そんな日がきっとある
天気が良かったからだろうか。
珍しく、同時多発家事をした。
ここんとこ、もうずっと家事が嫌。
ずっと嫌。
ほんとに嫌。
かと言って雑多なこの状態も嫌だ。
すっきり健やかに暮らしたい。
もはや手の施しようがない、とまで思い詰め、なけなしの金を叩いて『家事代行サービス』をお願いしようと、問い合わせまでした。
「いつでもお待ちしております」との返信ももらったが、躊躇したまま時が流れた。
天気が良かったからだろうか。
突然やる気スイッチが入って、私はおもむろに炬燵から這い出た。
そのまま炬燵布団をめくりあげ、座布団やら猫やらをどかして掃除機をかけた。
ノズルをそのままカーテンレールの上まで這わし、そこに薄っすら溜まっていた、いや嘘です、すごく溜まっていたホコリを吸い取り、そのままでは飽き足らず、次の部屋へと移動した。
途中、掃除機を一旦置いて、お布団を干しに行く。
とりあえず敷布団だけ。
夫のと自分のと、上物は敷布団を引き抜きながら放り投げた。
うんしょ、うんしょと運んで行って、太陽の下に干し晒した。
天気が良かったからね。
私、めっちゃ運動してる!
再び家の中に戻り、戦闘機を手にする。
と、その前に。
お風呂場に赴き、タイルにカビキラーを吹き散らかす。
あちこちで泡がもこもこと立っている。
もちろん窓は全開だ。
よし、戻ろう。
戦闘再開。
鴨居や長押の上にもノズルを伸ばす。
ぬおーーー!
すごく運動している。
今、私の脂肪は燃焼している。
痩せるんじゃね?これ。
しかもこのマルチタスクたるや。
天才じゃね?
実はシゴデキなんじゃね?
痩せるかも知れない期待と、己のもしかしたらのスキルの高さに酔いしれ、
猫を追いつめながら掃除機を進めまくった。
しまいに猫は掃除機にパンチした。
ブゥーーーーン……(デクレッシェンド)
さ、お風呂場のタイルを流してこよう。
カビキラーの泡があったであろうところをシャワーで流していく。
艶々としたタイルが現れる。
残った黒ずみは、ブラシで軽く擦って流した。
一旦休憩。
ちょっと座ってテレビなんか見ていたが、はっ!そろそろお布団を裏返さないと。
もう一度、表へ出かけて行く。
ほっ!
腹から太い声が出た。
お布団って重いね。
夕方になる少し前に、湿気を飛ばしたお布団を取り込む。
2人分の敷布団。
腕の筋肉がついたかも知れない。
上物はまた今度。
やり過ぎるとまた嫌になるからね。
そして最後にシンクに残っていたコップを洗う。つま先立ちで。
そう、つま先立ちして体幹を鍛えるのだ。
たぶん家事は、美ボディ作りに効果がある。
そして謎の高揚感が自己肯定感を上げる。
家事が嫌いだ。
ここ最近ずっと嫌い。
でも、こういう日は突然やってくる。
天気が良かったからかも知れない。
そしてまた、そんな日がきっとある。
次がいつかは知らんけど。
それでいい。
思い立ったが吉日。
それでいいのだ。
あれ?
毎日少しずつやればいいのかも知れない。もしかしたら。
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