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連休東京へ その1

 また昨日今日で東京に行った。

 元々疲れやすいのだけれど、最近は尋常ではなく疲れきっていて、そんなに疲れて東京まで行って大丈夫だろうかと心配していたのだけれど、どうやらそれは杞憂で終わった。

 昨日は8時前の新幹線に乗って、最初はぐったり眠っていたけれど、仙台を過ぎた辺りで眠気も消えてきて、これを読んだ。

おいしいごはんが食べられますように

 不穏な小説ってどんなだろ、と思ったけど、これはまさしく不穏な小説だった。
 出てくる人物みんな、腹の中で何を考えているのかわからない、曲者揃いなのである。

 もし自分の周りの人がそんなことをやっていたら、ドン引くような行動を皆やっている。誰にも共感できない。それでいてそれ以外の部分では共感してしまうような要素も持ち合わせている。その描き方の案配が絶妙で、作者の手練れ感を感じた。
 作者はどんな風にこれを描いたのだろう?
 こんな人いるよね、という感じで観察するように書いたのかな。
 登場人物の嫌な部分の描き方には、参考になるものがあるなと感じた。人物の良い部分ばかりを描いたら一面的な人物になってしまうから。
 良い部分と悪い部分をしっかり描くことが大事。

 下北沢に12時前に着いて、観ようとしている演劇の開演が13時で時間もないので、下北沢に新しくできていたエキウエのタイ料理屋に入った。

リオビール
ガパオライス

 かなり本格的なお味で、辛いけど旨かった。そしてそんな辛さに合うタイのリオビール。

 下北沢というとタイ料理という気がする。バーン・キラオとか、昔から下北沢にはそっち系のお店が多かった。
 だからそういう辛い料理を食べると、下北沢に来たという気分になれる。

蓼食う虫

 久しぶりの下北沢OFFOFF劇場で観たのはTOKYOPLAYERSCOLLECTIONの『蓼食う虫』

 谷崎潤一郎の原作を脚色した作品で、離婚しかかった夫婦を実際の夫婦の役者2人が演じている。

 観客として、その情報を知った上で観ているので面白かった。
 この経験は、夫婦の実生活にどんな影響を与えるんだろう?
  
 生のお芝居を観る面白さのひとつは、俳優の表情の変化を至近距離で観察できることである。
 人間はこういう時こういう表情をするものなのか、それを間近で鑑賞することができる。
 つまり劇場で観るいいお芝居とは、人間美術館のようなものかもしれないな、と思ったりもした。
 この演劇に出ている役者は、そう感じさせるようないい演技を皆していた。

 この日は台風の予定だったが、劇場を出ると雨が止んでいた。

 ハードスケジュールなので、井の頭線に乗り、神泉へ。

 神泉に来たことは何回かあるが、神泉の駅で降りたのはこれが初めてで、新鮮な気分だった。

 

ターンテーブル

 泊まる予定のドミトリー、ターンテーブルにチェックイン。カプセルホテルは好きではないが、ドミトリーは嫌いではない。どうせホテルでゆったりなどしないのだから、ドミトリーで良いのである。ターンテーブルはカフェも併設されていて、お洒落な宿泊施設だった。

 そして、ベッドにちょっとした荷物だけ置いて、ユーロライブへ。

今、出来る、精一杯

 今回の旅のメインイベントである。
 3年ほど前、劇場で3回観た作品。それ以前に、初演も観ているし、再演も3回観ている。小説も最近出たので買って読んでいる。

 内容は完全に頭に入っている。だから正直それ程期待してはいなかった。どちらかというとその上映の後のアフタートーク目当てで来ていた。

 にも関わらず、クライマックスで泣いた。何度も目を擦った。劇場内にもすすり泣くような音が響いていた。

 クライマックスで、車椅子に乗った根本さんが叫ぶ。それは本当に魂のこもった叫びで、その叫びの悲痛さ、切実さにいつも涙してしまう。

 結局観客を感動させるには、思いとそれを伝える熱量が必要なんだな、と思う。

 根本さんの叫びには思いが詰まっている。熱量がこもっている。

 この演劇は、クライマックスの根本さんの叫び以降に連鎖していく他の登場人物たちの叫びを浴びながら、怒涛のような終幕へと向かう。

 そこには、明らかなメッセージがある。伝えたい思いに溢れている。

 僕が演劇とか芸術に求めているものはこれなんだと思う。

 どんな風に生きればいいのか、生きる意味はあるのか、その答えが知りたい。その答えを見つけたと思っても、日々の仕事の忙しさとかですぐに忘れてしまうから、定期的に思い出させてほしい。

  この演劇には、それを思い出させてくれる暴力的とも言える力があった。
 だから僕は何度でもこの作品を観たくなる。

 熱いメッセージが本当は今の時代必要とされているのだと思う。作り手は、メッセージを伝えようとすることを恐れてはいけないと思う。観客に考えさせるタイプの作品があってもいいけれど、そういう作品ばかりではつまらない。やっぱり作品には熱いメッセージが必要だ。

 そう思って劇場を後にし、夜の神泉の街に飛び出したのでした。



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