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【豊島岡女子学園中学校2020年度入試(1回目)算数第3問】方程式は万能ではない!

今回は豊島岡女子学園中学校2020年入試(1回目)の算数第3問を取り上げたいと思います。

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豊島岡女子学園中学校・高等学校、
2019年3月12日、江戸村のとくぞう撮影、Wikipediaより

難易度(なんいど)的には豊島岡女子学園中学校としては普通だと思います。逆に言えば、この問題は落としてはいけないと言っています。

[問題] A さんと B さんの姉妹 2人が家から学校に向かい,学校につくとすぐに家に帰ります。2人は同時に家を出発し,A さんが 3km 進む間に,B さんは家から学校までの距離(きょり)の 3 分の 1 を進みました。その後,2人とも速さを変えずに進み,A さんの方が B さんより 10分早く学校に着きました。帰りは,A さんは行きと同じ速さで進み,B さんは行きの 1.5倍の速さで進んだところ,2人は同時に家に着きました。このとき,次の各問いに答えなさい。

(1) B さんが学校に着いたとき,A さんは家から何 km 離(はな)れた地点にいましたか。

(2) B さんの行きの速さは時速何 km でしたか。

[問題終わり]

中学受験時に自分の子どもの算数を見てきたためか、こういう問題を算数の問題として解くことに慣れてしまったので、今となっては方程式を立てる発想(はっそう)が思いうかばないのですが、大人がこの問題を見たときにどう解くのでしょう?

正直なことを言うと、方程式を立てるよりも算数の問題として解く方が素直に思える、不思議な問題です。その意味で方程式は万能(ばんのう)ではないことを痛感(つうかん)します。小学生には何のこっちゃですが。笑

この問題は B の情報を使って、家と学校の間の往復(おうふく)の距離を 3km が何個分であるかで表すことになります。Bさんは

・行きは A さんが 3km 進むごとに家と学校の間の距離の 1/3 進み
・帰りは A さんが 3km 進むごとに家と学校の間の距離の (1/3) × 1.5 = 1/2 進む

ことになるので、B さんが家から学校に行く間に A さんは 3 ÷ (1/3) = 3 × 3 = 9km 進み、B さんが学校から家に帰る間に A さんは 3 ÷ (1/2) = 3 × 2 = 6km 進むことになります。

後半の距離は、B さんが学校に着いたときの、家から A さんがいた場所までの距離となりますので、(1) 6km となります。

さて、A さんが進んだ距離の合計は 9 + 6 = 15km なので、家と学校の間の距離は 15 ÷ 2 = 7.5km となります。

B さんが学校に着いたとき、A さんは学校から 9 - 7.5 = 1.5km 進んでいました。A さんが学校に着いてから B さんが学校に着くまでにかかった時間は 10 分ですので、A さんは 10分間に 1.5km、すなわち、時速 1.5 × 6 = 9km で進んでいたことになります。

このことから、B さんが家から学校に着く(= 7.5km 進む)までの時間=A さんが 9km 進むのにかかる時間は 1時間となりますので、B さんの行きの速さは (2) 時速 7.5km となります。

ここからは蛇足(だそく)になりますが、この問題をもし方程式を使って解こうとすると何を変数におくのがよいでしょうか?

例えば、「家から学校までの距離」を x, 「B さんの行きの速さ」を y としてみましょう。

このとき、B さんが学校につくまでにかかる時間は x ÷ y で表されます。

また、B さんの帰りの速さは 1.5y として表されるので、B さんの帰りの時間は x ÷ 1.5y = 2x ÷ 3y となります。

合計すると、B さんは往復で (x ÷ y) + (2x ÷ 3y) = 5x ÷ 3y 時間かかったことになり、この時間で A さんも往復したので、A さんの速さは 2x ÷ (5x ÷ 3y) = 1.2y と表されることになります。

さて、B さんが学校に着くまでに A さんは 9km 進んだことになりますが、それは 1.2y × (x ÷ y) = 1.2x と同じであるので、1.2x = 9 より x = 7.5 km と求まります。

また、A さんが学校に着いてから B さんが学校に着くまでの 10分間に 1.2x - x だけ進んだはずなので、(1.2x - x) ÷ 1.2y = 10分 = 1/6 時間となり、y = (0.2x) × (6 ÷ 1.2) = x = 時速 7.5km となります。 

この解答を見て、方程式を持ち出して楽になったかと言えば逆で、方程式を持ち出すことでむしろ複雑(ふくざつ)になった気がしませんか?

もしかすると別の値を変数にすることで簡単に解けるのかもしれませんが、今回例に出した変数の置き方は特殊(とくしゅ)だとは思えません。にもかかわらず、話すが複雑になった。

その意味でとても不思議な問題です。

方程式を持ち出すメリットは、よく分からない数値を記号で置くことができる点にありますが、記号を持ち出すことで逆に足かせになることもある、という例になっているような気がします。

「中学受験の解法は方程式を学べば無意味だ」という意見を耳にすることがありますが、本当にそうなのか、この問題に挑戦してもらえるとありがたいです。

(ついでに次の問題にも挑戦していただきたい。この問題も方程式を立てることが意味をなさない問題の好例だと思っています。)


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