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本を読む楽しさを再認識した100日間
11月27日
下船を4日後に控えて、みんな何となくソワソワしてきた。
今船がいる太平洋は夏の気候で、真冬の日本に帰るのがピンとこないが、そろそろ荷造りも始めなくちゃだな。
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100日に渡る船旅では、いろんな講座やイベントが開催されたけれど、私は一人で本を読むことが多かった。
日本にいる時は、スマホやパソコンばっかり見てたのね。でも船内ではWi-Fiがやたらと早く消費されて、お金がかかって仕方がない。で、読書。
食わず嫌いで敬遠してた司馬遼太郎は『殉死』『故郷忘じがたく候』の2冊を読んで、どちらも面白かった。
もう一つ、食わず嫌いでいたのが時代小説。読んでみたら、面白いものがいっぱいあった。
子供の頃シャーロック・ホームズにハマって、高校時代からは清張先生。20代以降は翻訳ミステリー三昧で、ずっと推理もので楽しませてもらってきた。だけど最近はだいぶスレッカラシ読者になってしまって、「おお!」という作品には滅多にお目にかかれなくなっておりました。
だから、この先しばらくは時代小説の乱読で暇つぶしできそうだと、ホクホクしてる。
とりあえずは、宮部みゆきだな。
彼女の現代物は読みまくったけど、時代ものは一切読んでいなかった。文章もプロットも「プロだなあ」としみじみ思わせてくれる作家なので、時代小説楽しみだ〜。
世の中にはヘンなことを考える人がいるなあと、感心することもあった。
『「百年の孤独」を代わりに読む』というタイトルには目がテンになって、思わず手に取っちゃった。
で、代わりに読んでもらいました。
大著「百年の孤独」の内容を紹介しつつ、本を読むということについて考察していく。「百年の孤独」よろしく複雑かつハチャメチャな筆の運びで、なかなか面白かった。
それからそれから。
若い頃、読んでる自分までカッコよさげに思えたハードボイルドが、まるで心に響かなくなっててびっくりした。
2冊ほど読んだけど、思わせぶりなセリフやクールな振る舞いが、笑止千万に思えちゃう。
なんでだろうとつらつら考えるに……これは、私が年をとったからじゃなかろうか⁈
主人公より20才ぐらい年上になっちゃったので、ケツの青い小僧がカッコつけてんなあとしか感じられないの(笑)。
もう、相当に魅力的な人が現れなきゃ恋愛感情なんか持てないだろうな〜。しくしく。
妙に心に残ったのは、『死に山』(ドニー・アイカー)。ミステリーっぽい書名だけど、“世界一不気味な遭難事故”のサブタイトルがついたノンフィクションなのだ。
1959年冬、旧ソ連のウラル山地で、熟練クライマーの若者9人が遭難する。彼らは、きちんと片づいたテントから1キロ以上離れた場所で、遺体となって見つかった。厳寒期で気温は氷点下なのに全員ろくに服を着ず、靴も履かず、頭蓋骨が砕けたり舌がなくなっていたり。衣服からは異常な数値の放射能が検出されたという。
宇宙人に襲われた、隕石が直撃した、秘密の核実験の犠牲になった等々が言われたけれど、最終的には「未知の不可抗力によって死亡」とされたこの謎に、2000年代になってからアメリカ人ジャーナリストが挑むのであります。しぶとく原因を追い求めて、彼が出した結論には大きな矛盾がなさそうだよ。
昭和の時代から最近まで、話題になった本もいくつか。『恍惚の人』(有吉佐和子)、『日本人と中国人』(陳舜臣)、『父と暮らせば』(井上ひさし)、『想像ラジオ』(いとうせいこう)、『成瀬は天下を取りに行く』(宮島未奈)。
改めて、本はいろんな世界に連れて行ってくれるんだなと、夢中で本ばかり読んでいた子供の頃を思い出したよ。
船で読んだ本を数えてみたら、本日現在42冊。あと4日あるから、45冊ぐらいになるかな〜。
帰ったらまた、デジタルまみれに戻っちゃうのかな。ま、それならそれでいいんだけどさwww