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おすすめの小説|おばちゃまはサファリ・スパイ|ドロシーギルマン作

あらすじ

ボランティアのつもりがCIAにすつかり頼りにされてしまったおばちゃま。今回目指すのはアフリカ。謎に包まれていた国際テロリストが、サファリ・ツアーにまぎれこんで何やらしでかすという情報がCIAに入って、さあ、ここは、おばちゃまの出番!

(本の背表紙より)

ストーリーの魅力

参加したツアーには全部で9人のメンバー。
そのうちの誰かが国際的テロリストで、おばちゃまのミッションはただツアー参加者全員を写真に収めるだけ。

ところがどっこい撮り終わったフィルムが彼女のスーツケースから忽然と姿を消す。

慎重に写真を撮りつつもツアーも終盤にさしかかる。そんな夜突然彼らは3人の何者かに襲われおばちゃまは誘拐されてしまう。

おばちゃまの機転の効いた行動力、それを助けに来る男性。

最後の1ページまで話の展開が予測できず、300ページほどの活字を一気読みしてしまった。

おばちゃまの恋愛事情

今回はおばちゃまにできる恋人にも注目して欲しい。まさか60のおばちゃまが恋に落ちるとは…。
人生何が怒るかわからないから楽しい。

おばちゃまを包み込むヒーローの人物像にも注目してほしい。

作中の名言

私がいつも驚くのは作者の情景描写である。
今回の舞台はアフリカの自然公園。
おばちゃまが飛行機でアフリカに降り立つときに上から見た情景を作者はこんなふうに描写している。

"地表は一皮むかれ、オレンジ色のかたまりに煮詰められたように見える。その上に、ところどころ、緑色の苔が生えているようだ。
なによりおかしいのは,地面のあちこちが盛り上がっていることだった。まるで,濃いシチューがゴボゴボ煮たっているようだ"

(おばちゃまはサファリ・スパイ作中より)

こんな表現、元児童小説作家だから思いつくような表現としか言いようがない。

おばちゃまの人柄も、どんなに命にかかわる危険な状況でも、子供のように柔軟に、ときに向こうみずに思えて、作者の子供っぽい遊び心と少し重なったりもする。

おばちゃま自身、自分のセールスポイントは人柄だと言っている。

だからこそ読者はおばちゃまの魅力に惹かれてしまうのだ。

他に作中の名言を挙げるとすれば、『情熱があるものはみんな活動家になるんだ』という、ファレルという登場人物の言葉。彼はおばちゃまシリーズの初作でおばちゃまの最高のバディーだった。

そんな彼はすでにCIAを引退していたがなぜかアフリカに住んでいた。

おばちゃまと奇跡の再会を果たしたときに交わした会話に出てきたのがこの名言である。

思いがなければ行動はない。
ファレルには彼なりの情熱があり、それに忠実に生きていた。

自分にもそんな強い情熱、動かずにはいられないというパッションが欲しいと強く思った。

おわりに

アメリカ人作家ドロシーギルマンの大人気シリーズ、『おばちゃまはスパイ』。
子どもに帰ったように純真に、またおばちゃまと一緒に旅をしているような没入感に浸りながらぜひ読んでほしい。

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