【開成中学校2020年度入試算数第4問】ハートで感じる射影問題
さて、今日で開成中学校2020年度入試、算数の最後の問題、第4問です。今回は立体図形の問題ですのでそこそこに難しいですが、この問題に関しては解く人を選びません。
もちろん、立体認識(にんしき)能力の高い子は速く解けると思いますが、解けるかどうかについては努力でどうにかなるくらいの問題だと思います。
開成中学校・高等学校
2006年9月25日、SANDO撮影、Wikipediaより
問題
(図1) のように,1辺の長さが 5m の立方体の小屋 ABCDEFGH があります。
小屋の側面 ABFE には [窓穴1] が,小屋の上面 EFGH には [窓穴2] があり,外の光が入るようになっています。そして,この小屋の展開図は (図2) のようになっています。
(図1)
(図2)
晴天の日のある時刻においてこの小屋の床面 ABCD で日の当たっている部分は,次のページにある (図3) の斜線部分でした(注:斜線部の色を青に変えています)。このとき,小屋の中で他の面の日にあたっている部分を解答用紙の展開図に斜線を用いて示しなさい。
(図3)
(注) 解答用紙には(図3)と同じ図がかいてあります。
解答解説
タイトルはNHKのラジオ英会話から取っていますが、今回の問題は理屈というよりハートで感じることができる子ほど速く解けるような問題です。
より正確には、感覚と知識の融合(ゆうごう)とでも言いましょうか。両方を持ち合わせている子ほど速く解けます。
まず最初に大前提として、今回の問題での光は日=太陽の光なので、光の粒子が平行に飛んできていることを想定してください。
これが人工的な光の場合、光源(光を発する点)があって、そこから放射状に光の粒子が飛んできます。
今回の問題は (図3) で描かれている影(=日があたっている部分)が [窓穴1] のものであることを特定することが最初のポイントです。
理由は簡単で、[窓穴2] と床面(平面) ABCD は平行であるので、[窓穴2] の部分が床面 ABCD に映るときは、どの角度から光があたっても窓穴と影の間の対応する辺は平行になるからです。
しかし、影には斜めの辺があることから、この影は [窓穴1] のものとなります。もっと限定すれば、(図1)で言えば左側の辺の部分が床面 ABCD に描かれていることになります。
あとは、斜め線の角度や対応する点の位置関係から、図形を平面 ABFE を正面に見たとき、太陽の位置が、背後の左45度、上45度の角度にあることが分かります。
ここまで理屈で書きましたが、直感がきく子はそんなこと考えずに状況を理解して、上に書いたことを感覚で判断すると思います。
どちらにしても、上に書いたことが分かれば、それぞれの窓穴の4つの角がどこに来るかを求めれば、簡単に答えを求めることができます。
ただし、立体上での位置関係を展開図に反映させて求めることになりますので、時間のかかる作業になるかもしれません。(ここは厳密さが求められるので、「感覚で」という訳にはいかないです。)
展開図の6つの正方形のそれぞれの辺が上下・左右・前後のどの関係なのかを常に把握することが重要になりますので、特に気を付けてください。
辺を描くときの注意点としては、影ができる面と窓穴の辺が平行であるとき、窓穴の辺と対応する影の辺も平行となることです。垂直である場合は影の線は斜めになります。
それさえ分かれば次のような図ができると思います。(緑色の部分が答えです。)
参考までにどこがどういう風に対応しているのかを表現したものも書き足しておきます。
3枚とも記号を入れているのでわかるかと思いますが、左の図から順に立体を上から、左から、正面から見た図になります。点線の矢印は入ってくる光の方向です。
3枚それぞれで奥行の方向で矢印が重なっていてわかりにくいかもしれませんが、立体的に描くことが難しいのでこうしました。
また、実際に答えを書くのは展開図上なので、この図のように答えを求めていくことになると思います。
ちなみに、左の図が最初に与えられている影の部分です。
今回の問題は知識というより常識っぽいところがありますので、がんばって勉強してやり方を覚える、という姿勢で取り組まない方がいいと思います。
この手の問題は一度きりで、二度は出して来ないでしょう。
それよりは、窓から指す光が壁に映るのを実際に見た方がよほど印象に残りますし、もっと複雑な影だってできるので、今後のためになります。
入ってきた光を鏡で反射させて狙った場所に光をあてるとか、やったことありませんか?
そういう遊びや観察の中から経験を積む方がこの手の問題には有効です。
もちろん、それだけではダメで、そういう経験と勉強とを結びつける必要はあります。
一方で、勉強だけでもダメ。勉強だけで経験を積むのは限界があります。人間の脳ではしょせん、きれいな、やさしい状況しか作れないので。
受験勉強をしているとどうしても「観察」をする機会が得にくいですが、問題を解くヒントは勉強の中だけでなく、日常生活を観察する中にもあることを知っておくべきです。
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