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秋田旅行1日目 その2
角館を出てからは田沢湖に向かった。田沢湖には何があるか? たつこ像がある。
と言うわけでたつこ像を目指して車を走らせる。
途中、雨は降ったり止んだりを繰り返していた。
家族というのは不思議な存在だ。数年ぶりに会ったというのに、あっという間に昔の感覚に戻って、昔のように話し、そして車内にはすでに気怠い気配すら漂っている。
30分ほど車を走らせて、たつこ像の近くのホテルの駐車場に車を停める。事前の情報だとホテルの客以外は駐車料金が取られるとのことだったけれど、駐車場には車がほとんど停まっていなくて、ホテルも営業しているように見えなかった。
時刻は4時を回っており、遊覧船に乗れる時間も過ぎていたし、そもそも台風が近づいていて雨も風も強かったので、遊覧船が動いていたのかも怪しいところだった。
湖の方に向かう。
湖には霧がかかっていた。写真で見たことのある田沢湖はブルーだったけれど、この時の田沢湖はグレーであり白だった。
晴れた日の、ブルーの田沢湖も見てみたかった気がするけれど、これはこれで神秘的で、見ていると胸の中が静かになっていった。
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その田沢湖の中に、目当てのものはいた。
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![](https://assets.st-note.com/img/1686291270389-ZPrVtjUi94.jpg?width=1200)
たつこ像は予想とちょっと違っていた。事前のイメージでは田沢湖のほとりに立っていて、たつこ像と一緒に記念撮影できるようなイメージだったけれど、実際は湖の中に軽く沈んでいた。陸からはそこそこ距離があるので、近づくこともできない。
湖の中に、ぽつんとたつこ像が立っている。
たつこ像って何か有名だから一応見ておくか、位の気分だったのだけれど、そのたつこ像を見ているとちょっとテンションがあがってきた。
何か変だ。何であんな湖の中に、像が立っているんだろう?
小雨が振っていて、周りには自分たち家族以外観光客は1人もいなかった。
たつこ像ほど有名な存在を、僕たち家族が独り占めしている。
そして、そのたつこ像は湖の中にいるのだった。
僕たちはしばらくの間、たつこ像を、そして田沢湖の湖面を見つめた。
その昔、美貌を永遠のものにと望んだ辰子という娘がいつしか龍と化してしまい、田沢湖に身を投じたという伝説から建てられた、というたつこ像。
この伝説も、何だかよく分からない。
美貌を永遠のものにと望む辰子という部分は分かるのだが、どうしていつしか龍と化してしまうのだろう。そして、どうして龍と化した辰子は田沢湖に身を投じたんだろう? 龍なら空高く飛んでいきそうなイメージがある。湖の中に龍が身を投じるイメージがあまり沸かなかった。
そんなことを考えていると、母親が言った。
「さ、そろそろ行こうか」
異論はなかった。雨の日の田沢湖、そしてたつこ像、神秘的ではあるけれど、長く見ていられるようなものではなかった。それに少し寒かった。
車に戻り、一路ホテルに向かうことにする。
泊まることになるホテルは田沢湖レイクリゾートホテル。
名前からして、湖のすぐ傍に建っているホテルなんだろうと思っていたけれど、ホテルから湖は見えなかった。ゴルフ場みたいな緑がホテルの周りには広がっていた。
部屋に入ると、真っ先に温泉に向かった。温泉に入れて美味しいご飯が食べられさえすれば、後のことは別にどうでも良い。
温泉は露天風呂もあって気持ち良かった。
父親と一緒に温泉に入ったのだが、父親は服と一緒に脱ぎ捨てるものがある。
カツラである。
父親は僕が小学生くらいの頃からずっとカツラをしていた。
そのカツラが何代目のカツラなのか、もうよく分からない。白髪の多いカツラだった。
カツラを外した父親はすっきりさっぱりとした頭をしていた。
なぜこの頭ではダメなのだろうと思うけれど、父親はお風呂に入るとき以外はいつでもカツラをしている。
もうカツラをしないではいられない身体になっているのかもしれない。
誰にでもそういうものはある。気付かないだけで、僕にもきっとそういうものがある。
夕食はバイキングで、母親以外はせっかくなのでと90分の飲み放題をつけた。
妹と父親が競うようにグラス交換で新しい酒をもらいに行く。
僕も毎日のようにお酒を飲むものの、そこまで量を飲む方ではないし、美味しいお酒を2杯くらい飲めばもう満足してしまう。
妹と父親は僕とはタイプが少し違って、美味しいお酒を飲むことを目的にしているというよりも、ガンガン飲むこと自体を目的にしている雰囲気がどこかにある。
妹の顔はいつの間にか赤くなっていた。
仕事が大変そうで、お酒を飲まないと眠れないと言っていた。
妹は結婚していて、旦那の方はお酒を飲まないらしい。毎晩妹だけが酒を飲む。
妹の結婚生活は謎に包まれている。
週に5日くらい出張で福岡に行っていて、週末だけ東京のマンションに戻って過ごすらしい。休日は一日中ベッドの中にいて、ずっとテレビを観ているのだと言う。
妹の話を聞いていても、旦那の話があまり出てこない。
妹が一人酒を飲んでいるとき、旦那はどこで何をしているのだろう? 妹がベッドの中に閉じこもりテレビを観ているとき、旦那はどこにいるのだろう?
ちなみに妹はバツイチである。
自由でいい。僕なら相手のことが気になって、そんな風に自由になんてとても過ごせないだろう。
今の僕は結婚というものに何も興味が無い。
誰かと一緒にいたいとも、もう全く思わなくなってしまったな。
バイキングの品数はとても豊富でみんな美味しかったです。
いいホテルです。田沢湖付近に泊まる際はぜひ!