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【桜陰中学校2020年度入試算数第4問】見た目にだまされてはいけない!

今回は桜蔭中学校2020年入試の算数第4問を取り上げます。この問題は見た目はとっつきにくそうですが、実際にはそれほど難しくないです。(2) ② で少し手間取るかもしれませんが、他は確実に取りたい問題です。

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桜蔭中学校・高等学校
2007年10月22日、杉山真大撮影、Wikipediaより

[問題] 1個 10g, 20g, 60g の球があります。
10g の球には 1 から 100 までの整数のうち,4 の倍数すべてが 1 つずつ書いてあります。
20g の球には 1 から 100 までの整数のうち,3 で割って 1 余る数すべてが 1 つずつ書いてあります。
60g の球には 1 から 100 までの 4 の倍数のうち,3 で割って 1 余る数すべてが 1 つずつ書いてあります。ただし,同じ重さの球にはすべて異なる数が書いてあります。

(1) 60g の球に書いてある数字を分母,20g の球に書いてある数字を分子として分母を作ります。このときできる 1 未満の分数のうち,分母と分子を 5 で約分できる分数の合計を求めなさい。

(2) ① これらの球から 13 個を選んで,その重さの合計がちょうど 250g になるようにします。10g の球,20g の球,60g の球をそれぞれ何個ずつ選べばよいですか。考えられるすべての場合を答えなさい。ただし,選ばない重さの球があってもよいとします。

① で求めた選び方の中で,60g の球の個数が2番目に多い選び方について考えます。13 個の球に書かれている数の合計を 4 で割ると 2 余りました。合計が最も大きくなるとき,その合計を求めなさい。

[問題終]

この問題を見たときにすごく複雑(ふくざつ)そうに見えるかもしれません。きれいなやり方が思いうかばないし、手をつけると時間がかかりそう。特に (2) で 球を 13 個選んでって出て来てるけど時間大丈夫かなと、ちょっと敬遠したくなります。

しかし、実はどうにでもなる力業(ちからわざ)の問題です。ビビらないことが重要です。

(1) は、20g の球も 50g の球も書いてある数字が 5 で割れなければならないのがカギです。これによって考えられる球の種類が少なくなります。この感覚が重要。

20g の球にかかれている数は 3 で割って 1 余るので、その中で 5 で割れるのは 10, 25, 40, 55, 70, 85, 100 の7種類、
100g の球に書かれている数は 12 で割って 4 余るので、その中で 5 で割れるのは 40, 100 の2種類となります。

結局、分母が 40 のとき分子は 10, 25 の2種類、分母が 100 のとき分子は 10, 25, 40, 55, 70, 85 の6種類となり、

(10+25)/40 + (10+25+40+55+70+85)/100 = 35/40 + 57/20 = (35 +  114)/40 = 149/40 = 3+29/40 が得られます。

(2) ① は、使う球の個数と重さの合計の2種類の数が決まっているので、10g, 20g, 60g のいずれか1つの球の個数を決めると(答えがあるならば)他の球の個数が自動的に決まります。

最も重い 60g の球の個数は 0~4 と種類が少ないので、これで場合分けをします。

60g の球が 0 個の場合、20g の球を13個使うと 260g となり、20g の球 1 個を 10g の球に変えるごとに 10g 減るので、20g の球が 12 個、10g の球が 1個となります。
60g の球が 1 個の場合、同じように求めると 20g の球が 7 個、10g の球が 5 個となります。
(20g の球を 5 個減らし、60g の球を 1 個、10g の球を 4 個増やしています。20 × 5 = 60 × 1 + 10 × 4 なので、重さの増減はないです。)
60g の球が 2 個の場合、20g の球が 2 個、10g の球が 9 個となります。
60g の球が 3 個の場合、残りの球がすべて 10g だったとしても 250g を超えるので、答えはありません。60g の球が 4 個の場合も同様です。

以上、太字で書いた3つの場合ですべてです。まとめると、

(10g の球, 20g の球, 60g の球) = (1, 12, 0), (5, 7, 1), (9, 2, 2)

が答えです。

(2) ② は、60g の球が 2番目に多い選び方を考えるので、60g が 1 個、20g が 7 個、10g が 5 個となります。このうち、60g と 10g の球は書かれている数が 4 の倍数なので、どのように選んでもそれらに書かれている数の和を 4 で割ると 0 になります。

したがって、これら 2 種類の球は単に大きな数から選んでいけばよいので、60g の球は 100、10g の球は 100, 96, 92, 88, 84 となります。

問題は 20g の球です。

20g の球を 7 個を選んだときに数の合計を 4 で割った余りが 2 になる組合せの中で、合計が最も大きくなるようにします。

さて、3で割った余りが 1 である数は 4 で割ると余りはいくつでしょう?
実は次の 4 つのグループに分かれます。
(A) 12 で割って 1 余る ⇒ 4 で割って 1 余る
(B) 12 で割って 4 余る ⇒ 4 で割って 0 余る
(C) 12 で割って 7 余る ⇒ 4 で割って 3 余る
(D) 12 で割って 10 余る ⇒ 4 で割って 2 余る

あとは、大きい数から順に考えていきますが、100 は 4 で割って 0 余るグループ、97 は 4 で割って 1 余る、94 は 4 で割って 2 余る、... というように、  (B) → (A) → (D) → (C) の順に登場します。

大きい方から順に 7 個選ぶと 4 で割って余りが 0, 1, 2, 3, 0, 1, 2 となるため、合計すると 9 で 4 で割ると 1 余ります。要するに、単純に大きい数から 7 個取っても合計が 4 で割って余り 2 にならない。

そこで、余りを 1 増やすために最後の余り 2 を 3 に変えます。これで 4 で割った余りの合計が 10 なので、合計が 4 で割って 2 余ることになります。

具体的には、100, 97, 94, 91, 88, 85, 82 という大きい方から 7 つの数の組合せのうち、最後の数を 82 から 79 に入れかえます。100, 97, 94, 91, 88, 85, 79 は大きい方から 7 つの数を取る 2 番目に大きい組合せで、最も大きい組合せは条件を満たさないので、この組合せが条件を満たす中では最も大きい組合せになります。

したがって、100 + (100 + 96 + 92 + 88 + 84) + (100 + 97 + 94 + 91 + 88 + 85 + 79) = 1196 となります。

この問題は正直に言って美しさのかけらもない問題です。数学好きからすると残念な問題と言っていいでしょう。笑

ただし、ちょっとした失敗で時間を使ってしまうため、実力差が出る問題でもあります。そういう意味で入試のための実用的な問題と言えるでしょう。

この問題の中で、(1) と (2) ② は基本的に何で割って余りがいくつかを考えています。

上で触(ふ)れてはいませんが、(1) の場合だと、3 で割って 1 余る 5 の倍数は 15 で割って 10 余る数であることを利用しています。同様に、3 で割って 1 余る 4 の倍数で 5 で割り切れる数は、60 で割って 40 余る数になります。

割る数と余りを求めて考える方法は塾の中で上位校を目指す(めざす)クラスであれば基本かと思います。慣(な)れとくといいでしょう。

最後の 20g の球の選び方が少し泥(どろ)くさいですが、変にきれいなやり方をするよりもこの方が本番向きだと思います。

また、(2) ① で 60g の球の数で場合分けをしていますが、これは 10g の球でも 20g の球でも同じように求められます。しかし、手間が大幅(おおはば)に増えます。解答時間の決まっている入試では致命的(ちめいてき)かもしれません。

この辺の考え方は人工知能で使われる探索(たんさく、全ての場合を調べること)にも通じるところがあり、探索の順番によって計算時間が短くなることがよくあります。

今回のように、泥くさい問題の中にもセンスが問われることがよくあるので、問題が解けたら終わりではなく、短時間で解く方法がないかを普段の学習から考えてみてはいかがでしょうか。

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