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アラサー、自転車を買う
本当は車が欲しかった。
しかし、いきなり自動車屋さんに行く勇気が出なかった。そして何を隠そうこの私は、ペーパードライバー歴10年である。なんの自慢にもならない肩書きが私の車購入を渋らせた。
とはいえ、いくらなんでも今のままでは行動範囲が狭すぎる。育児休業中の今、通勤手当も出ないから電車に乗るのにもお金がかかる。隣の大きな駅に買い物に行くのも毎回の電車賃が地味に痛い。もちろん娘はまだ自転車に乗せられないので、夫や義母に娘をみてもらってもらっている時だけに限るが、少しでも機動力を上げたかった。
ひとまず、自転車を買うことにした。
思い返してみれば自転車に乗るのは約15年ぶりである。数字にしてみると、そんなに時間が経ってしまったのかとギョッとした。
かつては両親に買ってもらった自転車。初めて自分で自転車を買うので、買い方すらよく分からなかった。真夏の暑さの中、歩いて20分のホームセンターに汗だくになりながら向かった。
買う自転車は決めていた。
とにかく「赤い自転車」である。赤が好きとかそいうことではなく、目立つ自転車の方が、駐輪場で見つけやすい。ただそれだけである。
ホームセンターに到着し、売り場に行ったら赤い自転車は1台しかなく、即決だった。防犯登録やら保険やらの諸々手続きをして、自転車を乗れるように調整してもらったら1時間くらいかかった。
正直もっとパパッと買って乗って帰れるものだと思っていたので、テキトーな作業着みたいな格好で来ていたのがちょっと恥ずかしかった。
自転車の受け渡しが完了し、「果たして自分の体は自転車の乗り方を覚えているのだろうか…」とドキドキしながら自転車に乗ってみた。
結論。若干ふらつくが、なんとか乗れた。
これで今までより遠くに行ける様になった。たったそれだけのことだがなんだか嬉しかった。
自転車を買ったら、夫が「使わせてくれ」と言ってきた。別に構わないのだが、実はかねてより「自転車買おうかなぁ」と悩んでいたのは私よりも夫の方なのである。
私が買うのを待っていたのか…?
と、思わなくもなかった。
「自転車買おうかなぁ」「買えばいいじゃん」「でもお金がなぁ…」なんてやり取りを何十回も繰り返してきた挙句、私が「必要だから」と買ったら私の自転車に乗るんですか?と正直モヤモヤした。
ちなみに私と夫では身長が20センチほど違う。夫が乗った後の自転車のサドルは恐ろしく高くなっている。しかも、かなりの頻度で私の自転車を使われる為、毎回乗る前にサドルを調整する必要があるのは中々のストレスである。
夫の方も毎回サドルをあげるのが面倒ではないのだろうか。いかんせん、本やマンガ以外の買い物にはケチ臭い夫である。自転車なんてもうあと10年も買わないのだろう。
そういえば、私の友達は、自分の夫の為に車を買ってあげたそうだ。買った自転車を使われているくらいでイライラしている私はまだまだなのかもしれない。