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【女子学院中学校2020年度入試算数第6問】難関中学の基本問題

今回は女子学院中学校2020年入試の算数第6問を取り上げようと思います。上位校において典型的な問題の一つです。

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(女子学院中学校・高等学校、2009年11月23日、IZUMI SAKAI撮影、Wikipediaより)

[問題] 姉と妹が,川の上流の A 地点と下流の B 地点の間を,ボートをこいで移動します。静水(流れのないところ)で,2人のボートの進む速さは,それぞれ一定です。

A 地点と B 地点は 2.4km 離(はな)れていて,川は毎分 15m の速さで流れています。姉が A 地点から B 地点に向けて,妹が B 地点から A 地点に向けて同時に出発すると,A 地点から 1.8km の地点で 2人は出会います。姉が B 地点から A 地点に向けて,妹が A 地点から B 地点に向けて同時に出発すると,A 地点から 1.5km の地点で 2人は出会います。

(1) 静水でボートの進む速さは,姉は毎分 (A) m,妹は毎分 (B) m です。

(2) ある日の 8時 10分に,姉は B 地点を,妹は A 地点をそれぞれ出発して A 地点と B 地点の間を 1往復しました。

2人が 2回目に出会うのは (C1) 時 (C2) 分のはずでしたが,姉が A 地点を出発してから (D1) 分 (D2) 秒の間,ボートをこがずに川の流れだけで進んだため,実際に2人が2回目に出会ったのは,(E1) 時 (E2) 分で,A 地点から 1.2km の地点でした。

[問題終わり]

一定の流れの川の上を上流と下流から進んでいくボートをあつかった問題です。流水算という名前がつくほど、上位校ではよく出されているタイプの問題です。

この問題の難しさは流水でのボートの速さを静水でのボートの速さと川の流れの速さに分ける点にあります。

例えば、姉が A 地点から、妹が B 地点から出発したときに A 地点から 1.8km、B 地点から 2.4 - 1.8 = 0.6km の地点で出会っているので、姉と妹の速さの比は 1.8 : 0.6 = 3 : 1 となりますが、この速さはもちろん流水での速さです。姉のボートの速さは静水のときの速さに川の流れの速さが足されており、妹のボートの速さは静水のときの速さから川の流れの速さが引かれています。

逆に、妹が A 地点から、姉が B 地点から出発したときに A 地点から 1.5km、B 地点から 2.4 - 1.5 = 0.9km の地点で出会っているので、姉と妹の速さの比は 0.9 : 1.5 = 3 : 5 となります。これも流水での速さです。

この問題ではこれらの情報から静水での速さを求めることになります。

中学生だと姉と妹の静水での速さを x, y とおいて連立方程式に持ち込むのですが、もちろん、中学受験では使えません。

そうなると、川の流れの速さを打ち消す方法が必要になります。

姉が A 地点から、妹が B 地点から出発したとき、二人のボートの速さは

・姉のボートの速さ=姉の静水でのボートの速さ+川の流れの速さ
・妹のボートの速さ=妹の静水でのボートの速さー川の流れの速さ
なので、二人のボートの速さの合計は二人の静水でのボートの速さの合計に等しくなります。

逆に、姉が B 地点から、妹が A 地点から出発したときも、
・姉のボートの速さ=姉の静水でのボートの速さー川の流れの速さ
・妹のボートの速さ=妹の静水でのボートの速さ+川の流れの速さ
なので、二人のボートの速さの合計は二人の静水でのボートの速さの合計に等しくなります。

ということは、どちらの場合も二人のボートの速さの合計は等しい=二人がすれ違うまでの時間は等しくなります。時間が等しいので、「静水」で 2.4km 離れたところから向かい合わせの二人がボートをこぐと、姉は (1.8 + 0.9) / 2 = 1.35km (= 1350m)、妹は (0.6 + 1.5) / 2 = 1.05km (=1050m) 進んだところですれ違うことになります。しかも、この場合にも二人がすれ違うまでの時間が等しくなります。

この等しい時間で姉は、静水での船の速さ+川の流れの速さで進んだときは 1.8km のところまで、静水での船の速さで進んだときは 1.35km のところまで進むので、差 1.8 - 1.35 = 0.45km (= 450m) が川の流れで進んだきょりとなります。川の流れは毎分 15m なので、450÷15 = 30分後に二人がすれ違ったことになります。

時間ときょりが求まったので、姉と妹の静水での速さが求まります。

姉は (A) 1350÷30 = 45 で、毎分 45m、妹は (B) 1050÷30 = 35 で、毎分 35m となります。

これが求まれば、あとは何とでもなるというのは言いすぎでしょうか?

(C) ですが、まずは姉が A 地点に着く時間と、妹が B 地点に着く時間を求めます。

姉は 2400÷(45 - 15) = 80分後 (9時30分)、妹は 2400÷(35 + 15) = 48 分後 (8時58分) になります。

妹が B 地点に着いてから 80 - 48 = 32 分後に姉が A 地点に着きますが、その間に妹は B 地点から (35 - 15)×32 = 640m 進んでいることになります。残り 2400 - 640 = 1760m を姉と妹が向かい合わせで速さの合計が毎分 45 + 35 = 80m で進むので、 1760÷80 = 22分後に二人はすれ違うはずでした。出発からだと 80 + 22 = 102分後、時刻にして (C) 9時52分 の予定でした。

ちなみに、このとき姉は A 地点から (45+15)×22 = 1320m のところまで進んでいるはずです。しかしながら、姉は A 地点から (D) の時間だけボートをこがずにいたために A 地点から 1.2km (=1200m) の地点ですれ違いました。1320 - 1200 = 120m だけ妹は余分に進んでいます。妹はずっとボートをこいでいたはずなので、時間にして 120÷(35 - 15) = 6分間よけいにボートをこいでいます。したがって、実際に二人がすれ違ったのは (C) の6分後、(E) 9時58分 となります。

姉が A 地点から 1200m 進むには通常 1200÷(45 + 15) = 20分ですみます。しかし、姉は 28分かかっています。8分多いです。

姉の速さはボートをこいでいるときは毎分 45 + 15 = 60m、こいでいないときは毎分 15m です。60mで考えると、ボートをこげば1分、こがなければ4分かかるので、ボートを 4分こがなければ 3分よけいに時間がかかります。1分20秒 (= 4/3分)こがないと 1分よけいに時間がかかることになります。

まとめると、姉は8分よけいに時間がかかっていて、よけいな時間1分につき 4/3分間ボートをこがなかった計算になるので、8×(4/3) = 32/3 = 10+2/3 分、すなわち、(D) 10分40秒 こがなかったことになります。

女子学院中学校の受験生ならこの手の問題は何度も解いているかと思います。その意味で難しくはないでしょう。

ただし、テキパキとこなしていかないと時間が足りなくなるので、要領(ようりょう)よく解いていくことが重要となると思います。

特に、前回紹介した第5問が強烈(きょうれつ)な変化球だったので、そこに時間を取られたあげくにできず、あせりのあまりにこの問題もできなかったかもしれません。

どの順番で問題を解くかも大事なので、点数の取れる問題を確実に取れるように練習していくといいでしょう。

中学生の解法

中学生の場合は姉と妹のボートの(静水での)速さをそれそれ x, y とおくと、

(x+15) : (y-15) = 3 : 1 ⇒ x+15 = 3(y-15) ⇒ x -3y = -60
(x-15) : (y+15) = 3 : 5 ⇒ 5(x-15) = 3(y+15) ⇒ 5x - 3y = 120

下の式から上の式を引いて 4x = 180 ゆえに x = 45、これをどちらかの式に代入して 3y = 105 ゆえに y = 35 が得られます。

(2) も (D) と (E) は姉が A 地点に着いてからすれ違うまでの時間と姉がボートをこがなかった時間をそれぞれ s, t とおいて方程式を立てると

15s + (45+15)(t-s) = 1200 ⇒ 60 t - 45 s = 1200 ⇒ 4t - 3s = 80
(35-15) t = 2400 - 1200 - 640 ⇒ 20t = 560 ⇒ t = 28

から、3s = 112 - 80 = 32 ゆえに s = 32/3 と求めると思います。

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