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【京都大学2020年度前期入試数学(理系)第2問】不思議な極限問題

次の問題も解と係数の関係が出てきますが、どう説明したらよいでしょう。前問に引き続き複雑に考えすぎない方がいい問題です。

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京都大学 百周年時計台記念館
2015年5月5日、Soraie8288撮影、Wikipediaより

[問題] p を正の整数とする.α, β は x に関する方程式 x^2 - 2px - 1 = 0 の2つの解で,|α| > 1 であるとする.
(1) すべての正の整数 n に対し,α^n + β^n は整数であり,さらに偶数であることを証明せよ.
(2) 極限 lim_{n→∞} (-a)^n sin (a^n π) を求めよ.

(1) は解と係数の関係
・α + β = 2p
・αβ = -1
を使ってあっさりと解きましょう。

ちなみに、n が正の整数となっていますが、ここでは非負整数としておきます。その方が証明が簡単だからです。証明は n に関する数学的帰納法によります。

α^0 + β^0 = 2 かつ α^1 + β^1 = 2p より n = 0, 1 に対して命題は成り立ちます。(p が正の整数であることに注意)

k を非負整数とし、n = k, k+1 に対して命題が成り立つと仮定します:すなわち、α^k + β^k と α^{k+1} + β^{k+1} がともに偶数であると仮定します。このとき、

α^{k+2} + β^{k+2} = (α + β)(α^{k+1} + β^{k+1}) - αβ(α^k + β^k)

であり、α + β, α^k + β^k, α^{k+1} + β^{k+1} はすべて偶数で、αβ = -1 であるので、α^{k+2} + β^{k+2} も偶数となる。すなわち、n = k + 2 のときにも命題は成り立ちます。

以上のことから、任意の非負整数 n に対して α^n + β^n が偶数であることが成り立ちます。

(2) は α を β に置き換えます。まず、β = -1/α であるので、|β| = 1/|α| < 1 となります。したがって、β^n → 0 (n→∞) となります。

また、α = -1/β であるので (-α)^n = 1/β^n となります。

さらに、(1) から α^n + β^n = 2m (mは整数) とおけるので、α^n = 2m - β^n から sin(α^n π) = sin{(2m - β^n)π} = sin(2mπ - β^n π) = -sin(β^n π) が得られます。以上のことから、

lim_{n→∞} (-α)^n sin (α^n π)           
         = -π × lim_{n→∞} sin(β^n π) / (β^n π) = -π

が答えとなります。

この問題は (1) の意図が分かるかどうかがカギとなりますが、sin が出てきていることから何となく展開が読めるかと思います。

ただし、(2) の式を見たときに |α| > 1 かつ -1 ≦ sin x ≦ 1 なのになぜ極限が収束するのか不思議に感じるのが自然な感覚で、その意味でこの結果はすごく不思議であるとも言えます。それに引きずられると手間取るかもしれません。

その意味で、「どうせsinが出てくる極限なんだから」という、変に受験慣れした感覚が重要かと思います。

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