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ゴリラの夢はかなった

子供の頃、しょっちゅう紺色のオーバーオールを着ていた。
男の子みたいなコーデュロイのオーバーオール。

本当は、友達が着ているようなピンクの服や、レースやフリルのついたお姫様みたいな服が着たかった。

小学校では、お転婆娘で、ゴリラっていうあだ名だった。
顔が濃い目なのもあったけど、
陽気なヤツだから、コイツにはゴリラって言っても大丈夫だと思われていた。

好きな男の子に、卒業する時のサイン帳に
「ゴリラ、陽気すぎる」
って書かれて、泣きたいのに、キャラを守って
「ウホウホ」
って胸をたたいて、ゴリラの真似をした。

絶対、恋が叶うことなんてないんだと思った。


そして、いつの間にか、ゴリラは普通の女の子になった。

不思議なことに、小学校の卒業アルバムではゴリラっぽかったのに、
高校のアルバムではゴリラっぽくなくなっていた。


大人になった私は、恋をしてお嫁さんになった。
結婚相手は私がゴリラだったことを知らない。

いつしか私はゴリラだった時のことは忘れていた。

それなのに、胸の中に、小さな棘が引っかかっていた。
お姫様みたいになれなかったこと。
ゴリラの真似をして悲しかったこと。

子ども時代を思い出すと、必ず痛みがよみがえる。

でも、今はうんとかわいい服が好きなだけ着られる。
恋をして、結婚して、子どもまでいる。

そう、夢はかなったんだ。

小さな夢だけど、少女の頃の精一杯の夢。

だから、もう悲しくないんだ。

気がついたら、引っかかっていた棘が 氷が溶けるように消えていった。


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yumetama
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