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息子とホンワカした共同体

つい先日息子と電気屋さんに行ったとき、任天堂のゲーム”あつまれ動物の森”(あつ森)が籠に山積みされていました。説明を読むと、息子の好きなminecraftというゲームに似ているなと思い購入しました。これなら分かりやすそうだし、一緒に遊べるかもしれないと考えたのです。

ご存じない方もおられるかもしれませんが、このゲームは、最初に借金して無人島に出かけ、釣り竿や虫取り網をDIYして、魚や虫を取り、これらを売ってお金をかせぎ、お金をためて借金を返済し、返済した途端にまた借金で家を建て、また返済してくという、舞台は無人島ですが、なかなか後期資本主義的なゲームです。実社会みたいだなと思います。

そこで私は、釣りや虫取りを楽しみながらも、何の疑問もなくお金をためては借金を返し始めました。

ところが、息子は、ちょっと違うのです。

同じように釣りをしたり虫をとったりするし、借金も返すのですが、同時に、どんどん周りに分け与えていくのです。というか、この分け与えることが楽しくて仕方がないようなんです。

ある日、帰宅して、”あつ森”を立ち上げると、ゲーム内の私の家の前に、DIYに不可欠な作業台があるのです。”あれっ?”と息子をみると、ニッコリ。妻の家の前にも同じものがありました。贈与の一撃 un coup de donです。昨日は私のゲームの家に絨毯がしかれていました。

彼の贈与は、家族に留まりません。自分の借金の返済スピードが落ちても、周囲のためになることをドンドン進めていきます。優先順位が違うのです。

たぬきの社長さんが店を出すのに必要な資材を一生懸命に集めて、贈与します。あんまり一生懸命なので、私も息子に資材を渡します。

博物館の建設に必要な標本、近所の困りごと、ドンドン贈与していきます。つられて私も妻も同じようなことをするうちに、この与えあうことが楽しくて仕方がなくなってくるのです。

そうして一週間、我が家の”あつ森”は、とてもホンワカとした共同体となりました。今日はどんな驚きがあるだろう、どんな貢献ができるだろうと、ゲームを覗くのが楽しみになってきましたし、何だか時間がゆっくりと流れているように感じます。

そして、ハッと気がついたのです。

息子のこの姿勢は、ゲームの中だけではないと。

これまで、いじめなど、彼なりに苦労してきた人生を、彼は、報復ではなく、この姿勢、この人間性で生きてきたのだと。彼にとっては、同じことをしているだけなのだと。そしてこれ以外の戦略、例えば戦うとか、競争するということが、彼はとても苦手だし、嫌いなのです。

そう気がついてみると、親バカで申し訳ありませんが、素直に、人として偉いなと思います。

同時にこれからの人生のなかで、悪い奴に出会ったりしないかと心配にもなります。

社会全体が、”息子のあつ森”のようにホンワカしたら素敵だなと、考える今日この頃です。

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