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【京都大学2020年度前期入試数学(理系)第3問】空間認識能力が全ての問題

投稿が少し後手後手になってしまっていますが、第3問です。この問題は空間ベクトルの問題ですが、各点の座標をいかにうまくおいてあげるかがカギです。

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京都大学 百周年時計台記念館
2015年5月5日、Soraie8288撮影、Wikipediaより

[問題] k を正の実数とする.座標空間において,原点 O を中心とする半径 1 の球面上の4点 A, B, C, D が次の関係式を満たしている.
   OA・OB = OC・OD = 1/2, 
   OA・OC = OB・OC = -√6/4,
   OA・OD = OB・OD = k.
このとき,k の値を求めよ.ただし,座標空間の点 X, Y に対して,OX・OY は,OX と OY の内積を表す.
(注) note の表記の問題で OX の上に→をつけることができないが、OX, OY などはすべてベクトルを表しているとする.

初見ではこの問題は方針が立ちにくいかもしれません。ベクトルの記号のままでいろいろと行うことを考えるかもしれません。

しかし、A, B, C, D は x^2 + y^2 + z^2 = 1 を満たしている範囲で位置関係を回転させることが可能なので、それを利用して考えやすいように各点の座標を設定すると、途端に問題が楽になります。

そのためには、4点 A, B, C, D がどのような位置関係になるのかを思い浮かべられるか否かが勝負になります。

まず、OA と OB のなす角を θ (0 ≦ θ ≦ 180°) とおくと、|OA| = |OB| = 1 であるので OA・OB = cos θ = 1/2 であり、θ = 60° が得られます。

したがって、A, B, C, D の位置関係を原点を中心として回転させることで、点 A を (cos 30°, sin 30°, 0) = (√3/2, 1/2, 0) と、点 B を (cos(-30°), sin(-30°), 0) = (√3/2, -1/2, 0) として一般性を失いません。 

この一手が実は最大のポイントです。こう設定した理由は次の事実が成り立つからです。

点 P (X, Y, Z) が OA・OP = OB・OP を満たしていると仮定します。このとき、(√3 X/2) + (Y/2) = (√3 X/2) - (Y/2) から Y = 0 が得られます。

これを利用すると、OA・OC = OB・OC = -√6/4 と OA・OD = OB・OD = k から C を (p, 0, r) と、D を (s, 0, t) とおくことができ、OA・OC = √3 p/2 = -√6/4 かつ OA・OD = √3 s/2 = k から p = -√2/2 かつ s = 2k/√3 が得られます。

また、|OC| = 1 から p^2 + r^2 = 1 が得られるので、r^2 = 1 - p^2 = 1/2 すなわち r = ± 1/√2 が得られます。

ここで、OC・OD = ps + rt = 1/2 から t = {(1/2) - ps}/r = {(1/2) - ps}/r = ±√2 × {(1/2) + (√2 k/√3)} が導かれます。

|OD| = 1 から s^2 + t^2 = 1 が得られるので、s = 2k/√3 と t = ±√2 × {(1/2) + (√2 k/√3)} を代入して、(4k^2/3) + 2 × { (1/4) + (√2 k/√3) + (2k^2/3) } = 1すなわち、

(8/3)k^2 + 2(√2/√3)k - (1/2) = 0 

が得られるので、これを解くと

k = {-(√2/√3) ± √ (2/3) + (4/3)}/(8/3) = (-√6 ± 3√2 )/8

が得られますが、k > 0 であるので、k = (3√2 - √6)/8 が求まります。

この問題は最初にある A, B の座標をどうおくかの勝負と言っても過言ではないと思います。それさえ分かればほぼ一本道になります。

私にとっては自然な一手なので、ほとんど迷うことなくこの解答に行きつきましたが、実際には思い浮かべられずに苦戦するのかもしれません。

全問完答を目指すうえで、この問題の出来がカギを握ると思います。この問題を短時間で片づけることができれば全問完答も夢ではない。

この問題では、条件から C, D は線分AB を垂直に二等分する平面上にあることが私の中では明らかだったので、この平面を y = 0 にして(点 C, D が y = 0 上の点となります)、O, A, B が通る平面(AB が y = 0 に垂直なので、この平面は y = 0 と垂直になります)を z = 0 にして考えよう、と設定を決めて、各点の座標を決めています。

解答の上では天下り的に点の座標を決めていますが、問題文から空間上での各点の位置関係をある程度把握したうえで、各点の座標が簡単になるように A, B の座標を決めているわけです。それが最初の一手だったわけです。

もしこの一手を使わないとすると、かなり厳しいことになる可能性があります。というより、そもそも使わない戦略が思い浮かびません。

仮にもし座標を A (x1, y1, z1), B(x2, y2, z2) として解答を始めたら、文字だらけで破綻すると思います。

そのくらい、最初の一手の比重が大きい問題だと思います。

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