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鱗粉
風の音で目が覚めた。4:43。まだ眠れるなと思い少し安心する。
少しだけ風を感じたくなったので、体を起こしてふんわりとカーテンを開けて、半分程窓を開けてみる。外の風は冷たくてツンとしていた。やはり冬の天気は生きた心地を教えてくれる。薄暗い部屋の中でぼうっとしながら、「もう起きてしまおうか、いや、一服しようか」そう思いながら手元に煙草を手繰り寄せ、一服した。街が動き出す寸前の時間の中で、ひとりだけのこの瞬間は寂しいようで寂しくない。二本目の煙草を手に取ったあと、咥えながら台所に行き、やかんと煙草に火をつける。これが私の今日が始まる合図だ。
この場所に来てから一回目の冬だ。
孤独感は人を強くするというが、それは本当だろうか。「強くする」というのではなく、仕方なく「頑丈になる」というほうが、しっくりとくる気もする。だってそうじゃないと折れてしまうのだから。向かい風が吹いた時、その場でじっと耐えて踏ん張って前に進むことは、どんな人でも辛く苦しいものなはず。それでも前に一歩出ることで数十センチしか進まなくても、「それでもいいや」と思えることが、「頑丈になる」ということだと私は思う。
さて、今日の朝ごはんは何にしようか。仕事のある日は納豆ご飯が常だけれど、休日くらいはもっと自分を労わりたいと思うのが人間というもの。
だし巻き卵と、味噌汁と白飯。それさえあれば他に何もいらない。幸せなんて、そんなものだとも思う。