見出し画像

タトゥー・核実験・ゴーギャンで、タヒチ三題噺

11月15日

100日に及ぼうという船旅もそろそろ最終コーナー。南太平洋の2島への寄港を残すばかりとなった。

本日はそのうちの一つ、タヒチに上陸であります。

タヒチ島?
んー、キレイな海と椰子の木があるリゾート地、のイメージしかない。

で、上陸してみたら、確かにその通り。治安も悪くない♪ のんびり南国リゾートを楽しんでまいりました。

港から島を臨む。たくさんのヨットが係留されていた
そこら中で、ニワトリが我が物顔に歩き回ってる
地元のマーケット。ところどころに、見慣れない南国フルーツがあった
マグロの赤身のサク。醤油とワサビで食べたい
が、こちらではココナッツミルクであえる。これはこれでアリだけど……
期せずして入ったのだが、地元ではわりと有名なレストランらしい
パイナップルジュースのコップがかわいい
ワタクシは、地元のヒナノビールをば。アイコンの女性も妙にかわいい
トイレサインも、やっぱりかわいい♡

街を歩くと、タトゥーの人がすごく多いのに気づく。それもちょこっとじゃなくて、かなり派手に入れてらっしゃる。タトゥーを入れてない人の方が少数派かも。
もしかして消えるやつなのか?シールなのか?と聞いてみたら、ずっと消えない正真正銘のタトゥーなんだって。
ニコニコしながら「消えないよー!」と教えてくれて、なんかタトゥー楽しそうだな。

若い女性の背中にはキッチュな顔のイラストなんかが彫ってあって、かなりのおしゃれさんと見た
伝統舞踊の踊り子さんたちにも、みなどこかしらにタトゥーが

そして。
タヒチに来たら、やっぱりビーチは外せないよねー。
雨が心配だったけど、まずまずの天気。ピーカンならもっと海がきれいだったんだろうが、贅沢は言うまい。

遠浅で、透明度の高い海水でした
だいぶ南国な感じ
南の島のリゾート風、の写真


というわけで、南の島での正しい過ごし方を満喫した一日でした。

ただ、この島には楽しいだけじゃない歴史もある。
20世紀後半の冷戦時代に行われた、核実験であります。

南太平洋での核実験について、何となく知ってはいた。第五福竜丸の被曝事件もあったしね。改めて少し調べてみたら、太平洋のいろいろな場所でアメリカやイギリスが何度も核実験をしているのだった。
そしてタヒチ周辺の海域では、フランスが1966年から1996年までの間、193回もの実験を行ったのであります。

ひ、193回ィ〜⁈

使われたのはおそらく、広島や長崎に落とされた原爆よりも強い破壊力を持つ核爆弾だったろう。
海はどれほど汚染されたのだろう。そして、この地に住む人々は人々はどれほどの健康被害をこうむったことだろう。

フランスが機密扱いにしていた文書が2013年に公開されている。
それによれば、74年7月に行われた実験だけで、この地域に住むほぼ全てのポリネシア人11万人が、核に汚染されたとされている。

ヒトんちの庭先で何てことしてくれてんねん⁈ と憤るおばちゃんだけど、フランスにとってここはヒトんちじゃなくて、自分ちなのね。
なぜなら、タヒチを含む一帯の諸島は、フランス領ポリネシアだから。
タヒチという「国」はないのだ。

自分ちの庭先で、先住民族を実験台にしたということなんだね。
これってさ、広島と長崎に原爆を落としたアメリカの姿勢にも似てないか。私はあれは、「戦争を早く終わらせるため」じゃなくて、日本人をモルモットにした核実験だったと思ってる。

西部劇ではカッコ良さげなお父さんが「家族を守れなくて何が男か」とか言って、先住民インディアンをばんばん殺すけどさ。
そもそもは自分たちが侵略者だという自覚はあるのかね? 白人系のキリスト教者には、ぬぐいがたい選民思想があるんじゃなかろうか。

タヒチには、今も核実験の影響と思われる体調不良や癌に苦しむ人が多くいるという。
だけど、フランスがこれまでに実験による健康被害を認めた民間人は、わずかに63人なんだって。

第五福竜丸事件のような核実験にからむ問題を、私はほとんど歴史の彼方の出来事に思っていた。
実験を行った国も、ぜひそう思っていただきたい!と考えているはず。

でも、現在進行形で苦しむ人がまだまだたくさんいて、彼ら彼女らは自分の子供や孫に傷ついた遺伝子が受け継がれていくことをも懸念している。
そういうことを知ったからといって、何かができるわけでもないのだけれど、せめてせめての気持ちでnoteに残しておくものであります。

港近くの公園に建つ、核実験と懸念される影響についてのメモリアル碑
今も人々は健康被害に苦しみ、実験による環境への悪影響も続いている、とある


そういえば、タヒチはゴーギャンが愛した島だった。
ところが島には1枚も彼の絵がない。美術館もない。以前は美術館が一つあったけど、どういう理由からか閉鎖されてしまったらしい。
彼がこの地で描いた作品は、フランスをはじめとするヨーロッパ各国、アメリカ、ロシアなどの美術館に所蔵されている。

島には、ゴーギャンの痕跡がどこにもないのだ。観光案内で言及されることもない。お土産品にも彼に関連するものは全くなくて、何だかとても残念な気持ちになった。
有名な芸術家がこの地を深く愛したことを、もっとアピールしてもいいのになあ。フランスもさあ、散々核実験やって多大なご迷惑をおかけしたんだから、ゴーギャンを展示する美術館ぐらい建てないもんかねえ。

タヒチよ、頑張れよおー!と、夕暮れのレストランでトンチンカンに力んでしまうワタクシでありました。

島なのに、漁業は盛んじゃないらしい。夕飯に頼んだシュリンプフライは衣がやけに厚くて、冷凍食品疑惑が濃厚
さらばタヒチ。頑張れよ

いいなと思ったら応援しよう!