線香花火
窓を開けたら
もう真っ暗なのに眠らない蝉の声といっしょに
懐かしいにおいが微かに入ってきた
微かな微かな火薬のにおい
近所の家族が花火をしているのだ
かつての我が家のように
毎年小さなガレージで手持ち花火をするのが楽しみだったね
逆さにした植木鉢の中にろうそくを立てて種火をつけた
いつでも最後は線香花火と決めていた
小さな火の玉が落ちないように
息をひそめて
誰の花火が一番最後までのこるか競争したね
最後の火の玉が落ちると
名残惜しい、ちいさな沈黙
そして家の中に入ると
いつもの照明が眩しいと
目をパチパチさせていたあの顔
いつからか花火はしなくなったけど
あの時間の余韻はいつも胸のどこかにあって
微かな火薬のにおいでよみがえる
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