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出産と育児のこと

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子育てについて、フリーランス目線で綴るマガジン
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#読書感想文

「いい母親になりたい」と思っていたけど

いい母親になりたい。 子を産んで1年と半年、ずっとそう思っていた。 育児は怖い。とても怖いのである。長くて、お金も時間も莫大にかかり、目処がつかず、何が起こるかわからない、人ひとりの人生がかかった、壮大なプロジェクトなのだ。私は母として、この命を幸せに導ける器になりたい。 そしてなるべく間違えたくない。「もしも」も事前に把握しておきたい。 そう思っていたので、書店の目立つところに平積みされていたこの本を見つけた瞬間、私のアンテナが大きく反応した。 正直なところ「どうして

ハッピーでもバッドでもない人生を、ささやかな思い出と生きていく

昔、深夜にどうしようもなく悲しいことがあり、男友だちを呼び出してドライブに連れて行ってもらったことがある。 彼は泣いたり怒ったりする私の話をずっと聞いてくれたあと「俺、町を出ようと思ってるけど、一緒に行くか?」と言った。いつ?と聞くと、今。と言う。きっと何か事情があったのだろう。好きでもない女を連れて行きたいほどの孤独を考えるとノリで行ってあげたい衝動に駆られたが、結局なんとなく断った。20年前の話だ。 そんなたわいもない記憶を思い出したのは、短編小説『夜空に泳ぐチョコレ