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まったりとした世界
私の中で、まったりとした世界に行く時がある。
どんな世界かと言われると、実在しない私の世界。
世の中とか社会から離れた、私の部屋の中でもない、私が意識することもない、ただなんとなく空が青くて、海が広がっていて、ゆるやかな、程よくあったかい波が自分のつま先に漂う感じの、そんな世界。
私の中にはそんな世界がある。
夕方。日が沈み始めたので、私は、少しずつ海の中に歩いて入っていく。
一歩ずつ、歩き始める。
さっきまでつま先に漂っていた水がくるぶしまで浸かり、足首、ふくらはぎ、膝、太ももと、段々と私の身体を巻き込んで、漂っていく。
そして胸、肩、首とこれ以上侵食されると息ができなくなる直前まで、ゆっくりと迫ってくる。
そして、私は、意識を集中させて、大きく息を吸う。
息を吸って、あったかい海の中に潜った時には、私はミズクラゲになっている。
ミズクラゲになり、あったかい水の中で息をし始め、のんびりと、ゆっくりと、漂い始める。
海藻に撫でられて、潮に染まり、魚と遊ぶ。
ただ、流れに身を委ねる。
するとだんだんと夜になってくる。
そこは夜は暗くて、太陽が上がれば明るい世界。
でも私は暗いのは怖くて嫌だから、夜は月明かりの下で眠る。
そして夢をみる。
夢の中で私は、人間として地球という世界で生きている。
人間という生体の中でもおそらく私は、人よりも繊細で脆くて、真っ直ぐに受け止めてしまうところがある方で、聞き流すのがとても苦手。
そんな私はどんどん受け止めるから自分の中にしずくが溜まっていく。
コップの中に、ぽつ、ぽつ、と溜まっていく。
気づいた時にはコップがいっぱいになっている。
そのコップからしずくが溢れ出した時、私の中から冷たい水が流れ始める。
その水は流れ出すとコップの中のしずくが尽きるまで止まらない。
水が冷たすぎて、私の身体は冷え切る。
そして空になってしまったコップは、落ちてパリンっと音を立てて割れる。
その破片が、私の中にあるあったかい何かに突き刺さる。
するとその傷から、血が流れ始める。
血が流れ始めても、私の中の傷だから治療方法がないため、血は流れっぱなしになる。
そしていつしかあったかいものが、完全に冷え切ってしまう。
私は、少しずつ、息ができなくなってくる。
少しずつ、眠くなってくる。
そして、私の中で大好きな人たちに感謝を伝えて、深い眠りにつく。
夢から覚めると、朝になっている。
海の中で私は伸びをして、太陽であったまった水を感じ始める。
ー今日も起きれたなぁ。
そして私は、海岸に向かって泳ぎ始める。
岸が近くなってきたところで、意識を集中して深く息を吸う。
そうすると首から下が海に浸かっている私に戻ってくる。
そして私は、少しずつ海の中から出ていく。
岸に上がって、砂を土踏まずで感じる。
ー今日も、生きてる。
そして私は、いつもの世界に、まったりとした世界から起きる。
おはよう、私。
2023.11.20