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その恋を見守りたい

娘に初彼氏ができた。

彼氏いない歴20年。

小学3年生の時、バレンタインのチョコをクラスの男の子ん家に持って行ったことがある。私が家を探して同行したのだから間違いない。だがピンポンは押せず、玄関のドアノブにぶら下げてきた。
恋っぽい出来事はそれが最初で最後。
中学生になっても誰それが娘のこと好きだってよ?っていう話も聞いたことがないし、娘から誰それ君がカッコいいとか、そういう話も聞いたことがない。

高校生になり、娘は入学式で新入生代表挨拶をするという、後にも先にももうないだろうという体験をさせてもらった。
「こんなんもう、式終わったら告白されるんちゃう?わたし」
娘はそう言っていたが、そんなことは起こらなかった。
まあでも、そんな妄想を抱くと言うことは、恋愛に興味がないわけではなさそうだ。ちょっと安心した。
高校ではメインの部活のほかに茶道部を掛け持ちしていた。文化祭でお茶を点てるということで、初めて着物を着た。私も夫と一緒に文化祭に行ったが、我が娘ながらなかなかどうして可愛く仕上がっていた。
娘もまんざらでもなさそうで、またしても「今日告白されるんちゃう?」と曰わっていた。そんなことは起こらなかった。

そしてそのまま単身、大学生になった。何事もなく3年が過ぎゆく。

昨年末、そんな娘が帰省した。
異変を感じたのはその時。玄関を開けてキャリーケースを置くと、娘はそのまま外に出た。
「なんで入らんの?」
「ちょっと外の空気吸ってくる」
いや外から帰って来たんちゃうんかい。
吸ってきたのはタバコだった。そう、娘の異変。タバコ。

今回の帰省はいつもより少し長めだった。
毎日ポツポツと2人で会話をし、彼氏とかおらんのかい?って話になった。
若干ニヤついている娘。
「できた」
おーーーーーーー!

はやる気持ちを抑え、ゆっくりゆっくり、ひと項目ずつ聞き出していった。

まとめると、同じ部活。学年は一個下だが同い年。誕生日が1日違い。彼氏も娘が初彼女。ここがポイント。
お互いに初めてのお付き合い。実に初々しい。

ちゃんと付き合ったのは秋くらいかららしいが、もっと前から部活内では噂になっていて、自覚がないのは本人同士だけだったという。
先輩も同期も「早よくっつけや」と思っていたらしい。周りのみんながキューピットだった、という事が親としてはすごく嬉しかった。
いざ付き合いますとなっても、娘と彼氏は何をどうしていいかわからず、とりあえず出かけよう!ということになったらしい。ほんとに令和の大学生なのか。初々し過ぎる。

会ったことはないので実のところはよくわからないが、娘曰く、人としてちゃんとしてるそうだ。写真を見せてもらったが、マスクをしていてよくわからん。でもチャラい感じではなかった。
音楽好きな末っ子。お姉さんが4人いるらしい。
えーーーーーーー!
そこは驚いた。今日日きょうび5人兄弟て珍しくない?しかもお姉さん4人て。
めちゃくちゃ愛され、大事にされてきたことだろう。ま、でも、だからこそとても優しい子ではないかと希望的推測をしている。
ひとりっ子の娘にはろくに家事も教えてないし、自由に育ててきたから、いや、勝手に育ってくれた感じだが、マイペースな娘は向こうのお宅に気に入ってもらえるだろうか。
少し気が早いかな。でも、可愛い2人、願わくば順調に続いて欲しい。
いやいや学生の恋愛だもの、どうなるかわからないと世間は思うかも知れないが、ツラい恋愛を経験した自分としては、娘の恋が傷つくことなく成就して欲しいと願う。

遠く離れているから、実際2人がどのように過ごしているかはわからないし、大学に戻ってからこれといってなんの報告もないので、私はただ見守るだけだ。

この恋、静かに見守りたい。ほんとはもっと聞きたいけれど。

ちなみに夫はまだ知らない。

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