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続・稼ぐ自治体と言うけれど

今日はごちそうだ!なにかいいことあったの?
臨時収入があったから今日はちょっと贅沢
毎日贅沢するにはお給料がもう少し上がらないとね
#ジブリで学ぶ自治体財政

昨日、国から自治体に交付される財源への依存の話を書きました。
自治体関係者の中には「自主財源をもっと確保しなければ」との思いを新たにされた方も多いかと思います。
近年、自治体の自主財源確保への意欲は年々高まっており、「稼ぐ自治体」の名のもとに遊休資産の売却や貸付、広告事業やネーミングライツ等、様々な取り組みが進められています。
中でも「ふるさと納税」は、自治体の域外から寄付金を集めることができる制度として全国の自治体がこぞって取り組んでいますが、その過熱ぶりが別の問題を生んでいることは皆さん承知のことと思います。
ふるさと納税については、いろいろな人がいろいろなことを言っていますので、私の考えをご披露するのはまた機会を改めたいと思いますが、今日はふるさと納税を含めた自治体の自主財源確保策が陥りやすい罠について、「財源」の観点からお話しします。

昨日の投稿で、財源の区分けを二つお示ししましたが、実はあまり使われないもう一つの区分があります。
それは「経常財源」と「臨時財源」です。
経常財源とは毎年「経常的」に入ってくることが見込まれる収入、臨時財源は毎年確実に収入が見込まれるものではないもの、その都度得られる収入です。
自治体運営においてこの「経常的」という概念は重要です。
なぜなら自治体は、法令で定められた事務を確実に遂行する義務があり、お金がないので止めますと言えない、毎日、毎年、怠らずに滞りなくやり続ける「経常的」業務が自治体業務の大半です。
その業務遂行に必要な経費が「経常的経費」と呼ばれ、その経費に充てられるのが「経常財源」というわけです。

経常的経費で実施している事務事業は、お金がないからとやめることができませんので、毎年安定して確実に入ってくる収入を財源にする必要があり、多くは自治体が自ら賦課徴収する地方税と国が賦課徴収し地方に配分する地方交付税、そして各法令で自治体の実施を義務付けられた事務事業への国庫補助金、負担金で賄われています。
近年の自治体財政の厳しさは、人口減少等による税収の減と少子高齢化による社会保障費の増による収支バランスの悪化がその主な要因で、経常的経費を経常収入に充てても全てが賄えないという現象です。
しかし、最近話題のふるさと納税をはじめとする、自治体の新たな自主財源は、毎年必ず入ってくる経常財源ではなく、多くは「臨時財源」なのです。

臨時財源は、何らかのきっかけで一時的に入ってくるものですが、安定的に毎年度その収入が見込めるものではありません。
ふるさと納税などの自主財源確保策が功を奏し、飛躍的に収入が増えたとしても、それは臨時的なものであって、臨時的な支出の財源に充てるか、いったんは基金等で蓄え、将来の臨時的支出に備えるべきものなのです。
これを経常的経費の財源不足解消策として考えると厄介なことになります。
臨時財源で1億円の増収があった場合に、その1億円を毎年経常的に必要な施設運営費に充ててしまった場合は、翌年度に同じだけの臨時財源が見込まれない場合にも費用の方は同程度かかってしまうため、その財源を別の収入で補てんしなければ赤字になってしまいます。
自治体の自主財源確保は、その財源を充当する事業が臨時的なものか経常的なものかをよく見極め、適切な財源確保に努めてほしいと思います。

やはり、自治体の安定的な財政運営のためには、今後不足する経常的経費に充てる自主財源として、地方税収の確保が必須ということになりそうです。
このため、それぞれの自治体で産業振興や雇用創出、企業誘致や移住・定住の促進などに取り組んでいますが、一自治体ではコントロールできない市場経済全体が相手ですので、施策の成果が実を結び、税源の涵養につながって安定的な税収確保にたどり着くのは相当に至難の業です。
しかしそもそも、現在の自治体運営に要する費用、つまり現在の住民が享受している行政サービスを提供する経費を賄うのに現在の住民が負担する税金だけでは足りない、という事態に対して、その不足分を企業誘致や移住・定住の促進によって新たに呼び込む人たちが納める税金で賄うというのは筋違いのような気もします。

経済の疲弊によって財政状況が厳しい自治体のなかには、市民が自治体に依存し、何らかの支援をしてほしいという自治体への要望に対応する予算を組む財源がないという本末転倒な状況もお聞きしますが、よく考えてみて下さい。
自治体の経営は国等からの依存財源を除けば、基本的には市民からの税収によって成り立っています。
市民が自治体に依存したとしても、その自治体の財源は市民からの税収に依拠しており、結局は市民自らが経済活動を好転させ、そこから得る収入で納税しない限り、その税収を基礎とした自治体運営ができるはずがない。
自分たちが住む自治体は自分たちの稼ぎで支えるしかないのです。

それでも住民の負担で自治体運営ができないのであれば、現に享受しているサービスのうち真に必要なものを取捨選択し、経常的な事務事業の支出を見直していくことが通例ですが、その議論の中で抜けがちな論点が「市民の負担」です。
これ以上施策事業を見直すことができないときには、収入を増やすために市民の負担を増やす、つまり増税の議論をせざるを得ません。
地方自治体は、現行の法制度でも一定の範囲であれば独自で課税し市民の負担を求めることができますが、この伝家の宝刀を抜く自治体はほとんどなく、他の自治体との横並びを常に意識し、国も地方交付税の仕組みで財源を補填し、護送船団で自治体財政を保護しています。
しかし、国の台所も火の車。国の財政運営の影響を受け、今後も自治体財政を保護する現在の枠組みが維持される保証はありません。

今後、人口減少の影響を受けて国、地方ともに財政がひっ迫し、国が地方に国からの財源に依存しない自律的な財政経営を求めた場合には、市民が享受するサービスの財源を市民の負担で賄える収支構造とするために、さらなる市民負担へと舵を切らなければならない時が必ずやってきます。
そこで限られた財源の中での行政サービスの取捨選択が行われるにせよ、市民負担を伴う増税に踏み切るにせよ、その実現には納税者であり行政サービスを享受する客体としての市民の理解なくしては実現できません。
しかし、地方自治体は今、この苦渋の選択に向け、市民の十分な理解を得るためのコミュニケーションができているでしょうか。

※過去の投稿もご参照ください。

★2018年12月に「自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?」という本を出版しました。ご興味のある方はどうぞ。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
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