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浜比嘉のブックホテル「浜比嘉別邸」に宿泊してきました


早朝6時。小鳥のさえずりとともに起床。

おそらくここ10年で1番心地よい目覚めだった。

私はもう何年も二日酔いで吐きそうなとき以外、こんなに朝早く自然起床したことがない。

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目覚ましが素敵すぎたので、私はそのまま目をつむる。小鳥のさえずりを聴きながら2度目の眠りに落ちるのもまた心地いい。

2度目の起床は8時頃。ザーッと鳴る音で、目よりも先に耳が覚めた。通り雨が降ったようだ。印刷機が次々と紙を吐き出すような静かでリズミカルな音を聴きながら、目をあけたり、とじたりをくりかえす。雨の音と、木が揺れる音、屋根から落ちる大きな水の音を聴きながら、気付けばもう一度眠ってしまった。

3度目の起床は9時半頃。今度はセミの大合唱にて目が覚めた。雨はいつの間にか止んでいて、雨上がりを祝福するようにセミが声高らかに歌っていた。

大合唱はおそらく向かいのフクギの木から聴こえてきていて、あまりにも真正面から音が鳴り響くので、コンサートに来ている客のような気分だった。さすがに起きようと思い、起床。布団をたたみながら、生き物に叩き起こされている自分に笑った。

静寂に包まれたブックホテル「浜比嘉別邸」

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私はこのたび、最高のホテルに泊まった。今年(2021年)10月にオープン予定の会員制ブックホテル「浜比嘉別邸」だ。

なぜそんな素敵なホテルに泊まったかというと、敬愛する作家さん・ながもとみちさんが浜比嘉別邸の経営者だからだ。

みちさんとの出会いについて話し始めると1記事できてしまうので、色々すっ飛ばして説明すると、私には沖縄移住の際に大きく影響を受けた本があり、みちさんはその本の著者だ。(本:ていねいに旅する沖縄の島時間

そして3年ほど前、とあるイベントのバスで偶然みちさんと隣同士に座るという運命的な出会いを果たして以来、直接連絡を取ったり会ったりできる関係になることができている。

そして2021年、ある日Facebookをぼんやりと眺めていると『ブックホテルをはじめました』というみちさんの投稿を目撃。プレオープン中の現在は、知人のみ予約可能としているという。

え?

ホテル?

しかもBOOK(本好き)?

なぜ?

行きたい。

みちさんがこのタイミングでホテルを経営するということは何かあるに違いない。そう思った私は、慌ててみちさんに宿泊希望と取材依頼の連絡をした。(ちなみに執筆メディアは決めてなかった)

素敵なホテルに泊まりたい、というよりは『このホテルの記事だけは、どのライターより1番最初に書きたい』という大きな邪念だった。あと正直本当に自粛に飽きた。同じ家に毎日毎日いることにうんざりしていた。

ということで、今すぐにでも行きたい気持ちを抑えながら、どうにかその1ヶ月後に2泊3日の先行予約を取り付けた。そしてすぐにお世話になっているメディア編集者にそれぞれ連絡をして、方針の違う3媒体でホテルの紹介記事を書かせていただくことになった。

ちなみに

すでに3媒体での執筆が完了した後なので、宿についての物語や、なぜコロナ禍なのか、どんな宿かについて等はここには書かない。それぞれ尊敬する編集者に見てもらった記事が間違いないので、宿情報については各媒体をチェックしていただけるとうれしい。(以下に公開順でリンクを追加する)

◎HUB沖縄
沖縄県民向けのニュースメディア。ここではコロナ禍のホテル経営についてや経緯について。


というわけで、浜比嘉別邸でひたすら自分を見つめる旅

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というわけで、ここではひたすらに私の書きたいことを書かせていただく。なにせ、最高すぎたのに仕事で記事を書くときは、冷静さを保たねばならないのだ。自分の感情をぶちまけたい!!!!という内容のブログ記事なので、抽象的で有益じゃなくてもどうか怒らないでほしい。

ちなみに浜比嘉別邸にはひとりで泊まったのだけれど、ここはひとり、もしくは静寂を気にせず過ごせる友人や家族と泊まることをおすすめしたい。

私は断然ひとりがいいと思う。なにせテレビがない。集落の中にあるのでバカ騒ぎもNGだ。それがいい、と思うシーンで使わないともったいない。

さて、まず浜比嘉島という島があらためて凄かった。

もともと琉球開闢の地として、パワースポットとして知られる浜比嘉島。観光や仕事で何度も訪れてはいたものの、改めてみちさんに案内してもらったスポットはどこも、鈍感な私でも分かるくらいなにか神聖な力で包まれていた。

まず、どこを歩いても静寂であたたかい。空も海も景色も綺麗で空気がおいしい。嫌な音やにおいがどこにもない。

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木漏れ日や陽だまりにうっとりしながら、散策しているだけでいろんなものが抜けていく。みちさんに勧められ、ガジュマルの木に手をあてたり、ガジュマルにもたれかかったりした。私は、(みちさんが一緒じゃなかったら自然に怒られてしまうんじゃないかな...)という謎の罪悪感にかられたりしていたのだけれど、みちさんは「いいでしょう!」と眩しく笑った。

浜比嘉別邸は「海と本とお昼寝の宿」がコンセプトの一棟貸し古民家だ。コンセプトの通り、徒歩1分の場所にあるビーチや読み放題の1000冊の本、みちさんによる選書(うれしい!)、お昼寝を誘発する畳と縁側の風情など、とことんのんびりと読書と本能を大切にできる空間だった。

本のにおいと自然のにおい、自然との調和、あたたかな畳、洗練された室内、守られる静寂、守られる安心感。

ああ、いつも頑張っているあの人にも来てもらいたいな、本好きのあの人絶対好きだな...。大好きな人たちが頭に浮かんでくる。

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入室早々、私は一番楽しみにしていた選書を拝見することに。事前にLINEで応えたアンケートをもとに、みちさんは私にこの4冊(+絵本)を選んでくれていた。

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見せてもらった瞬間、2度見。

え? 

私はお風呂で本を読む習慣があるのだけど、今回、お風呂用にと自宅から本を2冊持参していた。それがこちら。

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一冊かぶってるーーーーー!(ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

読書家といえど、いや、読書家だからこそ最新作以外で本が被る確率はすごく低い。それが何だかとてもうれしい。ちなみに選んでくれた4冊のうち、千田琢哉さんの『君にはもうそんなことをしている時間は残されていない』は私が22歳のときに大きく影響を受けた本だった。なんということ。エスパーですか?

本4冊+絵本も選んでくれていて、選書に感動した後は、オプションである絵本セラピーも体験させていただいた。

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絵本を自ら選んで読んだことが一度もなかったのだけれど、絵本ってこんなに深かったの?と、びっくり。大人こそ絵本を読むべきかもしれない。すこし泣いた。

私はここに来る前まで、せっかくだから周辺観光もしたいし、うるま市のいろんなお店でランチやディナーを満喫しようと思っていた。取材も兼ねているし、周辺情報も記事に入れたいし、と。そして久しぶりのひとりなのだ。オール外食、終日グータラ過ごそうと思っていた。

だけどみちさんの一言を聞いて、考えが変わった。

「暮らすように旅をする、という文章をこれまでたくさん書いてきたけど、ここはその言葉を限りなく再現することにしたんだよね」

その言葉を聞いて無性に、神秘的なこの島で、とことん暮らしを味わってみたくなったのだ。

むしろ暮らすことこそが、ここでしかできない体験かもしれない、とも思った。浮かれた観光宿泊やラグジュアリーなホテルステイはこれまで(ラグジュアリーは主に仕事で)散々やってきたけれど、島で暮らすという旅はやったことがない。

そうだ、そうしよう。とことん自分だけのために、ていねいに暮らしてみよう!

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ということで、冒頭の素敵な目覚めをした2日目の朝、さっそく家の周辺をほうきで掃いてみることにした。

いつだったか渡名喜島に行った際、朝に子どもたちがほうきで集落を掃除している(風習らしい)のを見て、島の掃き掃除に強く憧れたことを思い出したのだ。

朝、周囲に落ちた枯れ葉を掃くのは思った以上に気持ちよかった。

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ふと、私がおばあちゃんになったとき、子どもや孫が、ほうきで掃くことを”懐かしい”と思うような暮らしをしているのだろうか、としんみり思った。

こういう暮らしを、いつか誰もが懐かしいと思えない時代が来てしまうかもしれない。文明の力を恩恵だと受け止めて暮らす私は、大事な何かを見落としているのかもしれない。


掃き掃除をした後は、小腹が減ったのでそうめんを茹でた。

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あ〜懐かしい!畳の部屋といえばそうめんなんだよね。夏だなぁ。無性におばあちゃんに電話したくなったけど、今日は極力デジタルデトックスをしようと決めていたのでやめた。かわりに「祖母にマンゴーを送る」という予定を手帳に書き込んだ。

外から聞こえる蝉の声を聴きながらそうめんをすすり、食べた後は少しだけ仕事。

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さすがにこんな素敵な場所に来てまでがっつり働きたくなかったので、必要最小限だけやろうと思ったら、はかどりすぎて結局かなり働いた。こんなことなら想像力が必要な仕事を溜めておくべきだった。

思いのほか気持ちよく仕事が終わったので、読書。

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前の日から仕込んであった水出しコーヒーが思ったよりおいしくて、あ、幸せ!と目がぱっちりした。(ちなみにカルディの水出しコーヒーは宿に用意されていた)

緑視率50%を超える視界の中で、水出しコーヒーをちびちび飲みながらの読書は最高だ。気付けば3時間くらい没入していて、集中力が切れた時点で、畳に寝転がってお昼寝をした。

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目が覚めたのは16時半ごろ。お昼寝の余韻のまま縁側で景色を眺めていると、無性に甘いものが食べたくなった。

実は前日に立ち寄ったうるマルシェにて、訳ありマンゴーを2個800円で入手していたのだ。アレを食べる時がきた。

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じゃじゃーん!!

縁側でマンゴーと炭酸水。

私にとっては高級ホテルスイートルームのジャグジーとかインフィニティプールとかオリジナルカクテルとかよりも、断然こっちが贅沢。

みずみずしいマンゴーが太陽の光を跳ね返し、果物も生きてるんだよなぁ、と思った。

結局、観光も外食もまったくしなかった。というか、自分でも驚くほどにする気がしなかったのだ。このお屋敷を堪能したい、ここでの時間を大切に過ごしたいという気持ちが膨らみすぎて。

自分の声に耳を当てて過ごすのはなんて気持ちいいんだろう。甘いものが食べたいという感情も、そういえば久しぶりのことだった。

ひとつだけ本能に従わなかったことといえば、日が暮れるまではビールを飲まなかったこと(笑)。夕陽が綺麗だと聞いていたから、その瞬間を最初の一杯にしたかったのだ。

夕方になり、ビーチに出た。夕陽を見ながら待ち焦がれた缶ビールをぷしゅっと開けた。あ〜贅沢!

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夕陽、これがもう本当にすっごい綺麗だった。冷蔵庫にあらかじめ用意されていたプレミアムクラフトビール「75BEER」が、オレンジ色に染まった空にぴったりすぎて心が溶けていった。

信じられないくらい贅沢だな...と思いながらお屋敷に戻り、鼻歌を歌いながらゴーヤチャンプルーをつくる。

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本当は宿にお米も用意されているので、ごはんを炊こうと思っていたけれど、ビールがおいしすぎたので主役をアルコールに譲ることにした。

ゴーヤの苦味を噛み締めながら、ビールを一気に流し込む。2杯目はレモンチューハイで、3杯目はもっかいビール。3杯目を片手に屋上へ行き、満天の星を眺めながらコンクリートに寝そべった。

そんな感じで、とことん暮らしっていうものを満喫してみたのだけれど、自分の思うままに暮らすというのは、びっくりするほど気持ち良かった。

そして、いつもならホテルに泊まった次の日って帰るのが億劫なんだけど、今回はなんか違った。むしろ今日からの日常がちょっと楽しいものになりそうで、楽しいものにできそうで、わくわくした気持ちと暮らすことへの少しの自信のようなものを手にして、宿を後にすることができたのだ。

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実はチェックインの日、七夕近くだったこともあり、みちさんから『帰るまでに、叶えたいお願い事を決める』という宿題を課されていた。

正直、パッと浮かんだのは『年内に一度くらいは旅行ができますように』とか『コロナが早く終わりますように』とか、世界中の誰かと被りそうな願い事ばかり。だけど結果として、帰る際に出した答えは、最初に想定していたものとは大きく変わっていた。


自分と大切な人を、しあわせにできる自分になりたい。


ここにある本なのか、空間なのか、浜比嘉島という場所なのか、それともそのすべてなのか、わからないけれど、帰るときにはもう『それしかない』という状態だった。そして滞在から2週間が経った今も、その気持ちは継続できている。

会員制なので、すべての人におすすめというわけでは決してないけれど、コロナ禍のリトリートとして、自分と向き合うお寺的な場所として、自由気ままな時間を過ごす逃げ場として、必要な人にこの場所を知ってもらえるといいな。

気になる方は問い合わせてみてください。

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