産科医療の専門家がクリニックで出産した結果【後編】~結果とふりかえり~
前編では実際にどのように分娩施設を選ぶかを
思考回路とともにご紹介しました。
後編では結果とまとめを書いていきます。
分娩施設ごとのメリット・デメリット
どのような分娩施設で産むかによって、
それぞれメリット・デメリットがあります。
具体的にそれをまとめていきます。
医療体制が小規模な病院で産むデメリット
リスクの高い出産はできない
(どんな患者をリスクが高い、ととらえるかは施設で微妙に異なる)急変時に対応が不十分になったり後手に回ったりする可能性がある
突然高次医療施設に搬送になる可能性がある
搬送先の病院の医療体制に影響を与える可能性がある
産前の検査が少ない病院もあるかもしれない
医療体制が小規模な病院で産むメリット
希望に合わせ、きめ細やかなケアを受けられる可能性がある
総合病院ではより重症な患者の治療が優先になる可能性がある
結論:クリニックでのお産を選んだ
私がクリニックでのお産を選んだ理由、特に安全面に関して考えたことを
まとめてみます。
もともとの合併症として母児ともに高リスクには当たらないと判断
クリニックから搬送先(高次の医療施設)が近く、連携が安定していることを知っていた
⇒最悪、有事の時には速やかに高次施設に搬送してもらえるだろうと考えたクリニックではあるが、産科、助産師の技術が安定していることを知っていた
妊娠後期には自宅からのアクセスが良いことが重要と考えた
常位胎盤早期剥離など、一刻を争う合併症を起こした場合、
分娩施設までの時間が一分でも少ないことが重要になります。
安全面に関しては、分娩予定のクリニックで勤務していたため
内情をよく知っていて、一般の方では得にくい情報を持っていました。
それにより少し思い切った決断ができた可能性があります。
もうひとつ、私にとって大事だったのは
家族と大切な時間を過ごすことができ、
生命の誕生というかけがえのない体験を感じてもらうことでした。
産後の新しい生活にスムーズに入れるよう、
4歳半の長男と離れる時間をできるだけ短くできるよう、
入院中の家族の宿泊や立ち会い出産が可能なのも大きな魅力でした。
実際にクリニックでの出産を経験して
母体は、幸い特にリスクが増えることなく経過しました。
妊娠糖尿病や妊娠高血圧にもならず、体重のコントロールもうまくいき、
胎盤位置の異常もありませんでした。
長男や主人の立ち会いや仕事の都合をつけるため
計画分娩としましたが、その予定の日まで破水することもなく
当日を迎えました。
経産婦なのもあり、なかなかスイッチが入らないところから
突然の急激な進行となりました。
しかし当日のうちにお産を進めたいという希望を聞いたうえで
スタッフの皆さんは安全に配慮してお産を進める手段を講じてくれました。
結果、長男との時間、立ち会いも実現、お泊りもできました。
クリニックでは母児同室や母乳育児を強要しない方針だったため、
第一子より心に余裕をもって産後を過ごすことができました。
結局ほとんど母児同室で過ごしたものの、
出産直後の睡眠時間を確保することの重要性を感じました。
それから食事がおいしいのは本当に最高でした。
無痛分娩に携わる専門家としてクリニックでのお産を経験し、
メリットを享受することができました。
希望をすべて叶えることができたので、最良の選択だったと感じています。
ただ、振り返るとどの段階でも
「胎盤が大丈夫なら」「この週数を超えれば」クリニックで産める、
といった不安な気持ちもあり、
「この病院ならどれだけリスクが高くても安心」
という気持ちではなかったのも事実でした。
低リスクで、クリニックの体制をよく把握することができる方には
クリニックでの出産をお勧めできます。
反対にリスクが何かある方、
「医療のことは難しくてわからない」「とにかく不安で安心が欲しい」
という方は高次医療施設での出産を勧めます。