ドロステのはてで僕ら

『ドロステのはてで僕ら』観た。ヨーロッパ企画のメンバー総出で、脚本も上田誠だし、完全にヨーロッパ企画の作品。

 ドロステって言葉は初めて聞いたけど、2枚の鏡を向かい合わせると鏡の中にお互いの画像が永遠に反復されるような現象のことを言うらしい。言葉で説明すると何のこっちゃって言う感じだが、その現象については映画を観ていると何となく理解はできる。ただややこしいのは、このドロステ現象に2分後の未来が見えるという要素が加わっている点。ドロステ現象✕2分後の未来を重ねれば遙か先の未来も見ることができる……。それを利用してメンバーは金を手に入れようと画策するが、そのせいで事件に巻き込まれ……みたいなお話。

 ややこしいけど、面白かった。まあ、サマータイムマシーンブルースのように青春要素の入っているSFの方が好みではあるが、こういう純粋にSF的な設定にこだわったおもちゃ箱みたいな映画はなかなかないので、そういう意味でも面白い。映画ってどうしてもテーマみたいなものが大事になってくるけど、この作品の場合堅苦しいテーマなんてものはどうでもよく、設定を使ってどれだけ遊べるか、それだけに拘り抜いて作られている。

 そしてこの映画の魅力は何と言ってもそのチープさにあると思う。カメラを止めるなの大ヒット以降、チープさが流行している気がする。最近だとメランコリックもチープな魅力が炸裂している映画だった。

 チープな映画の良さは、有名人が出てこない為に映画の中の出来事が絵空事ではなく、身近な出来事として感じられるところにある。有名人が出てくるとどうしても有名人の存在の破壊力が強すぎてその姿ばかりを目で追ってしまうけど、無名の人間ばかりではその心配もなく、純粋に映画の中で起きている出来事をいかにもありそうなこととして観客も体験できる。そんな気がする。

 この映画の出演者で1番有名なのは朝倉あきだろうけど、朝倉あきもいい感じに芸能人感が薄らいで、ヨーロッパ企画の空気感にうまく溶け込んでいた。ヨーロッパ企画の面々だけではむさ苦しすぎるので、これくらいの華がないとやっぱり映画の画面としては辛くなってしまう。(ヨーロッパ企画常連の藤谷理子も魅力的ではあったけれど……)

 映画も面白かったけど、やっぱりヨーロッパ企画が1番魅力的になるのは舞台。久しぶりに舞台上のヨーロッパ企画を観たくなった。

 

 

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