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【女子学院中学校2020年度入試算数第5問】初めて見る問題にどう立ち向かう?

今回は女子学院中学校2020年入試の算数第5問を取り上げます。この問題は私にとっては簡単なのですが、おそらく受験生にとってはこの年の女子学院中学校の算数の問題の中で最も難しかったかもしれません。

ただし、前年の第6問が豪速球(ごうそっきゅう)のような全く手も足も出ない問題だったの対し、今回の問題は工藤公康のカーブのような、初めて見るのでどう手をつけていいかわからないタイプの問題だったと思います。(例えが古すぎてごめんなさい。)

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(女子学院中学校・高等学校、2009年11月23日、IZUMI SAKAI撮影、Wikipediaより)

[問題] 下のように,A から P までに,ある整数が入っている表があります。この表に,次の規則に従って〇か×の印をつけます。

① A から P までの数の1つに〇をつけ,その数と同じ行,同じ列に並んでいる印のついていない数すべてに×をつける。
② 印のついていない残りの数の1つに〇をつけ,その数と同じ行,同じ列に並んでいる印のついていない数すべてに×をつける。
③ もう一度②を行い,残った数に〇をつける。

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この表では,どこを選んで〇をつけていっても,①から③の作業をした後に〇のついた数の和がいつでも同じになることが分かりました。

(1) ①から③の作業をした後に〇のついた数は全部で (A) 個であり,それらの数の和はいつでも (B) です。

(2) A に入っている数は (C),G に入っている数は (D) です。

(3) この表に入っている一番大きい数は (E),一番小さい数は (F) です。

[問題終わり]

この手の問題を見たとき、まずは言われたとおりに作業を行ってみることです。武蔵中学校2020年の算数第3問のように、短い時間の中でも「実際に遊ぶ」感覚は入試で重要です。ただし、遊ぶ時間を決めときます。その時間内に分からなかったときはその問題を捨てます。

この問題の作業を実際にやってみると、最初の答えはすぐに分かると思います。女子学院では答えだけ書けばいいので、素直に書きましょう。(A) 4個 です。

ただし、ここから先はどうして4個なのか、作業は何を意味しているのかを読み解くことが必要になります。

①~③の作業が終わったときに〇がついている場所は必ず次のようになります。
・それぞれの行に〇が1つ
・それぞれの列に〇が1つ
逆に、この条件を満たすような〇のつけ方はいずれも①~③の作業によってできます。

この事実は順列(1~4のカードを一列に並べる場合の数)と関係があるのですが、それはのちほど書くことにします。

ひとまず、それぞれの行に〇が1つ、それぞれの列に〇が1つ、という条件さえ満たせばよいということだけが重要です。

そうすると、B, H, I, O と〇をつけることによって、 和は (B) 12 + 9 + 8 + 15 = 44 と求まります。

また、和がいつも同じ = 44 ということなので、それを手がかりに分からない場所の数字を求めていきます。

まず、A, F, K, P に〇をつけると、F, K, P が 15, 9, 11 なので、(C) 44 - (15 + 9 + 11) = 9 となります。

さらに、B, G, I, P に〇をつけると、B, I, P が 12, 8, 11 なので、(D) 44 - (12 + 8 + 11) = 13 となります。

最後の (3) ですが、これは全ての数字を求めればよいです。このとき、次のことが利用できます。

2つの行と2つの列を選んで、その中でそれぞれの行と列に〇が1つずつになるように〇をつけても、〇の数字の合計が同じになります。

例えば、1行目と2行目、1列目と2列目を選んだとします。このとき、AとFの和とBとEの和は同じになります。そうでなければ、A, F, K, Pの合計とB, E, K, Pの合計が同じにならないからです。

これによって、A + F = 9 + 15 = 24 で、B = 12 なので、E = 12 と分かります。

これを利用しなくても問題を解くことはできますが、利用すると計算が簡単になります。

最終的には、A = 9, B = 12, C = 10, D = 6, E = 12, F = 15, G = 13, H = 9, I = 8, J = 11, K = 9, L = 5, M = 14, N = 17, O = 15, P = 11 となるので、(E) 17, (F) 5 となります。

作業①~③がなぜ順列と関係あるの?

〇がそれぞれの行とそれぞれの列で1つである場合、1行目の〇がある列の番号、2行目の〇がある列の番号、3行目の〇がある列の番号、4行目の〇がある列の番号を順番に並べると、1~4を並べかえた列ができます。

例えば、(B) を求めた B, H, I, O であれば、(2, 4, 1, 3) となります。同じ列に〇が2つないので同じ数字は出てこず、〇がない列もないので数字が出てこないこともない、というわけです。

逆に、1~4を並べかえた列が、例えば (3, 4, 1, 2) のように与えられたら、1行目は3列目、2行目は4列目、3行目は1列目、4行目は2列目に、作業①~③の通りに〇をつけることができ、それぞれの行と列に〇が1つになります。

理系の大学生が1年生のときに学ぶ線形代数の行列式を知っている人であれば、作業①~③が順列を意味していることを間違いなく理解しますが、もちろん小学生には知らない話です。

今回の問題は、おそらく初めて見る問題にどれくらい対応できるかを試していると思います。こういうときはあわてずに時間を決めて試してみましょう。意外とやさしい問題かもしれませんし、難しければ捨てればいいだけです。ただし、どのくらいの時間まで試すのか、そこを上手に調整してください。

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