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タモリじゃなくてヤモリだよ🦎②(フィジーの奇跡編)


ケケケケケッ
ケケケケケケケッケケケケケッ🦎

朝からヤモリがうるさい。
(夜もけっこううるさかった)
君たちは鳥か?というくらい大きな声で鳴く。

昨日の夜は天井に逆さに張り付いているヤモリが、ベットの上にポトリと落ちてくるんじゃないかと気が気じゃ無かった。
ヤモリが1匹ヤモリが2匹と数えても眠れるはずもなく、ならばポットの注ぎ口から私にブラ!と陽気に挨拶したあのつぶらな瞳のヤモリはどこかな〜と探してみたが、みんなつぶらな瞳なので見分けがつかないし、などと思っているうちにいつの間にか爆睡していた。


翌朝、朝食を食べに部屋を出ると天気は相変わらずで、雨がパラパラ降っている。
「ま、そのうち晴れるだろ。俺、晴れ男だし」
とあまり説得力のない夫の言葉を聞き流した時
ふと視線を感じた。

ジャングルみたいな敷地の片隅に何かいる。
じっと蹲っているが、絶対何かいる。
恐々そっちを見ると


カエルだ。
しかも相当デカい。


嫌いじゃないけれど、特別好きでもないカエル。
しかもよく見るとそこかしこにいるカエル。
ちっちゃな岩ぐらいの大きさだ。フィジーは人だけでなくカエルも超ビッグサイズだった。

あ、かえる!でっけえな。
ここでも何事にも動じない夫であった。

朝食後は水着に着替えビーチへ!
この頃には天気も回復し、海はまだ透き通ってはいないがそこそこ青く、砂は真っ白ではないがそこそこサラサラだ。
流石常夏の国フィジー🏝️
黄色や青色の小さな魚たちがヒラヒラと怖がることなく近づいて来てそれだけで嬉しくなる。
見れば、同じツアーの新婚さん達もそこかしこでキャッキャウフフしている。
とても微笑ましい。

ランチの後はツアーのみんなでジェットスキーに挑戦(しっかり立ち上がり海上を滑ったのは夫だけだった。その勇姿にちょっとだけ惚れ直す)
その後は各々自由行動で、私たちは再びビーチに戻ってシュノーケリングを体験した。
流石にちょっと疲れた私はパラソルの下に戻って、チョココロネの形をした巻き貝を拾ったり、足元の砂を掬ったりして1人で遊んでいた。
指と指輪の隙間に砂が入って気持ち悪かったのでタオルで拭こうと思い、指輪を薬指から外したその時


手が滑って指輪がポロリと砂の上に落ちた。
指輪が砂の中にスッと消えていくのが見えた。
焦って雑に手で砂をすくったのが悪かった。
私の掌の中に指輪は戻らなかった。


あれっ?
もう一度落ちたあたりをザクッと掬ってみる。
ない。
あれれ?
ザクザクッと掬ってみる。
やっぱりない。
でも無いわけないし!と更にザクザク掬う。
でも、ない。 どこにもない。

どうしたの?
必死の形相でそこら中の砂をほっくり返している妻に海から上がってきた夫が呑気に声をかけた。

指輪、落とした、、見つかんない
半泣きで砂をほじくり返す私から事情を聞いた夫は冷静だった。

大丈夫。
落とした場所はわかっているんだから、絶対見つかるよ。


だが、見つからなかった。
2人で私の足元だけでなくその前後、そしてなんならパラソルの後ろまで探したが見つからない。
一体何処に行ったのか?
なくなるはずなんてないのに。
足下にポトリと落としただけなのに。
私の結婚指輪は異次元空間に飲み込まれてしまったのか?
すでに時計は午後4時を過ぎていた。
探し疲れ呆然としいる私のそばで、夫は黙々と指輪を探している。

「どうかなさいましたん?」
大阪から来た新婚さんカップルが声をかけてくれた。理由を話すと「そりゃエライこっちゃで」と直ぐに2人も捜索に加わってくれた。
優しいなあ、有難い。
4人で砂をほっくり返していると、通りすがりのアメリカ人カップルが声をかけてきた。
「What't   wrong ?」
「I'm dropped  My ring💍😭」
「oh  My God!」

何とそのアメリカ人カップルも捜索に加わってくれた。
「thanks!thank you very much!!!」
すると1人また1人と異変を察知した人々が人種の垣根を超えて捜索に加わってくれる。
人類皆兄弟だぁぁァー!

しかし、、、見つからない
こんなに探しているのに見つからない。
更に1時間が過ぎ、あたりが暗くなり始めた頃、騒ぎを聞きつけたのかホテルのスタッフまでやって来た。
拙い英語で何とか事情を説明すると、明日も捜索を続けられるよう指輪が紛失した一角にロープを張ってくれるという。こうすれば事情を知らない他の観光客に砂が踏まれる事もないだろう、と。
「thanks!thank you very much!!」
同じワードをオウムの様に繰り返し、四方八方にひたすら頭を下げまくる私と夫。
「今日はもう暗くなって来たので明日また探します。本当にありがとうございました」
それまで指輪探しに協力してくれた大阪のご夫婦にも心からお礼を言う。
「明日は絶対見つかりますよ」
笑顔で力づけてくれた。
新婚旅行の貴重な時間を、粗忽者の指輪探しに付き合わせてしまった。
申し訳なさ過ぎて穴があったら入りたかった。

心優しき方々と別れた後、一旦部屋に戻る。
18時からディナータイムだ。
クリスマスだから特別に豚の丸焼きがメインで出るらしい。こんな気持ちのままで喉を通るとは到底思えなかったが、豚さんの供養のためにもせめて美味しくいただかなくては。
と無理矢理気持ちを切り替える。
夫も指輪のことには特に触れず、お腹すいたね
と平常運転だ。

バスルームで着替えていると、タイルの壁に1匹のヤモリが首を傾げるように張り付いていた。
黒い真ん丸な瞳で私を見つめている。
何となく昨日のポットの子みたいな気がした。
「ヤモちゃん、指輪、無くしちゃた。どこにあるか知ってる?」

ケケケケケケッ
ヤモリはやっぱりヤモリだった。


着替えを済ませ夫とメインダイニングへ向かう。
その途中、一画をロープで仕切られた砂浜が見えた。
今日中に見つけなければ、多分もう2度とあの指輪は戻ってこない。
そんな気がした。
ディナーの時間が迫っている。
でもずっと心はザワついたままだ。

そんな私の気持ちを察したのか夫が言った。
「大丈夫。見つかるって。ダメならダメでまた買いにいこう。2人で買いに行こう」
その言葉に私は頷いて、
「ごめん。でもあと少しだけ」
そう言って芝生を超え、再びビーチに降りた。

フィジーの海に夕陽が沈んでいく。
昼間は溢れていた人の姿も今はもうまばらだ。
夕闇がヤヌサ島の浜辺を包み始める。

最後に砂をひとすくい、ひとすくいだけ掬った。


手のひらの砂の中で、何かがキラリと光った。



今もわからない。
あんなに必死に探したのに。
それでもずっと見つからなかったのに。
最後の最後に私のもとに戻ってきてくれた指輪。

ヤモリの神様が、はるばる日本から海を超えてやって来て指輪をなくした粗忽者の新妻を憐んでくれたのだろうか?
偶然?必然?運命?それとも。


これぞまさにフィジーの奇跡!

孫子の代まで感謝の気持ちを伝えなければ!!



数十年後、この話を息子に伝えると
「みんなで雑に掘っくり返し過ぎて、かえって深くもぐっちゃったか、違う場所に吹っ飛んでたんじゃね?」と言われた。

息子よ。
君はロマンという概念を私のお腹に忘れて来たんだね。

まあ、どちらにせよフィジアンホテルのビーチの一区画を立入禁止にした日本人は、後にも先にも私達夫婦くらいだろう。
あの時、あのフィジーの砂浜で私の左手の薬指から抜け落ちた指輪がもし見つからなかったら、、


それでも私と夫の関係は何ら変わることなく、数えきれないぐらいの結婚記念日を共に迎えただろう。
そしてこれからも。
たかが指輪。されど指輪。
でも指輪があってもなくても夫婦は夫婦だから。


何度でも買えば良いと
きみが言ったから
クリスマスは指輪記念日
(サラダ記念日風に😆)


追記
ホテルの売店で売っていたヤモリTシャツペアで買って帰りました!

ケケケケケッ
ケケケケケケケッケケケケケッ
🦎🦎

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