君はいつも急に来るね
『東京リベンジャーズ』の主人公•花垣武道(タケミっち)の彼女、橘日向ちゃんの名台詞。
私の幼なじみのM子も急に来る子だった。
20代の中頃。私は東京で暮らしていた。
西の地方から進学のため上京(郊外)し、留学を挟み、卒業後は都内で暮らしていた。
新宿の高層ビル街が見える、便利な下町。
M子は地元よりさらに西の大学に進んだが、就職は関東に。
「来たけどおる〜?」
M子から連絡がある。急だったがちょうど居たし、私も会いたいから落ち合う。
別の日、泊まりの仕事から帰ったら、部屋に見知らぬタオルが干されてあり私は凍りついた。しばらく突っ立っていたが、「あ…」と思った。
M子に連絡した。夜来たが私が居なかったので、管理人さんに「友達です」と言って鍵を開けてもらって泊まって行ったとのこと。
セキュリティ!
当時私は、四畳半のおよそ20代の女子が住みそうにないめぞん一刻みたいなアパートで暮らしていた。「お父さん」と呼んでいた管理人さんが一階で中華風定食屋さんをしていて、住人はみな二階に住んでいた。一階には他に居酒屋や洋食屋さんがあった。どれも小さなお店。味は最高。
お父さん、私の友人と言うだけで鍵開けちゃう。そんな時代だし、そんな場所だった。
別の休日。
M子が近くまで来ているらしく、お茶を飲みに行こうと誘われた。
毎回居る私も私だが、お茶を飲みに行った先は静岡。
“そうだ 静岡、行こう。” じゃないんだよ!
でも行った。「えーーー⁉︎」と言いながらも新幹線に乗って静岡まで。
缶ビール飲みながら。(当時はまだ飲めてたんだなぁ)
独り身の気軽さを懐かしく思う。
行きたいお茶屋さんをM子が前もって調べてあり、そこで甘い緑茶を飲んだ。
さすが本場、まろやかでとても美味しかった。
お茶畑も見に行った。つやつやと柔らかそうなお茶の葉を眺めながら、昔話をした。
緑茶ソフトクリームなども食べ、静岡弾丸日帰り旅行は終わった。
***
君はいつも急に来るね。
先日テレビで『東京リベンジャーズ•劇場版』を観ていて、M子のことを思い出した。
M子は急に来るだけでなく、どこへでも来てくれた。
小学4年生になるタイミングで転校して来た私に、「〇〇(私の旧姓)さ〜ん、遠足のお菓子一緒に買いに行こー!」と声をかけてくれたM子。
それからずっと仲良し。
元旅館だった、近所でも目立って古くてボロい我が家にもよく来てくれたし、中学2年の1年間だけ住んだ、大きな家具屋の倉庫の2階にあった我が家にも来てくれた。そのあとまた元旅館の家に戻るのだが、どれも父の仕事の関係。戻ったら戻ったでまた来てくれた。
まだまだうちの引っ越しは続くのだが(夜逃げではない)、ほんとにどの家にも来てくれている。
結婚してからも私は引っ越しが多く(これは夫の転勤)、そのどの場所にも遊びに来てくれた。
結婚はM子の方が早く、私も私でM子の新婚ほやほやのお宅に泊まりに行ったりしていた。
お互い転居は何回もあったが、今は私は地元に、M子は隣の県に住んでいる。
M子の実家はお布団屋さんなのだが、小学生のあの頃から、お店は全く変わっていない。
M子の両親=おっちゃんおばちゃんはさすがに年をとった。お店に行くと白髪になったおっちゃんが出迎えてくれる。M子は時々お店の手伝いも兼ねておばちゃんのお世話をしに帰ってくる。
今度帰って来る時、お茶を飲みに行く約束をしている。
もちろん静岡ではない。
《あとがき》
東京リベンジャーズからM子を思い出し、思い出を綴っていると子供の頃の家のこと、大学でのこと、留学のこと、仕事のこと、東京でのアパート暮らしのこと、いろんなことが思い起こされてきた。しばらく文章を書けずにいたが、また少しずつまとめてみようと思う。ギア3さんのベン図を参考にして、記事の軸を定めたいのだが、いやぁ、ほんとにいつもそん時そん時。ブレブレなままだ。エッセイ(みたいなもの?)って好きなのに難しい。