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凋叶棕「慄」の考察 ~トラウマと、トラウマからの旅立ちと~

概要

おそらくトラウマとトラウマを克服して次の出会いを求めるアルバムではないかと思います。「鏡と鐘」「楽園に吹く風」がトラウマに陥って苦しんでいる状態。「また月夜に」<無間夢幻夢想夢想幻想>が次の出会いがある状態です。ただ、このアルバムを聴くには、次の2つを抑えておいた方が良いと思うので付け加えます。一つは凋叶棕さんの配信で述べられていた、怪談の「鏡と鐘」。もう一つは人間の特性として、自己憐憫は依存症になりえるのではないかという話です。

怪談「鏡と鐘」


家宝の鏡を誤って寺社の鐘の材料として寄贈してしまった。鏡を失ったことを後悔し、鏡は呪われ、そして鏡から作られた鐘も呪われてしまった。鐘は苦痛の音を鳴らすようになってしまったという怪談です。鏡を失うことがトラウマであり、そして、鐘となって増幅されることがトラウマが増幅されることではないかと思います。


「自己憐憫は依存症」


自傷行為をすると快楽物質が出るとのことです。
そして、自分で自分に強くストレスを与えることで快楽物質が出ている可能性があります。
なので、過去の後悔は依存し「自分かわいそう」の依存症になってる可能性があるのです。トラウマというものを語るうえでこの人間の特性は触れておいた方が良いと思うので付け加えます。

出典「マンガでわかる心療内科 依存症編」


[閑話1]


「鏡と鐘」の前振り。鐘の音は欲望の音であり、地獄に落ちる音とのことでしょう。鏡は、自分の姿を映すものであり過去のいやな記憶を映し出すこと。そして、鐘は、嫌な記憶を思い出して増幅することかと。だから地獄に落ちます。


「鏡と鐘」


鏡が映すのは我らが魂。おそらくは過去の後悔です。そして、鐘となったことで過去の後悔はさらに響くようになり、無限の悲鳴となってしまいました。だけど、おそらく過去を悔いること自体欲望なので、金と書いています。後悔することが「いいじゃないか」と開き直ってしまいます。


[閑話2]

「楽園に吹く風」の前振りです。屋敷がありますけども、その周りは何も残っていません。後悔を発生する原因が屋敷の周りの暗喩であり、なくなっていることが多いのでしょう。美しい物の崩壊と新しい物の醜悪さは過去を美化して楽園にし、新しいものを受けいれられない状態です。美化はじつは自分を苦しめる邪悪な風です。


「楽園に吹く風」


屋敷が楽園であり蜃気楼です。楽園は昔の幸せだった世界ではないかと。さらに昔のことだから美化されているため触れられないし、触れてはいけないのです。しかし、二度とは戻れません。さらに、昔のことだから自分を縛る呪いとしててしか残っていません。


[閑話3]

「また月夜に」の前振りです。女の子が死んだとは、恋が終わったことを意味してるのではないかと。輪廻転生はまことしやかな生まれ変わりの物語とのこと。つまり、輪廻転生は次の恋を見つけた話ではないかと。メリーがとらわれているのに、輪廻転生の話をするから蓮子に「あなたが言うの?」と笑われています。


「また月夜に」

月夜は「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳した話から。「また」としているのは、過去の恋があり、そして今の恋があるから。
「かつて交わした約束」と「この現世でどうか伴に」。
「今わの際に交わした言葉」と「けれども私にはこの今生こそがすべて」。
など、対比させています。昔の言葉より今生・この世でよき人と出会い、現世の人に向こうとしていることを示しているのではないかと思います。
呪いとなった過去の恋も、まことの誓いとなる今の恋も、違いはただ2人の関係の強さだけのことに過ぎません。


[閑話4]

永遠は2つの意味でつかわれているのではないかと思います。過去の未練を基に生きても死んでもいない状態と、誰かと永遠に関係が続く永遠の命の状態です。永遠に関係が続くことは人間にとっての永遠の命題です。未練にとらわれるのも、恋が続く関係継続も、変わらない状態を好むゆえです。なので、どちらにしても永遠を望むという2つの意味を作っています。


「無間夢幻無想夢想幻想」

この曲の母とは昔受け入れてくれた人。つまりは、過去の恋人です。しかしまぼろしの影として心に巣食っています。まぼろしにとらわれているから生きても死んでもいない状態となっています。だけど、新しい輪である関係が作られていきます。そして巡り楽園として祝されます。新しい母=受け入れてくれる人=新しい恋人ができました。だから昔の幻を葬り、壁を越えていくのではないかと思います。


[幻視]


古来の夢は過去の未練の世界、未来への幻想は次の新しい関係です。新しく生まれた月明かり=月夜=I love you の言葉が神秘を揺しています。感情を揺さぶります。愛を求めて、愛を失って、また愛を探す。所詮色恋なんてそんなものでしょう。そして、母になるとは別の誰かを受け止める人になるということです。お互い相手を受け入れてこその恋愛ですからね。双方母となる気持ちが必要なのでしょう。そして、過去の母=未練を消し、越えていくという話かと思います。


[…?]


メリーは慄の世界から消えて別の誰かと話しています。慄の世界が過去のトラウマにとらわれた世界なら、消えてしまい、別の誰かと話すのは、トラウマから新しい世界に旅立つということじゃないかと思います。意識(メリー)と無意識(蓮子)が別人格とするなら、過去にとらわれたい無意識側はつらい物でしょう。


[まとめ]


一見怪談に見せかけています。「鏡と鐘」「楽園に吹く風」はトラウマにとらわれること。「また月夜に」「無間夢幻無想夢想幻想」は、トラウマを踏まえて次の出会いを見つけて旅立つ話ではないかと思います。[…?]は恐怖の旅立ちに見せかけて、メリーにとっては幸せの旅立ちなのでしょう。


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