10月24日は生誕祭
誕生日を迎えてしまった。45歳になってしまった。その年齢と自分の魂を結び付けて考えることができない。魂は今も少年のようだな、と思う。未だに中学生みたいな気分で街を歩いている。でもふとショーウインドウに映った自分を見てぎょっとすることがある。髪も最近頭頂部の辺りが薄くなってきてしまった。父親は若い頃から禿げていて、僕が中学生になる頃にはもうカツラをつけていた。その様を見て僕は笑っていた。
完全なるおじさんの年齢になってしまったけれど、全然おじさん気分になれない。結婚していないし子供もいないのでおじさんと呼ばれることもない。もっとおじさんと呼ばれる機会が増えればおじさん気分になれるのだろうか。きっとそうなんだろう。このままおじさんになれないままいつの間にかおじいちゃんになってしまうのかな。浦島太郎みたいに。
誕生日だから誕生日っぽい場所でランチを、と思って以前おススメされたことのあるフレンチレストランに入ってみるけれど、店内は明らかに満席で、予約でいっぱいですと言われる。全然申し訳なさそうな感じではなくて、無理に決まってるでしょうみたいな感じである。今日は祝日だった。スポーツの日である。そうかそんなに人気店だったか、と思いながらすごすごと店を後にしたのだが、ここからランチ難民の放浪の旅が始まった。
行く店行く店混んでいる。並んでいる列が見えたり、予約のみの営業ですの張り紙が。そもそもやっていない店も多い。盛岡の飲食店は月曜休みの所が多いのである。さてどうしよう。
インスタで営業していることが確認できて、確実に満足できることが確定しているお店に出向く。
桜山にある八まめ。ここは着物を来た女将さんが作ったカレーを出してくれるという珍しいお店である。
店内普段より明らかに混んでいたけど、カウンターに座ると女将さんはすぐに気づいてくれた。まだ2回しか行ったことがなくて、前回行ったのはかなり前なのに。
「いつも来るの平日のことが多いですよね」
確かに、平日休みのことが多いので平日に訪れることが多い。覚えてくれると嬉しい。また行きたいという気分になる。
見よ、この彩り豊かなルックスを。美味しさとは見た目にも表れるのである。誕生日に相応しい華やかなカレーだった。
腹ごしらえをしたら次は誕生日プレゼントである。誰も誕生日プレゼントをくれないなら、自分で自分にプレゼントをすれば良い。自分の機嫌は自分で取るのである。
盛岡で一番のパワースポットであるブックナードへ。
気になっていた本2冊を買う。
酒場の君は、酒場でひとり飲む様をただ描いただけのエッセイ。特にエモいとか印象的なエピソードがあるわけでもなく、ある酒場での一場面を描いている。こんな感じなら僕にだって書けるかも。最初の数話を読んだだけだけどそんな風に思わせてくれるエッセイ。
どうせ混んでいるだろうなと思っていたけれど店の前を通りかかったら店内空いているように見えたので入る。
クラムボン。盛岡の有名カフェの内のひとつだけど、客席はテーブル席3席のみでカウンターはコーヒー焙煎客用の待ち席として使用されているので、なかなか店内利用の難易度は高い。
僕は最後のひと席に座れたけれど、すぐ後に入ってきた男性客は断られそうになっていた。でも店主の女性がカウンターを解放することに決めて結局はその男性も座れることに。
くるみのプリンと季節の珈琲を注文したけれど、時間がかかると言わる。でもそんなことは何も問題ない。リュックの中には本がある。
本を読んでいると、店主の女性に声をかけられる。時間がかかって申し訳ない、今から作るとのこと。改めて言われる、
その時の女性店主の顔が何か良かった。
いい加減な所の一切ない顔で、一人一人の客に真摯に向き合っているのが伝わってくる。
プライドを持って働いてるんだろうな。
翻って自分はどうだろう?
何の感情もなく、ただ最低限の仕事だけをこなす日々。
読書をしていると注文していたものが運ばれてきた。
くるみのプリンはごわごわペチャペチャとしていてあまり食べたことのない食感のプリンだった。でも美味しい。珈琲は深煎りの苦めのタイプを選択したのでプリンによく合った。
待っている間に待ち客4組になってしまったので食べて飲み終わったらサッと席を立つ。
お会計のときにバタバタしてしまったからとオマケをしてくれる。
この時もいい笑顔。こんなに笑顔のいい人だったか。ファンになってしまった、また来よう。
生誕祭なので、ディナーもそれに相応しい所に行かないと。ポンコツ珈琲を予約した。前のシェフが好きだったからシェフが変わってしまって寂しかったけど、島根から来たという新しいシェフの料理も気になっていた。
蔦の絡まったこの外観はやっぱり素敵。
誰も祝ってくれないから自分の誕生日は自分で祝っていくスタイル。
45歳の年もまたいい年になりますように。っていうかなるだろう。いい年になることに決まっている。
最高の一年に乾杯🍸✨🍸