幼稚園で日本語を教える話し。2023年度 その4
朝、幼稚園へ行くと必ずだれかが泣いている。まだ、園生活に慣れない子どもがいるようだ。
年長さんの子どもがスリランカからまだ日本に来ていないので、今はももぐみさんの男の子の日本語支援を担当している。今日で3週目。
大きなバッグを首からぶら下げて、背中には園バッグ。無表情で登園してきた男の子。「おはよう」と声掛けしても笑顔もなく無言。
「くつ」と靴を指して何度も発音し、「くつを脱ごうね」と声をかける。
足を出して脱がせてくれるのを待っているようなので、「自分で脱ぐよ」と声をかけて脱がせる。「くつ」と何度が靴を指して発音し「靴箱に入れようね」と声をかける。靴箱を指さし「靴箱」を何度も発音する。
「お部屋に入るよ」と声をかけて、ももぐみの教室へ入る。
ロッカーの前で荷物を出しながら「かばん」「ぼうし」「たいそうふく」「すいとう」「ロッカー」をゆっくりと教える。
「体操服に着替えるよ」と声をかけて「上着を脱ぐよ。うわぎ」「ズボンを脱ぐよ」「シャツを脱ぐよ。シャツ。」とひとつひとつ名前を言いながら着替えさせる。「ハンガーを持ってきて。」とハンガーを見せると自分のロッカーから自分のハンガーを取ってきてくれた。圓服をハンガーにかけて「ロッカーに入れてね。」と声をかけるとちゃんとロッカーに入れる。少しずつ円の生活に慣れているようだ。
朝の準備をやさしい日本語で教えたあと、10時からの活動が始まるまであいうえおのカードで言葉を教えていく。
あり、あ。いぬ、い。うま、う。とカードで学習。
絵本を使って、数字の練習。
パンダの絵本でパンダを数える。電車の絵本で電車を数える。
野菜とくだもののカードで名前を教える。挨拶を教える。
ここまで全く言葉を発してくれなかった男の子は、バナナのカードで「バナーナ」レモンのカードで「オーレンジ」と2つの言葉だけ教えてくれた。
いいぞ、いいぞ。少しづつだね。
お手玉を使って1から5までを数える。何度か数える。
ここは、無言。でも少し笑ってくれた。10時になった。
今日はリトミック。上靴と靴下を脱ぐよう指示されるが、ぼーとしてて動かない。「うわぐつ」「ぬぎます」「くつした」「ぬぎます」と、ゆっくりはっきり声掛けして脱がせる。「上靴入れに入れます。」と声をかけて、持って行ってもらう。「リトミックだよ」と声をかけていっしょに廊下に並ぶ。
移動する。
リトミックは、音で覚えているのかみんなと同じ動きができる。走る時はすごく楽しそう。時々、私を見て「大丈夫かな?」と聞いてくるような表情をする。その時だけ近くによっていっしょに動作をする。
その一つが、「むすんでひらいて」
横でゆっくり「結ぶ」「ひらく」と言いながら手の動作を教える。
早くいっしょに歌えるといいね。
「おはよう」って笑顔で登園してくれるとうれしいな。
「せんせい」って名前を呼んでくれるとうれしいな。
リトミックが終わってさよならの時間。
「バイバイ」って声をかけたら手を振ってくれた。
バイバイの声が聴かれるのはいつだろう。