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【桜陰中学校2020年度入試算数第3問】部分を見て、全体を見る

今回も桜蔭中学校2020年入試から算数第3問を取り上げようと思います。立体図形の問題です。

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桜蔭中学校・高等学校
2007年10月22日、杉山真大撮影、Wikipediaより

立体図形の問題は中学受験において鬼門(きもん)の一つで、大人でも苦戦します。ですので、難関中学校以外ではあまり本格的な問題は出しません。

特に、この年代の女の子はまだ空間を認識(にんしき)する能力が弱いので、男の子より苦戦することが多いです。

勘違い(かんちがい)して欲しくないのは、これは決して能力差ではなく、成長の仕方、どの部分から能力が開発されるかの順番の違いによります。この年代の男の子は一般的に言語能力では女の子に劣っていることも知られています。

そんな中、女子中である桜蔭中学校で次の問題が出題されました。

[問題] 図の直方体 ABCD-EFGH において,辺 DC, HG の真ん中の点をそれぞれ M, N とします。また MN 上に点 L があり,AD = 4cm, DM = 3cm, ML = 3cm, AM = 5cm です。三角形 ADM を拡大すると,三角形 GCB にぴったり重なります。三角形 GCB の一番短い辺は BC です。

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このとき次の問いに答えなさい。

(1) 次の (ア), (イ) にあてはまる数を答えなさい。

辺 GC の長さは (ア) cm,BG の長さは (イ) cm です。

(2) 三角形 ANB,三角形 ALB,三角形 ALN,三角形 BLN で囲まれた立体 ALBN の体積を求めなさい。

(3) ① 三角形 ANB の面積を求めなさい。
    立体 ALBN の表面積を答えなさい。

[問題終わり]

多分、私は普通の方より空間を認識する能力が高いと思うのですが、それでも天才的な方と比べたら足元にも及びません。今年の灘中学校の展開図の問題(1日目算数第11問)も、形はすぐに分かりましたが体積は求められませんでした(恥ずかしながら間違いました)。

今回の問題も、立体 ALBN がどのようになるかは図に辺を加えればわかりますが、私にとっては体積や面積を求めるための情報をどう引き出すか、が問題です。

ちなみに、立体 ALBN は下図のようになります。三角すい(四面体)です。

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しかし、立体 ALBN と直方体の他の点との位置関係をイメージできない子は多いと思います。そんな中で重要なのは立体を部分的に切り取ることです。(1) はその後で使う道具です。

(1) は単に三角形 ADM と三角形 GCB が相似(三辺の比率が同じ)であることを利用すればよいので、GC : AD = CB : DM = BG : MA ⇒ GC : 4 = 4 : 3 = BG : 5 より GC = 16/3 = 5 + 1/3 cm, BG = 20/3 = 6 + 2/3 cm となります。

(2) は直方体を真ん中でたてに切ります。立体 ALBN も半分にわかれます。すると下図のようになります。ここで、P は辺 AB の真ん中です。

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さて、こうすると立体 ALBN は同じ形をした 2 つの三角すいに分かれるのですが、この三角すいは底面が三角形 PLN で高さが 3cm (=DM=MC) となります。また、三角形 PLN (下図のピンクの三角形)は底辺 LN で高さが 4cm (=PM=AD) となります。

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LN = MN - LM =16/3 - 3 = 7/3 cm であるので、三角形 PLN の面積は (7/3) × 4 ÷ 2 = 14/3 cm2 となり、立体 ALBN の体積は (14/3) × 3 ÷ 3 × 2 = 28/3 = 9 + 1/3 cm3 となります。

(3) はそれぞれの三角形を順に求めていきます。

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三角形 ANB (上図左の赤い三角形)は底辺が AB = 6cm、高さが PN = BG = 20/3 cm なので、6 × (20/3) ÷ 2 = 20cm2 となります。

三角形 ALB (上図中の水色の三角形)は底辺が AB = 6cm、高さが PL となります。ここで、三角形 PML (上図のピンクの三角形の左の三角形)と 三角形 ADM は形が同じ同じ(合同)になるので、PL = AM = 5cm となります。したがって、三角形 ALB の面積は 6 × 5 ÷ 2 = 15cm2 となります。

最後に、三角形 ALN と 三角形 BLN ですが、この 2 つは形が同じで、底辺は LN = 9/3 cm、高さは AM = BM = 5cm となるので、二つの三角形の面積の和は (9/3) × 5 ÷ 2 × 2 = 45/3 = 11 + 2/3 cm2 となります。

これらをすべて足すと、20 + 15 + 11 + 2/3 = 46 + 2/3 cm2 となります。

見ての通り、立体 ALBN の情報を取り出すために、直方体の中でできる長方形を使っています。立体を立体として考えるよりも、その一部である平面を持ってきた方が理解しやすいです。これがすべての立体図形の問題に使えるわけではないですが、一つの方法として知っておくと便利だと思います。

この問題で難しいのは (2) で図形を半分に切るところと、(3) で三角形 ALB の高さを求めるところです。

(2) については、どの辺を選んでだとしても、その辺を含む平面で三角すいを切ると2つの三角すいに分かれることを知っていて、直方体のどれかの面に平行に切ると、底面と高さがはっきりするので、最初からたてに半分に切る解答のようなやり方を思い浮かべています。切ってから、底面積と高さが求められるかを考えています。

(3) の三角形 ALB 以外の三角形については、どの長方形の上にあるかが分かれば、図に書いたようにどこが底辺でどこが高さかがわかると思います。部分部分を取り出して書いてあげることで、問題を解く手がかりがつかめると思います。

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