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65.職場定着のカギ
お久しぶりです。
前回、働き方を変えた話を書きましたが、今回は、現在、職場で具体的にどんな支援を受けているかという話などについて、書いていこうと思います。
環境調整のその後
以前、こちらの記事にて、環境調整についてのことを書きました。
詳しくは上記の記事を読んでいただくとして、ざっくり書くと、私の場合は、入社時に配属された部署にて、その部署の環境と、自分の障害特性とがマッチしないという状況になったため、環境調整として
業務の教え方を変える
そもそも担当する業務を変える
という配慮をしていただくことになった、というような話を書きました。
部署異動はせず、同じ部署にいながらも、間に社内ジョブコーチががっつり入った状態で、業務の指導方法を変えていただいたり、そもそも担当する業務を変えていただいたり、というような配慮です。
で、今回は、その後の話、について書いていくのですが・・・
部署異動はしてないけれど
実は、現在私がやっている仕事の、4~5割くらいは、なんと他部署の仕事です。
他部署で、手が回っていない業務について、ジョブコーチが事前に他部署の担当者と打ち合わせをしたうえで内容を整理し、手順を整え、マニュアルを作成した状態で、私に回してくださっているという状況です。
そしてわからないことがあれば、随時ジョブコーチに聞ける状況も作っていただいております。
自部署の仕事は、すでにできるようになったことについては、引き続きやっておりますが、現在新しく回ってくる仕事のほとんどが、他部署の仕事です。
そんな状況ですが、部署異動はしていないのです。
何がきっかけになるかわからない
前にも書いたのですが、実は私は面接段階では、
「人事部所属という形にして、色々な部署からの業務をやってもらうという感じにする」
か、
「人事以外の部署の所属にして、そこの部署の業務を主にやってもらう」
の、どちらかになる、というような話でした。
で、私は後者になったのですけれど、それだと、どうにもこうにもうまくいかなくて、結局は「人事部所属」という形ではないけど、だんだんと「色々な部署からの業務をやる」形になっていった、という感じです。
現在の形になるまでには、色々ありました。
ジョブコーチとも、本当に何度も話しあいをしました。
人事の偉い方々も巻き込んで、時間をかけて、最終的にこうなったという形なのですが、ひとつ大きなきっかけになったのが、ジョブコーチと何度も話し合いをする中で、ちょっとした雑談のつもりで話した「過去の趣味の話」でした。
実はそこから、現在の担当業務に結び付いていったのです。
人生ほんと、何がきっかけになるかわからないですね。
コミュニケーションの重要性
前にも同じようなことを書いたかどうか、ちょっともう覚えてないのですが(いろいろ書きすぎて探すのも大変)、同じ障害名だとしても、その特性は本当に人それぞれなので、正直、その人に必要な配慮が何なのか、というのは、「その人に聞かないとわからない」のです。
けど、どうも、私のこれまでの人生経験上、「当事者抜きで決められていた」という事が、結構あったように思います。
もちろん、会社としてできること・できないことがあるのはわかりますが、それでも、当事者が希望した配慮が、会社としてどうしてもできない場合には、代替案を提示するとかして、お互いに歩み寄り、良い落としどころを見つけていく、という事が必要だと思います。
会社の方が一方的に「これ以上はできない」とか、「すでに十分な配慮をしている」として、当事者の意見を突っぱねてしまい、代替案も提示しない、というのは違うと思います。
あと、上に書いたように私の場合、社内で自分に合う業務が見つかったきっかけが「趣味の話」からだったので(しかも最近の趣味、という感じではなくて、20ウン年前の趣味の話だったんですよ・・・)、時には雑談もしながら、お互いを知っていくというのも、重要なことなんだと思いました。
要するに、当事者と周囲が、しっかりとコミュニケーションをとって、方向性を決めていく、というのが大事なんだという事です。
トライアル期間も必要
採用面接の際に、障害に関する配慮の話をしっかりしていても、実際に働いてみると、どうもうまくいかない、というようなことが発生する可能性は大いにあります。
なので、入社してからお互いに「こんなはずじゃなかった」「思っていたのと違う」みたいになることを、できるだけ防ぐためにも、トライアル雇用や職場実習というものを、もっと活用したほうがいいと思うのです。
実際、私も今の会社に入る前は、トライアルや実習ができるところを中心に探していました。その方がお互いに、事前に「合う・合わないの確認」ができるので、いいと思ったからです。
私の場合、とにかく見た目で障害があることがわからない(普通に見えるらしい)ですし、面接でちょっと話した程度だと、これまた障害の程度がわからないみたいで、「できる人扱い」を受けてしまって、入社してから、私も与えられた業務が全然できなくて困るし、会社側も「こんなはずじゃ・・・」みたいな感じで、期待外れになってしまうしで、本当にお互い良いことがないという状況になってしまうのです。
なので、やはり本人の障害特性と、職場環境や任せたい仕事内容がマッチングするかどうかについて、一定期間実際に働いて、お互いに確認するという事は、自分の経験から言っても、必要なことだと思っています。
今の会社は、私が面接等受けていたときは、そういったトライアルや実習がなく、書類選考と面接と適性検査だけだったのですが、入社後、なかなか上手くいかない時期にジョブコーチと何度も話し合う中で、「自分はトライアルや実習ができるところを中心に求職活動をしていた」という事を話したことがありました。
それがきっかけになったのかどうかわからないですが、どうも最近は、うちの会社も、私のような事務系の職種でも、実習の受け入れをやり始めたみたいです。
定着のカギになるもの
障害者雇用率は少しずつ引き上げられており、現在は2.5%、そして今後2.7%へと引き上げられていくみたいです。
雇用率を満たしていない企業は、社会的責任を果たしていないとされ、企業名公表などもされることがあります。
が、そういった罰則があるから障害者雇用を頑張る、という考え方だと、なかなか難しいと思います。
実際、採用活動は頑張っているけど、なかなか定着せず、雇用率が上がらないというところもあると思います。
ここからは自分の体験に基づいた意見なのですが・・・
定着のカギになるのは、下記のようなことだと思っております。
心理的安全性の確保
キーパーソンの配置
本人とのコミュニケーションをしっかりとること
周囲への理解促進
適切な評価の仕組みを作る
まずは何よりも「心理的安全性」だと思います。
何かあったときに、話しやすい環境というのを作るのが、まず第一だと思います。
これがないと何も始まらない、とさえ思います。
例えば、業務上困ったことが発生した際、相談したら頭ごなしに注意叱責された、みたいな状況だと相談もしにくいです。
障害者本人が何か困りごとがあっても周囲に相談できず、一人で抱えてしまって結果的に離職につながる、という事は多いのではないかと推測します。
また、一緒に働く周囲の人も、何か困ったときに相談できる場がないと、これまたうまくいかないもとになりますので、まずは会社全体で、話しやすい、相談しやすい雰囲気を作っていくというのが大事かと思います。
次に、キーパーソンの配置です。
障害に理解のある方、例えばジョブコーチなどをキーパーソンとして配置して、障害者本人、周囲の方々、双方から相談等を受け付ける役目を担ってもらうというのは良いと思います。
やはり、定着のためには相互理解が必要なのですが、障害当事者と、同じ部署の人たちだけでは、解決が難しいことが発生する場合もあります。
そんな時に間に入ってくれる人、というのはやはり必要です。
そしてそのキーパーソンも交えて、本人とその周囲とでよくコミュニケーションをとり、採用面接だけではわからなかった、困りごとなどについて都度話し合って解決していくという事が必要です。
また、普段から、話しやすい雰囲気がある前提ですが、仕事を通して仲良くなってくれば、仕事とは直接関係ない話・・・例えば趣味がどうとか、日常生活ではこういうことが得意とか、こんな性格だ、とか、そういう情報交換ができれば(無理に聞き出すんじゃなくて、あくまで本人が話したくなったら自然にそういう話が出てくるという意味)そこから新たな気付きがあって、「もしかしたらこういう事も得意かも?この業務やらせてみようか?」みたいなことにつながる可能性があります。で、そこから、「こんな能力あったんだ?」みたいな発見があって、お互いにいい方向に行けたら、それはベストですよね。
さらに周囲への理解促進も重要です。
うちの会社の場合、年に2回くらい大きな人事異動があるので、そのタイミングで、新しく異動してきた人たちなどに、障害の説明と、配慮のお願いをする場を設けていただいています。
この辺は障害者本人がどこまで周囲に情報開示したいかによりますが、私の場合は見た目でわからない障害のため、きちんと説明の場を設けて説明しないことには何も伝わりません。なので私の方から、新しく部署異動してきた人たちなどに対して、障害の説明をしたい、と希望して、ジョブコーチにそのような場を設けていただいて、私も同席のもとで、説明をしていただいています。
そして最後に適切な評価です。
健常者と同じ評価方法では対応しきれない場合もあるので、その人の能力や特性に応じた、適切な評価の仕組みを作ることが必要だと思います。
やはり、障害のあるなしにかかわらず、適切に評価されているという事で、仕事に対するモチベーションが高まるというのは、あります。
正社員に対する評価制度はきちんとしているけど、そもそも(障害のあるなし関係なく)契約社員、パート、アルバイト等の非正規雇用に対する評価制度が整っていないという会社はあると思います。
うちの会社は実際どうなっているか、評価の仕組みの全体像は私にはわかりませんが、少なくとも、障害者であり、パートタイマーである私に対しての、評価基準、評価制度とかについては、あまりちゃんとした基準等がないのでは、と思います(推測)
多分、ちゃんとした制度があったら、制度の説明や、それに基づいた定期面談などもあるはずなのですが、特にないので・・・
そこまで特別なことではない
最後に私が、現職場で「皆様にお願いしたい配慮」としてお話ししているものを、簡単にまとめて書いておきます。
業務指示の際、あいまいな表現を避けて明確に指示をする
(例:納期を明確にする、等)口頭指示だけでは理解が難しいので、マニュアルを用意する、業務の完成形を示す、それらがない場合には口頭説明をメモするための時間の確保
フロア内の座席表を用意する
対面でとっさに予想外のことを言われると対処に困るため、返事は後日でもいい、等とする
急な注意や叱責をしない(大声、大きな音等が苦手)
また、「○○しないで」ではなく「こうしてほしい」を明確にする
ざっとこんなところでしょうか。
あとは、わからないことを聞ける環境が必要、という事も、あります。
これに関して、私自身は、私が求めている配慮内容について
「障害者だから特別に配慮が必要」
というような話ではなくて、
「障害のあるなしにかかわらず、こういったことが配慮されれば、誰もが働きやすい職場になる」
ものだと思っております。
この内容については、基本的には今の会社の採用面接の段階から、こういう配慮が必要だ、という話をしていたものなのですが、裏を返すと、今の会社に入る前までの、職業人生の中で、「こういったことで困っていた」というのが多々あった、という事になります。
例えば・・・
納期があいまい、具体的に何をすればいいのかがいまいちわからない。
なぜかわからないけど、相手が急に声を荒げて注意してくる。
注意される頻度も高い。
わからないことを聞ける相手がいない。そのために仕事が止まってしまう。
想像力を働かせて、言われていないことを想像で補って行動すると、たいてい間違っている。
等がありました。
そういったことが高頻度で起こっていたため、私の場合は障害と認定され、配慮が必要、という風になっておりますが、例えば、障害が発覚する前に入社した会社が、上に書いたような配慮を、みんなにしているような環境であったなら。
私は自分の障害に気づかず、そのままそこに定着して、問題なく働けていたという未来もあったと思うのです。
今の会社のジョブコーチも、私が希望する配慮が、何もそこまで特別なことではない、という事について、理解を示してくれております。
ただ、やはりそういった配慮を提供するためには、一緒に働く人たちの側に「時間的・精神的余裕」がないと無理なんじゃないかと私は考えていますので、そのあたりは、障害者を受け入れる現場だけでどうにかする話じゃなくて、組織全体で、考えていくものだという風に私は考えております。
今回の記事はいつもよりだいぶ長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
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