【今日の花言葉:マーガレット】中学生の私の大恋愛。愛は心に秘めるべき
いつもどおり、朝ごはんをもりもり食べる私。
この様子を見守るのは、机の上に飾った、かわいいお花!
お花にもだけど、お花を飾った、ちょっと心にゆとりのある私に満足している。
いいじゃないか。
こうやって、ちょっとした満足をたくさん味わいたい。
今年に入って、部屋にお花を飾るという趣味が増えた。
そこで、出会ったお花と、その花言葉、そして花言葉にまつわるお話を綴ろうかなと、考えてみたのです。
(文章を書きながら、たまに自信がなくなって、デスマス調になってしまう。
気弱な私は、言い切ることが苦手だ。)
最初にお届けするのは、すこし前に飾った、「マーガレット」にまつわるお話。
マーガレットの花言葉は、「心に秘めた愛」「真実の友情」。
花言葉というのは、ひとつの花にも、いろいろある。
この花の花言葉はこれ、と決まっているわけではない。
良い意味の言葉と、悪い意味の言葉を、併せ持っていたりする。
マーガレットの花言葉。
「心に秘めた愛」と「真実の友情」の二つに共通するのは、強い心、固い気持ち、のようなイメージ。
声に出して確かめるものではない、という点でも、似ているような気が……する。
どちらについて書きましょう。
「心に秘めた愛」と聞いて自分のことを振り返ろうとすると、思い出す前に、やめておけ!と聞こえてくるようだ。
脳みそからの忠告を振り切って、思い出してしまったその瞬間、もやんとした灰色の煙が心をおおった。
中学生の頃の恋愛には、良いか悪いかで言ったら、悪い思い出が多い。
そして、今の私が当時の私に声をかけられるとするならば、まさにこれになる。
「誰かを好きなその気持ちは、心に秘めて!」
おおっぴらに、人に言うものではない。
マーガレットの花言葉のように、心に秘めるのが賢明で、美しい。
中学校に入学して、まだそんなに時が経っていないとき。
当時、プロフィール帳というのが流行っていた。
(分かる人は私と同世代。友達になれますね!)
かわいいプリントが施された小さな紙に、名前やメールアドレス、特技や趣味を書いて、交換する。
バインダーに綴じて、友人の個人情報をコレクションするのだ。
プロフィール帳には、決まって「恋愛」のコーナーがある。
「どんな人がタイプ?」
「告白されたことはある?」
「好きな人はいる?」
そして、こうだ。
「その人の名前は?」
しれっと、すごい踏み込んだことを聞いてくる。
好きな人がいたとして、まだ出会ったばかりの友人に、自分の基本データとして好きな人の名前まで公開するはずがない。
「ナイショ」とか、空欄にして返すものだと思うが、その新しい友人は、一言そえて、このプロフィール帳を依頼してきたのである。
「好きな人の名前は、絶対書いてね」
まじか。
私は困りに困った。
好きな人がいた。
一目惚れした、バスケ部の先輩だ。
そして、絶対に言いたくない。
彼女は出会ったばかりの、新しい友人だ。
でも、「絶対に書いて」という、強引な依頼を断ることはできない。
なぜなら、彼女は新しい友人だから。
ここで小さく反抗して、書かなかったとしたら、この先の学生生活での私の立場が危ぶまれるかもしれない。
心配性の私は迷ったあげく、正直に好きな人の名前を書くことを選んだ。
まだ心を開いていない新しい友人に、泣く泣くプロフィール帳を提出した。
数日後、別の、もっと新しい友人から言われた。
「堀口先輩が好きなの?」
心臓が、大きくはぜた。
私が好きなのは、まぎれもなく、堀口先輩だった。
やりやがった!
まだあまり話したことのない、もっと新しい友人が、私の好きな人を知っている。
考えられる原因はひとつしかなかった。
あの、忌まわしいプロフィール帳。
これ、どこまで広まっていて、誰が知っているのだろう?
そう親しくもない友人の好きな人が誰かなんて、内緒にする理由はない。
面白い話のタネでしかないから、きっともう、私の知らない誰かも、このことを知っているんだろう。
焦りを通り越して、絶望と、そして諦めを感じた。
たしか、私は書き終えたプロフィール帳を返すとき、こう添えたはずだ。
「絶対に内緒やに」
(私の地元の方言である。)
大きな希望を込めた、小さな自己主張は、届かなかった。
このあと、どうしたのかは覚えていない。
プロフィール帳の持ち主である友人に、「みんなに言ったのか?!」と、詰め寄ることは、私の性格ではできなかったはずだ。
でも、はっきりと覚えている。
眉をひそめて、ぎこちなく笑みを浮かべながら彼女が言った「ごめんね」を。
彼女も、思った以上に噂が広まってしまったのだろう。
申し訳ない気持ちは本当だったはずだ。
でも、私は彼女との間に、静かに心のシャッターを下ろした。
堀口先輩への恋は、叶うことはなかった。
長らく恋愛相談をしていた同じ部活の先輩が、堀口先輩の彼女だった。
こう書いてみると、切ないな。
切なすぎる。
当時の私にとっては、大恋愛だったのだ。
マーガレットの花言葉「心に秘めた愛」は、美しく、気高いイメージだった。
私の「心に秘められなかった愛」は、なんだかすごく、庶民的。
どこにでもありそうな、中学生の恋愛。
でも、10年以上経っても思い出すことができる。
家のベランダで、先輩にメールを送ったこと。
「もうすぐ花火大会ですね」
夏の夜、湿気を含んだ少し冷たい空気と、カエルの鳴く声。
胸に手を当てなくても分かる鼓動と、なぜか泣きそうだったこと。
この時のことは、誰かに話しても、話さなくても、忘れることはないだろう。
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