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もっと効率的な方法はないですか

サツキ、よくきいてくれ。お父さんは今日もお仕事で帰れそうにない。
どうしても今日中に財政課の査定案をひっくり返さないといけないんだ。
お母さんのこと、メイのこと、全部サツキにまかせっきりにしてすまない。
#ジブリで学ぶ自治体財政

師走に入り、全国の地方自治体ではただいま令和3年度当初予算絶賛査定中ですが、その渦中にある全国の財政課の皆さん、予算要求担当課の皆さん、お元気ですか。
ちゃんと寝てますか。
ちゃんとご飯食べてますか。
ちゃんと家に帰ってますか。
きっと例年にない未曽有の財源不足で厳しい冬を迎えていることと思います。
お金のない中、財政課の皆さんはとにかく査定で削れる箇所を探すのに積算根拠を首っ引きでしょうし、予算要求担当課の皆さんは、生き残りをかけて全力で既存の予算を文字通り必死で守りにかかっていることでしょう。
その査定圧が強いほど、その予算防衛が堅いほど、互いにその戦いに投じるエネルギーは甚大で、相当に疲弊しているのではないかと気がかりです。

私も財政課の係長時代に5回、課長時代に4回の“越冬”を経験しました。
財政課に異動したばかりの頃は訳も分からず日々与えられるノルマとスケジュールをこなすだけで、人生で一番時間外勤務をしたと思いますが、その後、年を追うごとに時間外勤務を減らし、課長になってからは不夜城と言われた財政課の予算編成作業そのものを見直し、予算査定を行う財政課だけでなく、予算要求を行う担当課も含めた大幅な時間外勤務の縮減を果たすことができました。
今日はそのエピソードを紹介した過去記事をダイジェストでご紹介します。

まずは係長時代に私が時間外勤務を減らすことができた「一番大事なもののために」。

財政課2年目に我が家を襲ったある事件のおかげで、私は気づきました。
仕事は仕事で、一定の役職に就き、お金をもらって仕事をする以上、それなりの責任を果たす必要はありますが、究極の選択を強いられたときに自分の人生すべてを投げ打つほどの価値があるのか、そのために自分の健康や家族との関係性、プライベートの楽しい時間をすべて失ってもいいのか、を常に自分に問いかけながら、仕事以外のこととのバランスを常に考えるようになった、というエピソードです。

次に財政課長として職場の時間外勤務縮減に取り組んだ「逃げ出したい職場」

課長として5年ぶりに帰ってきた財政課は職員全員が異動を希望する異常事態で、課長である私がとった行動は。
仕事のやり方、組織の在り方を変えるのに、管理職の力は大きいですが、一方で、仕事の成果についても組織内あるいは外向けに問われ、責められる立場にある管理職が、仕事の成果を優先し職場環境の改善をおざなりにすることは、やむを得ない心理的背景がある。
しかし、そういう目先の、外から見える成果に気取られて労働環境の維持改善をおろそかにし、職員のモチベーションを下げて仕事が非効率になること、あるいは職員が辞めていくことや、健康を害して仕事ができなくなってしまうことは、人材という組織共有財産の価値を毀損することであり、仕事の成果を出せないことと同じレベルで責められるべきマネジメントの失敗。
私自身がこの異常事態から脱出できた成功体験を踏まえ、思いを綴っています。

しかしそもそも、財政課と予算担当課がそれぞれ予算査定の際に費やす時間と労力は果たして妥当なのでしょうか。
その疑問を投げかけたのが「できていないことを悟る」

財政課だけでなく予算編成に関わる各職場の職員が秋から冬にかけて財政課とのやりとりでどれだけたくさんの時間と労力を割いていますか。
3ヶ月にもわたる内部調整で費やされるエネルギーにふさわしい,よりよい予算案が出来上がっているのでしょうか。
あるいは,その内部抗争の徒労感が生むマイナスのモチベーションは,現場で市民に悪い影響を及ぼしていないでしょうか。
逆に,現場にプラスのモチベーションを持たせることができれば,同じ経費でもより効果的な事業実施が期待できるのではないでしょうか。
ここであえてもう一度財政課の皆さんにお尋ねです。
「もっと効率的な方法はないですか?」
これは財政課職員が予算査定の際にいつも現場に投げかける常とう句。
そんな意地悪な問いかけをさせていただいています(笑)

以上、3つのエピソードはいずれも胸に手を当ててみれば思い当たること。
そうだそうだと相槌を打ちながらお読みいただいている方も多いと思います。
そんな皆さんにあえてお願いです。
相槌を打つだけ、頷くだけで終わらないでください。
仕事と人生、職場と個人、どっちが大事かと言う感覚。
自分が時間を費やしているその作業が果たしてどれだけの生産性があり、その時間と労力を投入してまで到達しようとしている議論の精度をどれだけの納税者が求め、評価してくれるかという視点。
考えたって議論したって、足りないお金が沸いてくるわけではありません。
内部の対立に時間を割き、エネルギーを消耗するのではなく、財政課と現場が同じ方向を向き、限られた財源と限られた人的資源をどれだけ優先順位の高いものに投入していくか、そのことをどれだけ市民にきちんと説明し、理解を得てこの難局を乗り切っていくか、が今こそ求められています。
そういう状況認識を財政課と現場の双方が互いに共有し、今は争うのではなく協力しあうことにエネルギーを費やしてほしいと思います。

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