国から求められる期待に応えたい」と言ったプラスの理由ばかり述べてきましたが、33年9ヶ月も勤めた組織を離れるのに「何か嫌なことがあったのではないか」と思わない人はいないでしょう。
お察しの通り、嫌なこともたくさんありました。
不快なこと、理不尽なこと、不自由なことに不満と不安を募らせ、いくつかの小爆発を経て「辞める」という選択肢が現実的なものに移って行ったことは否定できません。
しかし「嫌だから」とそこから逃げるために仕事を辞めてもそこから先の人生を有意義に過ごすことは難しいし、自分に対して不快な思いを抱かせるものたちのせいで大好きなここでの立ち位置やこれまで培ってきたものを手放すのはそれこそ割に合わないと思い、「嫌だから辞める」というロジックを封印してきたのです。

先日、兵庫県で起きている事件をベースにこんな記事を書きました。
私たち自治体職員は、自治体組織の「中の人」として市民の行政運営を読み解く力を向上させる役割を担っていることや、自治体の中と外をつなぎ、市民と行政、あるいは市民同士の「対話」をつなぐ橋渡し役であること。
そのためには私たち自治体職員一人ひとりが役所の外側にいる誰かと「対話」ができるようになることが必要です。
自らの内心を開き(もちろん職務上知りえた秘密を公表するというのは違法ですが)役所の中で起こっていることやそこで感じている日々の感情について語ること。
そして役所の外側にいる誰かから、今、外側で何が起こっているか、役所がどのように見えているかをありのまま忌憚なく、自分の所管ではない情報も含めて耳を傾けること。
これが日々の暮らしで当たり前にできていれば、まずは「言いたいことを発言できる」という心理的安全性を測る「炭鉱のカナリア」になれているのではないか、というのが私の考えでした。

今回、私が市役所を辞めるということは、ここでいう「炭鉱のカナリア」のさえずりが聞こえなくなることかもしれません。
完全に同義ではありませんが、私が中途退職で市役所を去ることについて、何故そのような選択に至ったのか、何か不平不満があったのではないか、と推察されるなかで、私が感じている組織に対する思いについて何らかのメッセージを持って受け止められたい、気がついてほしいという気持ちもないわけではなく、そういう意味ではカナリアがさえずりを辞めたと捉えていただいても構いません。
しかし、辞めることそのものはあくまでも未来志向、新しい人生へのチャレンジであることも十分理解いただき、決して私が市役所を辞めることをネガティブな組織批判として受け止め、具体的な犯人探しなどされないようにお願いいたします。

最近、立て続けにこんな記事を書いていたのは、自治体職員の働きにくさについて問題意識が高じていたからですが、それは私が置かれていた環境と無関係だったわけではありません。
私自身が日々組織の中で感じる不満や不安について、そのことだけを具体的な愚痴、批判として論じるのではなく、他の組織で働く同胞たちも同じことを感じているのではないかと普遍化し、記事として発信する。
私がこれまでこの場で常に心がけてきたところです。
公務員の労働を取り巻く環境については、私が専門とする自治体財政の分野からは少し離れたテーマに捉えられるかもしれませんが、私は限られた資源を有効に活用し公務の能率を最大化することの重要性をとみに感じており、むしろこれからの自治体経営の根幹を成す、経費の節減、収入の確保といった事務事業の効率化だけでは手に負えない行財政改革の最後の切り札ではないかと思っており、つい筆に力が入るという側面もあります。
決して個人的な恨みつらみではありません(笑)
来年以降、こちらの方のテーマでさらに考察を進め、その解決に向けた実践についてもどこかで取り組んでいきたいと考えています。
同じ課題認識をお持ちの皆さんとの意見交換、連携をよろしくお願いします。

私が市役所を辞めた後もこのことを取り扱い続けるのは、私が「炭鉱のカナリア」であり続けたいという気持ちの現れでもあります。
市役所を辞めて自由な身になるからといって中のことを外に伝える役目についてお役御免とするのではなく、これからも役所の中と外をつなぐ情報発信の担い手でありたい。
私がさえずり続けることで役所の中で何が起こっているのかを外から知ることができ、聴いた人が安心したり、何らかのメッセージを持って受け止めたりできるよう、これからも自らの言葉で語り続けたいと思っていますが、中の人でなくなってしまう以上、私が発信する情報は過去のものになってしまいます。

そこで皆さんにお願いです。
私が炭鉱のカナリアとしてさえずり続けることができるよう、私にネタをください。
本来なら全国の公務員諸氏の皆さんから、それぞれの場所、立場で炭鉱のカナリアとしてさえずりを聴かせてほしいと思っていますが、実際に声を出すのはなかなか難しいこと。
私もこれまでかなり苦心してきました。
ですから、ぜひ自由な身として大空に羽ばたく私に言葉を託し、息苦しくて鳴こうにも鳴けない炭鉱の中からの声を、私という拡声器を使って世に知らしめてほしいのです。
それもまた、行政の中と外をつなぎ、相互の意思疎通、理解促進を手助けしたいという私が市役所を辞めて務める新たな役割であり、皆さんにご活用いただきたい機能です。
これまで私が体験してきたことやその中で感じてきたことも含めて、普遍的な話として整理し、私たち公務員の働きやすさや公務の能力向上、ひいては住民の福祉向上に役立つことができればと思っています。

本日、2024年12月31日をもって福岡市役所を退職します。
退職にまつわるよもやま話、長々と書き連ねてきましたが、これにていったん打ち止めとし、明日からは通常モードの「自治体財政よもやま話」へと戻りたいと思います。

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