奇跡の一枚
パパがはぐれ刑事純情派を観ている間にこっそり書くね。
大学の入学式。
A棟の何号室だったかね?
クラスで集まっていた時、初めてパパを見て、
「うわ、ダッサ。嫌い」
って思ったよ。ごめんね。
当時のパパは太ってて、上下白のスーツはもう、ケンタッキーのおじさんにしか見えなかったよ。
なにより髪よ。変なパーマ。襟足はイカ足だったね。地方のヤンキーじゃん。
あと、一人教室の外でボーっとどこかを眺めている姿が、なんでだかわかんないけど横柄な感じに見えて。
ほんとごめん。初めて見た時から嫌いでした。
リスニング教室での語学の授業は学籍番号順だったから、わたしの斜め後ろがパパだったね。
遅刻して悪びれもせずに席に着くパパ。ちょっとは「遅れてすみません」的に入って来なよ。やっぱりこの人は横柄で横着だ。パパの評価は最悪なまま確定した。でも誰にもそのことは言わずに過ごしたよ。
しばらくしてわたしとクラスメートのトモは同じサークルに入り、途中からまさかのパパが入ってきて。
その時初めてトモに言ったのよ。
「あたし、あの人嫌いなんよぉ」って。ごめんね。その後トモも含め、たくさんの共通の友人ができたね。ずっと続いてる仲間たち。
わたしとパパの宝物だよね。
サークル内では、パパはやたらわたしにきつく絡んで来たね。知ってるよ?
そうするとヨシミツが喜んだからだよね。ウケを狙っていつもわたしに喧嘩を振って来て。ごめん、やっぱりそれも嫌だった(笑)
わたしが留学している時、一人で旅行に来たね。留学生宿舎に訪ねて来た時、いつものデカい態度はどこへやら、借りて来た猫みたいに所在なさげで、なんだか初めて可愛らしく思ったよ。あ、猫って言ったけど、パパはどちらかと言うと犬、そう、オオカミの子どもみたいな顔してるよね(笑)
あいにくダイちゃん先輩が不在だったから、わたしが魯迅公園を案内したんだ。
記念館では熱心に展示物を見ていたね。昔から歴史が好きだったもんね。
昼ご飯、近くの飯店に行って、「何食べたい」と聞いても「ああ」としか言わず、適当に注文して「これでいい?」と聞いても「ああ、それで」と。
勢いなくて拍子抜けしたよ。
実は同じ日に、のちに恋人となる彼も日本から来たんだ。わたしがすぐに恋に落ちた人。
その夜、帰って来たダイちゃん先輩と彼とパパと幾人かの友人とで、歓迎会と称したカラオケに行って……。わたしは彼しか見ていなかった。まさかパパの方だったとはね、今わたしの横にいる人が。
卒業して10年後にまさかの再会(電話だったけど)。
付き合いもせずに、2度目に会った時には、パパ、うちの両親に挨拶してた。
結婚してわかったんだけど、パパは“そのまんま”なんだよね。物事や人、自分のことにも執着がない。かと言って冷たいわけではない。「去る者は追わず来るものは拒まず」
そういう人だった。
横柄、横着に感じたのは、細かいことは気にしない、その鷹揚さから来るものだったんだね。
だから、わたしが心の風邪を長引かせている間も離れずに居てくれたんだね。
ありがとう。
披露宴で使う写真を選ぶ時、2人の思い出の写真がまあ無い無い。あれは困った。
クラスとサークルのはあったけど、2人のラブラブ写真なんてどこにもなかった。
そんな中、やっと見つけた!全く覚えてなかった魯迅公園でのツーショット!
誰に撮ってもらったんだろう?
せっかくだから道ゆく人に頼んだんだっけ?
それにしても絶妙な距離を保ち、全く笑ってない2人。
2人とも目が死んでる(笑)
結婚前の唯一のツーショット。
奇跡の一枚。
無事に披露宴で使えて、笑いも取れて良かったね(笑)
あ、はぐれ刑事見終わったようだ。
わたしもちょうど書き終えたよ。
なんか悪口いっぱい書いてごめんね。
ま、結果オーライということで。
これからも、まあ、どうですかね?
嫌なとこもお互いたくさんあるけど、これだけ続いたんだから、この先もきっと、大丈夫なのかなぁ。
どうですか?パパさん。