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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P6
1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン⑤
無言で歩いていくと目の前に見えて来たのはどっからどう見ても駅の自動改札機…と駅のプラットホーム…。
辺りは見慣れたラッシュ時の駅の改札風景だ。
え? ここってどっかの駅? この後どうすりゃいいんだ?
関口さんは切符を取り出すと当たり前のように自動改札機の液晶部分にかざし奥へと進んでゆく。
俺も切符を取り出して自動改札機の液晶部分にかざし後に続いた。
そんなふうに店内に入ったものの…頭の中はクエッションマークでいっぱいだ。
プラットホームの両脇には特急列車の客車が停車していてその先頭部分には本物の特急列車と同じ大きさの先頭部分写真が超特大パネルで設置されていた。
つまり【なんちゃって運転席先頭車両】。
レトロっぽく向かって左側の車両には『マウンテン号』右側の車両には『マリンパーク号』と書いてある。
ヤバイ…
仕事で疲れた脳みそがついにバグったか?
そんな困惑を俺が抱えているのに彼女は気がついているのかいないのか…。
「ほらっ! 惚けてないで。飲み物取りに行こ!」
と、腕を引かれた。
『いらっしゃいませ。こちらのトレイをお受け取り下さい』
という音声が流れている一角に誘導されプラスチック製のトレイを渡される。
飲み物が入るであろう穴の空いたトレイで調味料やカトラリーまでセットされていた。
そして自動的に飲み物がサーブされる機械の前に誘導される。
「とりあえずビールでいい?」
彼女の問いかけに俺は声も出せず無言で頷く。
彼女はさっさとビールをビールサーバーからグラスに注ぐと俺のトレイにセットし自分の分のビールも確保した。
「次はお通しを選ぶんだよ」
楽しそうに俺に告げ、小鉢が並べてある台へと歩きだす。
俺は親鳥の後をついて回る雛の気分で彼女の後に続く。
そしてお通しの小鉢を受け取ったがトレイと小鉢で両手が塞がった。
ちょっと運び辛くない?
そう悩んでいたら
「このトレイ、小鉢をジョイントできるんだよ」
と、彼女が側にある大きな説明看板を指差した。
俺は(彼女に教わりながらだが)看板の絵を見てトレイに小鉢をジョイントさせる。
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン⑥
へ続く