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2022年8月18日  雨と絵本

 窓を開けて寝ていたら雨の音がうるさくて目が覚めた。しばらくベッドの上で雨音を聞いていたけれど、心地良いというよりは暴力的な感じになってきたので重い腰を起こしてベッドを降り、窓を閉める。ついでに目覚まし時計を見ると7時20分くらいだった。仕事の日なら起きるのにちょうどいい時間だけど、今日は休みだったし、昨日寝たのが1時半くらいだったからちょっと早すぎる。いつものようにスマホを持ってベッドに戻り、うだうだとする。

 ちゃんと起きたのは9時20分くらいだった。雨のせいで身体は重く、起き上がる気にならなかったけれど、もう2時間近くこうしている。とりあえず今日一日の目標を立てる。1時間は集中した時間を作ること。一日の間にちゃんと集中した時間を作ることができれば、それで一日に満足ができるはず。

 宇宙飛行士が月面に着陸するような気分でベッドの下に降りる。休日の朝の予定はいつも決まっている。近所の温泉に行くこと。

 車で5分位の紅葉の湯で露天風呂に浸かる。こんなとき、とても贅沢だなと思う。値段は大人一人390円でそんなに高くない。そんな温泉がその辺に幾つもある。地元の千葉ではなかった。東京にももちろんない。

 温泉が近所にあるってことはとても贅沢なことだ。朝から温泉に入って露天風呂に入り、サウナにも入って水風呂にも入る。そんなことを繰り返して、今日一日を生きる準備ができていく。

 今日は雨が降っていたので、露天風呂の外に出たときに、ショーシャンクの空にごっこをやってみた。

露天風呂でショーシャンクの空にごっこ

 こんな風に雨が降る空を見上げ、手を広げ、雨に打たれる。もちろん全裸で。サウナの後にこれをやると効果的だ。サウナ、ショーシャンク、露天風呂、サウナ、ショーシャンク、露天風呂を3ループして、気分は完全に脱走者。そう、希望は誰にも奪えない。希望とは?この地上で自由に振る舞えること。好きなことができること。

 温泉を出たら、図書館へ向かう。借りていた本の返却期限が過ぎてしまっていた。
 芥川賞候補になっていた本が新刊本コーナーに転がっていて、思わず確保。幾つか借りたところでお腹が空いてきたので近所のちょっと高級なトンカツ屋に向かう。
 雨が降っていると身体が重く、足取りも重い。空は暗く、辿り着いたトンカツ屋も暗かった。ネット上ではパワハラ疑惑も囁かれている強面の店主が出迎えてくれる。客に対してはもちろん愛想が良い。でも身体が大きいし、声も大きいしやっぱり何かちょっと怖い。店内にはJPOPのボサノバアレンジみたいな曲がずっと流れていたけれど、天気の悪さや他にお客さんがいないことも相まって、段々気が滅入ってきた。
 でも、1600円と高いだけあってミルフィーユトンカツ定食はとても美味しかった。

 図書館に戻るのだが、その途中くしゃみをして、露天風呂でショーシャンクの空にごっこをやったことを悔やむ。何であんな馬鹿なことをしてしまったんだろう?巷ではコロナが大流行しているというのに。そんな罪悪感をかき消すために、図書館で何となく絵本を読む。

キャベツくん

 お腹がすいたブタヤマさんがキャベツくんを食べようとする話。タヌキは全然タヌキに見えなかったし、ライオンは子供が描いたライオンみたいだった。それも含め面白かった。

ピヨピヨはじめてのキャンプ

 ピヨピヨたちが寝袋にくるまれて寝るシーンがとても可愛かった。

どっちの勝ち?

 絵本を読むのは良い。さっと読めるけれど大事なことが詰まっている。面白い発想もたくさんある。ビジネスマンはその辺にあるビジネス書なんか読むより絵本をたくさん読めばいいんだよと思う。

 全部で5冊読んだけど、一番最後のどっちの勝ち?がとても良かった。ノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスンがグリム物語を下敷きに現代社会の複雑さを描いたような絵本で、考えさせられる。あの有名なアリとキリギリスをベースに描かれた冒頭の作品は、アリとキリギリスどっちの勝ちなのか簡単に答えを出せない感じだった。一見アリが正しいように見えても、キリギリスの生き方には格好良さがあった。アリがキリギリスを見る眼差しにもそれが表れていた。僕も心の中でキリギリスを飼いながら、アリのようなフリをして生きている。

 いつものタリーズに場所移動して書く。この日記や、短編小説。書いている途中、斜め前に女性が座る。コンセントありの長机のテーブル席で、真ん中に感染症対策の仕切りがある。仕切りの向こう側の顔に見覚えがあって「あれ?」と思う。いつも行くスタバの美人店員だと思う。スタバの店員がタリーズの客席に?何度か盗み見てしまうが、そこまでジロジロ見ることができないので、はっきりと断定はできないけれど、このちょっと近寄りがたい美人感はやっぱりあのスタバ店員だよな、と思う。このタリーズもスタバも同じイオンの中にあるテナントなので、別にそういうことがあっても不思議はないけれど、何かドキドキしてしまう。見てはいけないものを見てしまった気になる。そして、見てはいけないものをこそ見たい心理が働いて、やっぱり何度も盗み見てしまう。でも目線だけ動かして顔はほとんど動かしていないから多分気付かれてはいないはず。気付かれてたらとてもキモい奴。その女性は僕が席を立つより先に去った。

 そのあとはスタバに移動してまた書く。限定のフラペチーノで唯一残っている山梨ぶどうホワイトチョコレートフラペチーノを飲む。あの美人スタバ店員はいなかった。

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