りべりおんずショータイム#5『雨はいつの間にかその姿を消して』観劇感想など
はじめに
2024年06月14日
改めまして、りべりおんずしょーたいむ「雨はいつの間にかその姿を消して」全公演お疲れ様でした。
舞台装飾から映像、演者様のお芝居への熱量や動き、全てが愛おしく思う美しい世界でした。
スケジュールが合わずumiチームのみの観劇となりましたが、
初めての朗読劇、初めてのりべりおんずさんの作品に触れる事ができてとても充実した一日となりました。
本格的な夏の日差しの眩しさと暑さの中、雨をテーマにした舞台に足を踏み入れるのは、なんだか不思議な気持ちでした。
全体的な感想
薄暗い室内、青とオレンジ色の照明に照らされた椅子や布が見えた時、もしくは・・・壁に見えた雨模様が見えた時、物語が音もなく近づいてきている、本当に此処で見る事ができるんだと改めて実感しました。
キラキラとした装飾が散りばめられたガラスの衝立は、木洩れ日のようにも、窓ガラスに滴る雨粒のようにも見えて影の中にあっても綺麗でした。
この作品は様々な考察ができる物語だと思いますので、これは個人の感想と解釈になります。
(解釈違い、苦手意識などがあればお控えください)
今回のあめそのは、「過去と未来」「祝福と呪い」「交差」「自己と他者」など単語ごとではありますがそんな気がするような場面があると思いました。
断片的な話の数々は、時に交差し、時にすれ違い、最後には繋がり、継がれていく。
バラバラのメモが、一つの本になるように。
ミアの台詞の一部
「『地球上の水分量は一定で、海と空を行ったり来たりしているだけ。運不運なんてのもどっかとどっかを行き来しているだけ』。空に蓄えられた水たちは海へと戻りたがっているようだった。」
これはあめそのの世界で言う、アインの事のようにも、あめそのの世界そのものでも言えるような気がしました。
この世界で言う「雨」の水はアインであり、あめそのの物語、世界の流れはミアの台詞に込められていたものと重なる。
雨という一つの存在ではあるけれど、その雨粒一つ一つは、あの世界に生きた彼らの物語が秘められている気もして、一つ欠けてはこの作品は完成していなかったと思います。
人は、歴史や時代の中で「こうあるべき」「こうでなければならない」という固定概念や理想をを作り上げ、そして信仰にも見た文化を築き上げていきました。
それは繁栄に繋がると同時に、決して少なくない犠牲も生み出しました。
それは共同する事で得る祝福と、自己を黙殺するという呪いにも聞こえる。
あめそのの世界だけでなく、現代の社会に今もなお存在しているものだと思います。
「自分はどうありたいのか」「自分とは何なのか」「自己とは」・・・
あめそのに生きた人々は、フェアだけでなく全員が、己という存在に悩み、葛藤していました。
その姿を見た後、彼らが自分自身で選択をした事・・・彼ら自身が知らなくても、物語を見守る人々とこの物語を描いた人々がその価値と誇らしさを知っていると思います。
「在るべき生き方」という思考がこの世界で言う「呪い」だとするならば、
自ら考え選択し、自身を貫いて生きるしか呪いは解けない。その呪いは外部から要素を与えられたとしても、掛けたのは自分自身だから。
これは今を生きる私達にも言える事。
自己を理解する事=自己愛であり、それはやがて自己だけではなく誰かの人生にも何かを与える。
アインがフロントやリーベ、ブルータやイーデルやフェアの生き方を変えるきっかけを与えたように。
この物語は決して御伽噺ではない。
絵本のように手に取りやすく、文学のように複雑で、愛情深い作品だと、私は思いました。
以下、登場人物ごとの感想や解釈
【雨の世界に生きた人々へ】
ミア(草階香波さん)
本作の主人公。
演じられている草階さんの鮮やかなまでのはっきりとした声、表情、全てが向日葵のようなお方だと思いました。
見ていた私もつられて笑ってしまうような、元気で愛らしく、聡明で芯が強いミアを見せてくださいました。
ミアは明るくポジティブな女性という印象が強いけれど、周りの空気を読むお淑やかな内面的性格もあるのが序盤の方から垣間見えました。
子供心を忘れず、エルベンの話を一切疑わない純粋な心と同時に、他人を思いやるばかりに「自分自身」から逃げてしまう癖がある影のある女性。
彼女の存在は現代に生きる人々にも共通する事が多く、私自身も共感するシーンが何度かありました。
自分の心を押し留め、心配させまいと、笑って欲しいと元気に振る舞う彼女の後ろには、孤独の中で10本の蠟燭を吹き消した少女がいる。
孤独を埋めるように忙しなく動き、本当の気持ちを隠し生きる姿は現代の人々と重なります。
彼女が終盤で本当の気持ちを吐き出した時から、フロントの姿と重なります。
「嫌いだった」と口にしつつも彼女の顔は曇りなく、柔らかいものに見えました。
全てが繋がり、終わりの直前に見えたミアの驚きと喜びが混じった表情が、雨上がりの空のように眩しかったです。
過去と未来を交差する美しい世界を見せてくださり、本当にありがとうございました。
エルベン(美帆さん)
ミアの祖母。
演じられた美帆さんは歩く姿や動きが滑らかで、優しい祖母という印象が強く感じられるような表情や声がとても印象的でした。
笑った時のお顔が優しく、時には少女のように愛らしさも感じられて、ずっとお話に寄り添いたくなるような人でした。
エルベンはフロントのメモを少し先に読んでいた人物で、個人的に彼女は「繋ぐ」という過去と未来のちょうど中間に立っているような印象でした。
彼女もまたメモを受け継ぎ、ミアに継いでもらう為に一緒にメモを読む。
思うに、ミア「以外」の人物とも何回か一緒に読んだのかもしれないとふと思ったり・・・
寝かしつける為に読む絵本のように、何度か・・・
エルベンはまるで「月」のような人だなと感じました。
ミアに優しく話しかけ、うんうんと頷き、時に優しくもしっかりと引き止める・・・
太陽のように眩しいものではなく、包み込むような明るさと空気を纏っている。
時々、満月のように明るい笑顔を浮かべると少女のような愛らしさも感じられました。
彼女が夫にさえ秘密にしていた事や、アインに対して浮かべている気持ち・・・それは最後まで明かされる事はありませんでしたが、彼女もまた自分に正直になってみようと口にしていたのを聞く限り、自己を隠して生きてきたのかもしれません。
それは愛する者を傷つけない為の、愛故にという行動かもしれません。
エルベンはあめそのの世界で悲しみや苦しみを見せるシーンはほぼありませんでした。代わりに、逃げかけたミアを優しく引き止めたり、促したりする。
自分に素直になって欲しいという、間接的なメッセージのように。
エルベンも人生の中で、数えきれないくらいの我慢や嘘を溜めてきたのかもしれません。
同時にそれは自分の気持ちに素直になる、という事の難しさや葛藤を理解している人でもある。
ミアと一緒に物語を読み進めていったのは、ミアの為でもあり、再度自分へ言い聞かせる意味もあったのかなぁと個人的に思いました。
リーベとエルベンが並んで立ったのが見えたあの瞬間、過去と未来が繋がり、継がれたような瞬間に見えて、感動しました。
あの瞬間がとても愛おしかったです。
優しくて美しい世界を、ありがとうございました。
フロント(ミランダ沙織さん)
アインの友人。
演じられたミランダさんは舞台に姿が見えた瞬間、とても綺麗で格好良い方!と心の中で騒ぎました。
表情の一つ一つが細かく、役に対する愛が深く、あめそのの世界を全力で生き抜いた方だと感じました。
笑い声や涙、全てが最初から最後まで愛おしく、美しかったです。
フロントは聡明で真っ直ぐな人柄で、友情に厚く、他人思いな人物だと序盤から感じていました。
常に誰かの為に動き、常に誰かを気に掛けている姿はみんなをまとめるリーダーのようにも見える。
仲間と認めた人を疑わず、時に真剣に怒ったり、時に必死になったり・・・
彼女の存在はまるで「太陽」のように見えました。
明るく忙しなく、いつでも明るく強気なその存在は、あめそのの世界で大きな変化をもたらしていました。
同時に彼女は常に誰かのために動いていたので「自分自身」から目を背け続けていました。
リーベの為にと、姉であるからと、強くあらねばという思いが彼女を動かし続けていた。
それが空回りしていても、フロントは自己を疑わずに突き進んでいた。
太陽が常に照らし続けなければならない存在だと誰もが言うように、フロントはフロント自身が思う自己に縛られていました。
疲れ果て、傷ついても、それを見ようとせずただ進んでいくフロントの姿は切なくも、人間らしく、強さと脆さを感じました。
自己と本心に気づいた彼女が戸惑い、泣き崩れる姿は心痛むと同時に彼女の他者に対する愛情深さと、自己に掛けた呪いの重さは同じくらいかもしれないと勝手に思いました。
それを、アインが全て持って行ったという台詞は彼女が最後になって自己を受け入れる事ができたという意味にも聞こえたような気がしました。
「誰かの為に」それは究極の慈愛であり、自己犠牲の精神。
フロントのように他者を優先する者は、この世に沢山いると思います。
奉仕の愛は尊いものですが、時にそれは心を黙殺し、麻痺させてしまう。
フロントがリーベに対する愛は確かなものでしたが、同時に先の見えない不安に押し潰されかけていたのも事実で・・・
それに対する罪悪感や自己嫌悪は、誰かは一度は抱いた事のある何かかもしれません。
フロントの生き方、表情が全て大好きです。
美しい世界を見せてくださり、ありがとうございました。
(感情揺さぶられ過ぎて耳飾りを後に購入しました。大事にします。)
アイン(小野佑太朗さん)
今回の観劇のきっかけをくださった小野さんの演技を目にする事ができ、月初めからとてもソワソワしていました。
プロローグの時に目の前に立った時は驚きました(苦笑)
大胆で、表現する感情の一つ一つに熱が入っており、動きも合わさってアインの感情の動き方がとても鮮明に伝わってきました。
小野さんを舞台上で見る事ができ、改めてご挨拶もする事ができて本当に良かったです。
(小野さんに面会の際にお贈りした物の一部に入っている「エルマン/もう一人の自分」があめそのと小野さんのイメージだと個人的に思っています。
雨上がりのアスファルト、もしくはその空気を思わせる香りですのでいつか気が向いたら香ってみてください。)
生と死を繰り返すアインは、死の怖ろしさも感じなければ死の意味も知らぬまま。生の尊さを感じなければ生の意味も知らぬまま。
それは幸運とも不運とも、祝福とも呪いともとれる。
アイン自身がそう言っているように。
呪いと祝福は紙一重で、見る人によってその意味は変わり、価値も変わっていく。
アインは自分の生を、性質を呪っているわけでもなく、それを受け入れて人生を歩んでいた。酒や自慢話で「自身」を誤魔化しながらも。
生と死を行き来している「だけ」だった彼は、いつしかフロント達によって変わっていく。
水溜まりに映り込んだ自分を見つめるように、長い間見ないようにしていた自身を、その内側を見つめる。
アインの性質の意味を、知る者はおそらく誰もいなくても、ラストシーンで見えたアインの表情は晴れやかにも見えました。
自信家で強気な最初の印象から、少しずつアインの弱さや優しさが見え始めた頃、その印象は少しずつ色を変えていきました。
不器用ながらも約束を守ったり、逃げていたものと向き合ったり、諦めずに突き進み続けるその姿に心を揺さぶられました。
フロント(ミランダ沙織さん)がアインを「羨ましい」と言った言葉が、とても良く分かりました。
最初こそ、彼は他者から変化を与えられていましたが、いつしか彼が恩返しをするかのように周りに変化を与える立場になっていくのが個人的にとても好きな流れで、目が離せませんでした。
アインが一筋だけ流した涙も、端の方で見えた影も、動きの一つ一つにアインが目の前にいるという証明になり、その物語を見届ける事ができてとても嬉しかったです。
彼自身が「雨」であり、それは暗くて重いものではなく「日向雨」のように明るい雨のような存在に見えました。
忙しなく、切なくも愛おしい世界を見せてくださり、ありがとうございました。
リーベ(秋乃蒼依さん)
フロントの妹。
演じられた秋乃さんは三つ編みの髪型がとってもよく似合っていて、表情がどれも可愛らしく、それでいて演技の幅が広く、医者役を演じた際は驚きました。
感情の表現の波がバランス良く、透き通った水のようなお方だと思いました。
リーベは籠の鳥のような環境にいる少女でした。
体が弱いのは確かではあるものの、彼女自身はやりたい事や叶えたい事で溢れていた印象でした。
フロントの愛故のがむしゃらな姿を少なからず知っているからこそ、彼女も本当の気持ちを胸の内に留めていたと思います。
周囲から心配され、手厚く保護されている中、彼女は安全でありながらも心は冷えていき、その顔に表情が見られない。
けれどリーベは考え、自己を持った人間で、人の話も姿もしっかり見ている少女なのだと感じました。
フロントが頑張っている姿も、アインの語る数多くの話をする姿も、リーベは見ているし理解している。
笑いはしないものの、視線は真っ直ぐ人に向けられていて、安心し切ったかのように眠っている時もある。
フロントやアインのような子供のような忙しなさはなく、始終大人びた雰囲気がありました。
少しずつ、リーベは胸の内を表に出すようになった時、彼女は芯が強い女性だと改めて思いました。
フロントに対する気持ちを叫んだ後に、再び会える事を諦めずに信じた彼女は誰よりも強く見えました。
彼女の心の強さが、この物語では見えない、ずっと先の未来へと繋がり、序盤と終盤のミアの手にメモが渡ったと考えると、リーベの存在はとても大きいと感じられます。
そして彼女の存在はエルベンにも、ミアにも、感じられて、継がれたものはメモだけではないのだと思いました。
自らの意思で動けない息苦しさ、愛故の葛藤や罪悪感、辛抱強さと愛情。
女性らしさを見せつつ、芯の強さと希望を引き出してくれたリーベが大好きです。
強く美しい、素敵な世界を見せてくださり、ありがとうございました。
フェア(木村亮太さん)
森に住む絵描き。
演じられた木村さんはずば抜けて存在感が強く、声が低くも聞きやすく、冷たい印象の姿でしたが、酒場のシーンなどで楽しそうにしている姿は可愛らしく、さざ波のように時によって印象を変える素敵な方だと思いました。
謎が多い人物であるフェアでしたが、彼もまた人間なのだと、物語が進むにつれて思い始めます。
自己を理解する為に彷徨う姿、彼の台詞が壁に転写された映像として浮かんできた時、彼は文学を読むように自問自答をしているように感じられました。
意味深な言葉をアインに投げかけて立ち去って行った姿は風のようにも、影そのものにも見えました。
人助けをしたりする所を見て、彼もまた世話焼きで善人だと感じ、親近感が湧きました。
自己だけでなく、人と言うものを理解したいのか彼はフロントの絵を描いたり彼女を気に掛けたりしました。
その裏には彼の人間性、彼自身が納得していない慈愛に近い何かかもしれない。
彼が罪悪感に混乱していたシーンで、彼も感情を乱す「人間」そのものであり「自己」の理解に苦しむ一人だと理解できました。
彼自身の物語は多くなく、彼自身が後にどのような選択をして生きたのかは分からないけれど、アインとの約束を守り、リーベの近くにいたんじゃないかと勝手に思ったり・・・
彼は森に住む絵描きではあるものの、存在はまるで「風」のようでした。
いつの間にか現れ、存在を示すように時々手を出し、時に寄り添う。
自身が起こした何気ない行動が引き金になり、暴風のような混乱や悲劇を生み出し、それに苦しみ悩むのは、とても人間らしい姿でした。
ほの暗くも暖かい世界を見せてくださり、ありがとうございました。
ブルーダ&イーデル(時政友暉さん&本田華奈さん)
演じられた時政さんは穏やかな雰囲気を纏い、声だけでも感情を表現するのがとても上手く、面倒見の良い皆の兄貴的存在のブルーダの陰と陽とを細かく演じられていてとても素敵でした。
イーデルを演じられた本田さんは舞台の上を歩き回る姿が兎のように可愛らしく、はっきりと聞きやすい声は明るく少し辛口なイーデルらしさが色付けられていて彼女の姿をずっと目で追いたくなるような素敵な方でした。
この二人はいつもセットが良い!と最初見た時から思っていて、物語の中でも二人は大体一緒に登場していました。
兄妹というのもあるけれど、互いにある信頼があってこその、欠点などを自然に補っている感じがとても良かったです。
ブルーダはまるで「家」を思わせる人でした。
皆が集まる場所を守り、支え、いつでも変わらずに向かい入れ笑っているような広い心を持っている印象でした。
皆の兄のような存在で、どんな人間も受け入れると同時に、深追いをしない絶妙な距離感を保っている気がしました。
肯定も否定もしない。追い出す事もしなければ追う事もしない。それは決して面倒事を避けたがるからとかではなく、彼は「守り人」だからではないかと。
酒場を守り、妹を守り、街の人々や友達を助ける力強く頼りがいのあるブルーダ。
彼とイーデルがいる酒場には多くの客が行き交い、その中にはアインやフロントなどもいる。
アインにとっては酒が主な理由だったかもしれないが、孤独から逃げる為の避難場所であり、寄る辺だったかもしれない。
ブルーダの台詞一部
「生きるってことは、吐き出さないとやっていけないものだと知った。呑んで、吐いて、幸せを迎えに行く。」
ブルーダが基本的な行動に対して受け身なのはこういう所から来ているのではないかと勝手に思いました。
ファータの賄いで、彼は人を待っている。疲れたり、傷ついたりした人間を笑いながら出迎えて、酒や食事で満たしていく。
物語の中では語られずとも、そんな光景が浮かびました。
帰って来たと思うような、そんな温かい店を守る彼自身の善性は、自ら進んでいくようなヒーローのようなものではなく、母性にも似た寛容で柔らかなもので、あめそのの世界では誰よりも大人に感じられました。
頼られた時、彼は迷いつつも進んでいました。
その行動は人を、物語を、全てを動かしていました。
縁の下の力持ち。その言葉がまさにぴったりなブルーダが大好きです。
優しい世界を見せてくださり、ありがとうございました。
イーデルは「太陽の花(向日葵)」を思わせる人でした。
勝気で明るく、誰にでも平等で、少女らしさを持ちながら現実的に物事を考える知的な人という印象。
ブルーダの受け身な姿勢と反対に、イーデルは何でも正直で真っ直ぐな感じで、故にアインとの衝突はハラハラすると同時に、彼女の善性を垣間見えたようなシーンだと思いました。
現実的で正直者で、真面目に人の事を考えているからこそ、彼女はアインを助けているし、厳しく叱る。
本心はどうであれ、アインを助ける為に動いたのは彼女とフロントで、なんだかんで彼女はアインを見捨てず、時に助けを求め、ブルーダと共に帰りを待っていました。
彼女の善性は父性に似た厳しくも優しいもので、一人一人を真っ直ぐに見つめて言葉を掛けるイメージが浮かびました。
給仕係という仕事も、人の顔を見て判断したり、話しかけたりする事もあるので、彼女には合う仕事だったのかなとも。
太陽の向きに合わせて動く向日葵のように、彼女は心まで見通すかのように、人と真剣に向き合ってくれるような子だと感じました。
終盤にてイーデルが震えながらもブルーダに行ってと言っていた時も、彼女もまた弱さを隠していました。
友を失う怖さ。命が失われるかもしれない怖さ。大切にしていたものが壊れていくのを、止められない無力な己への怖さ・・・
それを振り切り、彼女はブルーダと共に家を守る選択をしました。
帰ってくる事を信じて。
それは、アインへの信頼と許しの行為のようにも感じられました。
彼女は自分の弱さも理解し、他者への嫌悪も理解しつつも、決して追い出したりせず、言葉を掛ける。
全てが良い方向だったかは別として、彼女の言葉や行動はブルーダと同じように変化をもたらしていました。
花が咲いたように明るく、硬い種のように厳しく、強かで愛らしいイーデルがずっと可愛らしくて大好きです。
ハラハラドキドキする物語を、美しい世界を見せてくださり、ありがとうございました。
【雨の世界を影として生きた人々(スタッフの皆様)へ】
開場から終演まで、スタッフの方々の丁寧な対応もそうでしたが、スタッフの方々同士の連携や仲の良さを垣間見る事があり、とても和やかで素敵な人達だと思っていました。
サウンドや照明、映像や舞台のセットまで繊細で美しく、こだわりも愛情も注がれているのを感じ、ずっと素敵でした。
雨の音の心地良さも、酒場の賑やかさも、不気味な火の音さえもあめのその世界の存在を強く感じさせるものとして加わり、世界観に浸る事ができました。
チケットのデザインが日ごとによって異なっているのを知った時は驚いたと同時に、遊び心があって素敵だと思いました。
小さくも「あっ」と思わせるような細やかな仕掛けがりべりおんずさんは得意なのだなぁと感じました。
オリジナルアクセサリーを制作なさったhanabiさんとも少しだけお話させて頂き、制作なされたアクセサリーへの想いを聞くことができてとても嬉しかったです。
創る楽しさも、不安も、失敗も成功も全部含んで、あめそのの世界に取り入られた事は誇りに思って頂きたいです。本当にどれも個性豊かな人々の特徴を捉えたものばかりで、全部好きです。
試行錯誤を繰り返し、不安を抱えながらも素敵な装飾品の数々を見せてくださり、ありがとうございました。
お迎えした耳飾りの方は大切に致します。
今回、早い段階からお世話になっておりました主催の岡部涼音さん。
当日は私を見つけてくださった事、本番まで細かい所からお世話になった事、本当にありがとうございました・・・!
初めての朗読劇にも関わらず、キャンペーンの方で当選し、ご招待という形で今回参加させて頂き、とても貴重な一日となりました。
こちらから勝手ながら差し入れなどを贈らせて頂き、当日に見えた壁に張られた紙を見たときは安堵しました。
(お口に合いましたでしょうか・・・?)
初めて触れた岡部さんの創る物語も、岡部さんの人柄も素敵でした。
何から何までお世話になりました。
これからも陰ながらにですが、応援しております。
その他にも物販や案内などで優しく接してくださったスタッフの方々もありがとうございました!
最後に
初めての朗読劇、初めて訪れる劇場で楽しみにしていたと同時に不安の中でしたが、最初から最後まで楽しむ事ができました。
長々と語ってしまいましたが、今回のあめそのの全てが愛おしく、美しい世界でした。
沢山の奇跡、沢山の心が行き交う世界と物語を見守る事ができて幸せでした。
雨の世界に生きた全ての人達へ感謝を。
また何処かで巡り会えるのを楽しみにしています。
夢生喰い
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