見出し画像

2024/02/24

目を覚ましてから、起き上がるまでの間、「うーん、うーん」と言いながらゴロゴロするのは、そうすると、キッチンの方からパートナーが来ることを知っているからだ。

「起きたの〜?」
「起きたー」

「おはよう」
今日もパートナーがいてくれて良かったと思う昼前。

僕はトースターでパンを焼く。マーガリンを塗ったところに、これでもかとはちみつをかける。
また、焼いた後に、これでもかとはちみつをかける。
そうして、朝ごはんが完成する。

トースターの下にある電子レンジを乗せている冷蔵庫の上に2枚だけティッシュを重ねる。そして、トースターからティッシュの上へパンを移動。そのまま、むしゃむしゃ食べる。

皿を使ったり、机に移動するのがめんどくさいのだ。

今日は薬局へ行って薬を貰うというミッションがあった。薬局は13時まで。
朝ごはんを済ませて、少しゆっくりしたら、出掛ける時間。

僕の薬を貰いに行くのだが、パートナーが一緒に来てくれるという。パートナーがいるという喜びがあっても、外出しなければならないことが嫌だ。

最近の僕は、「他人にじろじろと見られている感覚」「通り過ぎる人がこちらを凝視し続けている幻覚」があって、どんどん外出が億劫になっている。

薬局までたどり着いて、椅子に座ってパートナーと話していた。音のないテレビをぼんやり眺める。
テレビは、何も考えずに見れてしまうから危ないという気がするのに、ぼんやりしているとテレビを見ている。本当に危険である。

なかなか、出来上がらない。いつも薬の種類が多くて、一包化もしてもらっているので、時間がかかるのだ。

貰った整理番号を飛ばして、後の番号が呼ばれ始める。

お薬引換券 40番

「順番、来ないね」
「そうやね」
そんな会話を2,3回して、またテレビをぼんやり眺めていた。

「40番の整理番号をお持ちの方、1番の窓口までお越しください」

「行ってくるわ」
席を立ってカウンターへ向かう。薬剤師さんと薬を確認する。
「新しく漢方がひとつ、増えているんですが、何か体調が悪いとか、変化があったんですか?」

「え?」

病院に行ったのは、一昨日。
診察のときに何を話して、何に困っていると伝えたのか分からない。
「えっと、あのー」
思い出さねば。薬剤師さんボールペンを握る。カチリとボールペンの先を出す音がする。ボールペンの先が紙の上まで来ている。

「うーん、えっと.…」

思い出せない。何にも分からない。
「この漢方は、よく倦怠感とかがある場合に処方されるんですが、そういったことでしたか?」
薬剤師さんは優しい口調で言う。しかし、分からない。思い出せない。欠片も分からない。

「えっと、うーん…。えー…」
「なんか、倦怠感とかですかね。他になにか、困ることが出てきたら相談してください」
「あ、はい」

一応、無事に薬を手に入れた。

パートナーの提案で、すぐ近くにあるスーパーに寄って、晩ごはんを買うことになった。自分もそのつもりだった。

最近は惣菜を買って食べている。料理ができないのだ。頑張ればできるだろうが、そうすると他のことができなくなる。削れるところとして、料理を削っている。

エコバッグを片手に歩いていると、「なんかお腹空いてきたかも」とパートナーが言い始めた。

「わかる!うちも思ってた」
「どこかで食べて帰る?」
「それでもいいよ」

話し合って、カフェでトーストを食べることにした。
大通りから少し奥に入ったところにある、個人的に穴場だと思っているお店へ移動。

モーニング以外で行くのは初めてなので、メニュー表を初めてしっかり見た。

そこで僕は「たまごサラダトースト」を頼もうと思ったのだが、どういうたまごが出てくるのか気になってしまった。

「たまごサラダ」だから、ゆで卵を潰して作るたまごだろうと、思いはしたものの、「思っているのと違ったらどうしよう」という不安があった。

パートナーに「別のメニューでたまご焼きトーストがあるから、大丈夫じゃない?」と言われても、不安だった。

そこで、近くで不自然に、僕たちの注文を待つ店員さんを呼んで、「たまごサラダトーストは、ゆで卵を潰して作るやつであってますか?」と聞こうと考えた。

「すいません」
「はい」
店員さんがこちらへ歩きながら、持っているボールペンを、いつでも注文表に記入できる状態にした。
そして、「たまごサラダトーストって、」と聞くと注文表に書き込み始めた。

僕は焦ってしまった。
まだ、注文を決めたわけじゃないのに、注文表に記入し始めてる。セットドリンクも決まってない。

「あの、ゆで卵を潰したやつですか?」
「あ、そうですよ」
「あ、ああ」

心の中では「じゃあ、それにします」と言いたいのに「ああ」になってしまった。僕は更に焦った。

「それと、チーズトーストください」
パートナーの注文が終わって、僕は頑張って「セットドリンク頼む?」ときいてみた。

ドリンクメニューのページを開いたが、上手く「セットドリンク頼む?どうする?」と言えない。声が小さくなるし、「えー」とか「あー」とか入れてしまう。

パートナーは僕の言っていることを察して、「ブレンドコーヒーで」と注文。

「同じので」と僕が言うと、店員さんが「ん?同じのですか?」と返す。聞き取れなかったのかもしれない。

「ブレンドは2杯?1杯?」
「2杯で」
二本、指を立てる。
「えっと、それとチーズトースト。たまごは無しで良かったですか?」
「あ、いや。たまごサラダトースト、ください」
「ん?たまご頼みますか?」
「あ、はい」
「わかりましたー。たまごは焼きますか?」

たまごは、焼きますか…?

「たまご」が何を指しているのか、パンをトーストしてくれるのか、たまご自体を焼いたやつにする?ってことなのか。混乱してしまった。

「たまごは焼いてないやつで」とパートナーが言ってくれる。
「トーストはしますか?」
「ん?トースト?」
「あの、パンをトーストできるんです。そのままでも大丈夫ですけど」
「あ、じゃあ、トーストしてください」
「はーい、わかりました」

注文だけで、僕は嫌になってしまった。やっぱり何か買って帰って、お家で食べれば良かったのではないか。

たまこサラダトーストセット

トーストは美味しかった。食べて、飲みながらパートナーとお喋りをする。

その内に少し落ち着いてきて、来て良かったかなと思い始めた。パートナーがいてくれて良かった。

帰りは家に向かっているわけだから、気が楽だ。

帰ってからは、のんびり過ごした。
知らない人がわんさかいないし、パートナーがいてくれるから安心である。

家が唯一、落ち着ける場所だ。

しばらくはあんまり外出できないと思う。そういう時期なのだろう。

明日もパートナーと過ごしたい。
不安のない一日になるとありがたいのだけど。


いいなと思ったら応援しよう!

夢乃くらげ
100円からサポートというかたちで投げ銭ができます!面白いな、いいなと思ってくださったら、ぜひサポートしてください。活動費にさせていただきます。よろしくお願いいたします。